~八〇年代のこの国に生を享けながら、豊かさとは無縁に、飢えて育った峰岸晄。感情を殺して生きる晄の、心の底に差す光は何なのか?全編を覆う「無温の世界」。身を震わせるラストの衝撃!胸を撃ち抜く傑作長編! 「BOOK」データベースより
う~ん、どうでしょう?貫井徳郎ファンの一人としては、何とも言えない感想です。
初めて読んだ貫井徳郎氏の『慟哭』の出来が素晴らしすぎて、それから数冊読んでいますが、そうやって考えてみると、『慟哭』以上の作品は全くありませんでした。期待が大きすぎるのでしょうか?
今回の『我が心の底の光』という作品は、児童虐待(ネグレクト)によって、死の淵をさまよった一人の悲劇的な主人公が、危機的な状況から脱出して、その後の人生を歩んでいく物語です。
ある一定の年代ごとの連作短編集になっていて、楽しめそうな雰囲気がありましたが、途中から「そんな簡単にうまいこといくかい?」と、突っ込みどころが満載で、興ざめしながらも最後まで読み進めました。
その求心力は、「主人公にハメられていく人たちと、主人公の間に何があったのか?」というところが朧げに隠されていて、終盤になってようやくその理由がわかってきます。
最後の最後にタイトルである「わが心の底の光」の『光』が何であったのか明かされるんですが、「ええっ、そこ!?」っていうほど間の抜けたオチでした。
これだけのことをしでかした上で、最後に守りたかったのはコレか?という感じで、腑に落ちませんでした。何も知らずに犠牲になった幼馴染の怜菜も可哀そうで・・・。
主人公の晄が、どのようにしてその知恵と知識を手に入れ、実行に移すことが出来たのかという裏付けがなされておらず、ハメられる人々も簡単に騙されていく様に稚拙さを感じましたし、主人公をはじめとする登場人物たちの感情の揺れ動きや思いの深さについての裏付けもありません。
残念ながら、
★★☆2.5です。