続・知青の丘

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第14回九州現代俳句大会選 者 特 選 賞発表します!!

2023-10-22 11:40:13 | 俳句
選 者 特 選 賞 ( 副賞:句集&商品券 )

☆ 関悦史・特選賞
 590 冷房を点け要塞となりゆく子   
    吉良 香織 熊本
 要塞となるのは部屋ではなく子。ゲーム機、PC等を武装と見立てたか。「ゆく」なので常態化したひきこもりの深刻さは薄いがその世界に親は立ち入れない。寂しさ、気遣いを要塞の見立てで異化しドライな句とした。

☆ 堀田季何・特選賞
153 ヴィーナスの夜ごと脱けだす跣足かな
    墨海 游 山口
ヴィーナスは美と豊穣(妊娠)の女神であり、男根中心主義が、女性に、陰に陽に求めているものの象徴。古今東西の女性は、性的対象や産む機械としての役割から、夜ごと跣足で脱走を試みては捕まってきたのだ。哀切。

各 地 区 会 長 特 選 賞 
( 副賞:句集等&商品券 ) ( 五十音順 )
☆ 有村王志・特選賞
245 若者は春風のように好きと言う
    林 よしこ 熊本
 如何にも今日世代の感覚が表記されており、読後、さわやかな気持ちにさせられる。侘び、寂びといった世界から脱却して、実にスマートに現代を切り取っている。春風を好きとした措辞に魅力。

☆ 上地安智・特選賞
25 子を産みに帰らぬ日本麦の秋   
   河野 輝暉 大分
出生数が年間80万人を切り、少子化の趨勢が止まらない日本の現実。「帰らぬ」ことは主体的な意思。日本の未来に不安を感じるからなのか。季語「麦の秋」によって、時間的・空間的な深みが加わる。

☆ 加藤知子・特選賞
464 濁り池鯉夕焼けの口開けて    
    籾田ゆうこ 熊本
写生を超えた自己表出の句と読んだ。混迷のなかで、自分を曝け出そうとする「夕焼けの口」が印象的だ。

☆ 高岡修・特選賞
419 もぎたてのトマト生真面目すぎるのよ
   鎌倉真由美 大分
俳句会などで選をする喜びは、自分のまったく知らない世界と出会うことである。あるいは、自分が絶対つくれない感性の作品と出会うことと言ってもいい。この作品は、私にとって後者である。

☆ 福本弘明・特選賞
71 スキップして青野を少し哀します  
   入口 靖子 長崎
青野の期待を裏切る、軽やかなスキップ。青野に、生命力や青春性とは違う重厚な一面を見た。

☆ 前川弘明・特選賞
135 生年月日を山河と思う生身魂  
    松永 俊昭 熊本 
堂々たる人生諷詠である。「生身魂」と呼ばれる年齢に感じる索漠たる思いと隆々たる気概の交錯。

☆ 山口木浦木・特選賞
423 卒寿まで来て露草に諭される   
    児玉 利子 大分
卒寿の九〇歳になれば「諭される」よりも「諭す」立場だろう。この句は前者で表現しているのが面白い。しかも諭すのは「露草」。この花の名前や外見が醸し出すもののあわれ、無常感、謙虚さが良い。花言葉は「尊敬」らしい。

選 者 特 選 賞( 副賞:商品券 )( 五十音順 )
☆ 足立攝・特選賞
53 アマリリス死は掌にきて遊ぶ  
   林 紀子 熊本
私たちにとって最大の恐怖である死は、いつも私たちの隣に
ある。だから私たちはことさらに「死ぬかと思った」「死ねばいいのに」などと死を掌に転がしてもてあそぶのである。生の象徴であるアマリリスの赤のもとで。

☆ 磯部正悟・特選賞
5 陽炎の町で時間の鳥が鳴く    
  秋山 青松 鹿児島
陽炎の町でと時間と場所に限定を付け、時間の鳥が鳴くとさらに立ち入って、さらに時間の森にさらに立ち入るとはすごいと思いました。

☆ 伊藤利恵・特選賞
589 眼は海 遠い浮雲を呼んで呼んで  
   高岡 修 鹿児島
「眼は海」は大胆な断定だが、水晶体のイメージもあり納得できる。「遠い雲」は柔らかく危なげな若さ、過ぎた時間の象徴か。海になりもう一度写したい空があるような、呼んで呼んでのリフレインが切ない優れた一行詩。

☆ 伊波とをる・特選賞
272 紫陽花や雨の三十三間堂      
    西村 信坊 福岡
名詞と助詞のみで、三十三間堂の存在感、暗い重量感を現した。「雨の三十三間堂」の調べも佳い。それを包むように七変化
の彩りを配したことも句柄を豊かにした。降り頻る雨脚に通し矢(・・・)の連想も働いた。

