~故郷を奪われ、生き方を変えられた。それでもアイヌがアイヌとして生きているうちに、やりとげなければならないことがある。
北海道のさらに北に浮かぶ島、樺太(サハリン)。人を拒むような極寒の地で、時代に翻弄されながら、それでも生きていくための「熱」を追い求める人々がいた。
明治維新後、樺太のアイヌに何が起こっていたのか。見たことのない感情に心を揺り動かされる、圧巻の歴史小説。「BOOKデータベース」より
「第162回直木賞受賞作」ということで、発表されてからすぐに図書館で申し込み、やっと読むことが出来ました。
若い頃から小説は好きでしたが、本格的に読み始めたのは、ここ5、6年ほどでしょうか・・・。ミステリーを中心に色々な小説を読んできました。愛とか恋とか不倫とか、犯罪とか冤罪とか、少年とか老人とか、歴史ものとかSFとか、ホラーとかトリックとか・・・。
それぞれに、それぞれの良さがありますし、感動もしましたし、落胆もしてきました。
この『熱源』を読んで、「やっぱり小説って、『作者が読者に何を訴えたいかというテーマが根幹にあるべきで、それ沿ったキャラクターを立てて、美しい描写と心のこもった台詞で繋げていき、起承転結に矛盾や取りこぼしのない形で締めくくる』という、しっかりとした骨太の物語であるべきやな」と改めて気付き、思いを深めました。
『直木賞受賞作』やから、こんなに絶賛するんじゃないですよ
『直木賞』でも全然ハマらへん作品もたくさんありましたからね
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さて、本作ですが、金田一京助氏が書いた『あいぬ物語』を基に、アイヌであるヤヨマネクフと、ポーランド人であるブロニスワフ・ピウスツキ、実在の人物を中心に、それぞれの生まれ故郷が、強大な力を持った国によって蹂躙され、翻弄されるながらも、自らのルーツを矜持として、大きな流れに逆らって生きていくというお話です。
「樺太(サハリン)」に暮らすアイヌの人たちを中心なんですが、「樺太(サハリン)」って、知っているようで、あまり詳しくは知りません。
アイヌについても同様で、「アイヌ民族は、おおよそ17世紀から19世紀において東北地方北部から北海道(蝦夷ヶ島)、サハリン(樺太)、千島列島に及ぶ広い範囲をアイヌモシリ(人間の住む大地)として先住していました。」とのことです。
この『熱源』という小説を通して、
・人間が生きていく意味、子や孫へ繋いでいく生き様
・日々湧き上がってくるはずの情熱、その源
・他民族、他人格を尊重し共存する形
・守り伝えていかなければならないこと
など、色々なことを考えさせられました。
最近でも黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官に首を押さえつけられて死亡した事件があり、抗議デモが相次いでいます。その他にも、世界中で人種差別問題というのは、いつまでも根深く残っていると思います。
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まさに、本書の伝えたかったことの一片が、ここにあるのかも知れません。スケールが大きく、様々なことを感じ、気づきを与えてくれた素晴らしい小説です。多くの方に読んでほしいですね。
★★★☆3.5です。