大手出版社で雑誌編集長を務める速水。誰もが彼の言動に惹かれてしまう魅力的な男だ。ある夜、上司から廃刊を匂わされたことをきっかけに、彼の異常なほどの“執念”が浮かび上がってきて…。斜陽の一途を辿る出版界で牙を剥いた男が、業界全体にメスを入れる!「BOOK」データベースより
『盤上のアルファ』、『罪の声』、『盤上に散る』に次ぐ、塩田武士氏の4作目です。塩田氏の作品は、シリアスな場面なのに、どこかユーモラスな描写があったりして、ホッコリしたり、人間の内面の醜さや、逆にスッキリとした潔さなどを見事に描く作家さんです。
今回の『騙し絵の牙』は、表紙の写真のとおり、俳優の大泉洋氏をイメージして描いた作品らしく、のっけから「あぁ~この人物が大泉洋ね」と頭に描きながら読むことができました。
しかし、おちゃらけている場面では確かに大泉洋氏のイメージなのですが、「ちょっと格好よく書きすぎちゃう?」と思うこともしばしば・・・。
出版業界については若干ながらかじったことがある私ですので、専門用語や業界用語もわかりましたし、出版業界が抱えている現実的な問題など、色々と実感することが出来ました。
タイトルが『騙し絵』とあるので、「会社のみんなから好かれて頼りにされる主人公の実際の姿は実は!?」っていう展開が、どこで暴露されるのかと興味を持ちながら読みました。
終盤のクライマックスにさしかかり、「いよいよか!」というところで、最後の戦いに臨んだ主人公の運命は・・・?
敗者がリングを降り、そして関係者たちのその後の姿がエピローグで語られます。
まぁ、正直に言って、クライマックスまでがそれなりに楽しめただけに、エピローグの展開は、期待外れの的外れでした。
「タイトルに寄せようとして失敗したのか?タイトルが間違っていたのか?」は、わかりませんが、無理矢理に型に嵌めたようなラストには、決して拍手は送れませんでした。
実写化(もちろん大泉洋氏が主演)されるようですので、観てみたい気もしますがね。
★★★3つです。