☆ 江良修・特選賞
265 チューバ抱く女吐く息夏盛ん   
    渡嘉敷敬子 沖縄
野外音楽堂だろうか。路上ライブだろうか。チューバという大きな金管楽器を抱き、汗しながら演奏に集中する女性のひたむきな姿が見える。重低音が響いてくる空気の振動。上五中七に対して「夏盛ん」が絶妙。

☆ 荻野雅彦・特選賞
574 木に休む白鷺袋掛けしごと   
    森下 真弓 宮崎
木に止まって休んでいる白鷺に、木に掛かった袋の映像を見ている。「袋掛けし」というのが、いわゆる季語「袋掛」の行為を指すかどうかは微妙だが、いずれにせよ、鮮やかで印象的な映像の転換だ。

☆ 親泊ちゅうしん・特選賞
650 転がりて地蔵ほほえむ苔の花   
    木庭眞智子 熊本
いいですネ。転がってもほほえんでいる。情景が浮かぶ。地べたに密着して全ては近景である。

☆ 片山亀夫・特選賞
622 晩夏光合鍵を置く別れの日    
    白土 正江 大分
一夏が終わる。夏休みが終わる。肉親との再会、友との交流、恋人との交わりがあった。しかし夏の終わりには別れが来た。また会える日を願ってそっと合鍵を置いて帰る。なんだか切ない晩夏の別れがある。

☆ 河野輝暉・特選賞
223 オルガンも母校も消えて麦熟れて 
    前川 弘明 長崎
現代日本が直面している少子化、農村の過疎化のスピードを句に流している。上半の消失感と下五の成熟感の対比が絶妙。悲哀を言わなかった故に言った以上の情感が胸を打つ。

☆ 吉良香織・特選賞
634 パスワード思い出せない蟻の道  
    錦戸 陽子 熊本
蟻の道の点々と続く様子が、パスワードが思い出せない、思い出そうとする、記憶をつなげようとする人の姿と重なり合う。

☆ 倉田明彦・特選賞
76 討入りの日やコンビニで金おろす  
   山本 則男 福岡
赤穂浪士討ち入りの日である。何か事情があってコンビニでお金をおろしているのだが、もちろん浪士の討ち入りのような
切迫した事情ではない。「そう言えば討ち入りの日か」という気持ちの落差が面白い。

☆ 園田千秋・特選賞
239 黙祷のサイレン鳴り止まぬ 日照り  
   伊藤 利恵 大分
八月は、広島忌・長崎忌・終戦日と、平和への祈りをこめた黙祷のサイレンが、次々に鳴り響く。また、日照りの語は終戦の勅語の日を連想させる。その日よりずっと、平和への祈りをうながすサイレンは、人々の心に消えることなく鳴り続いているのだ。

☆ 谷川彰啓・特選賞
65 沖縄忌土の記憶をかみしめる   
   鍋屋 立子 福岡
沖縄慰霊の日は6月23日。慰霊祭は摩文仁の丘平和祈念公園で、毎年実施されている。「土の記憶をかみしめる」とした下
五に深い哀しみが詰まっている。

☆ 谷口慎也・特選賞
305 万物のため息として長崎忌  
    上地 安智 沖縄
ここでの〈長崎忌〉は〈広島忌〉でもある。そればかりか、その〈忌〉は、この世のあらゆる「戦争」に対する〈忌〉を暗示する。そう思わせるのは〈万物のため息〉という大胆な措辞の為である。〈長崎忌〉に具象性を保ちながら、〈万物のため息〉で1句に象徴性を含有させる。この作者は「俳句表現」の在り方を知っている人だ。

☆ 渡嘉敷敬子・特選賞
334 寄書きに昭和が黄ばむ青葉騒  
    吉岡 靜生 熊本
学校の卒業の寄書きでしょうか。昭和が黄ばむという表現が年代を感じさせ、青葉騒の季語が青春のゆらぎ、ざわめきを感じさせます。素敵な句です。

☆ 永田満徳・特選賞
199 尺蠖が測る方舟までの距離  
    榮田しのぶ 熊本
核保有国の大統領が核使用をちらつかせている現状を鑑みると、俄かに現実味を帯びてくる句。「尺蠖」と「箱舟」に擬えながら、人間が核戦争後にいかに生き残るべきかを思い巡らしている様を描いていて、共感できる。

☆ 長友巌・特選賞
490 ただ静かな真昼のようにある林檎 
    安部知菜美 鹿児島
静謐な句。ポスト印象派の画家ポール・セザンヌには林檎を描いた多くの作がある。彼は複数の視点からモチーフを集め造形化し再構築した。この句、静謐な中に真昼のアンニュイや林檎の存在感など多様な視軸がある。

☆ 中山宙虫・特選賞
205 死者を出す水の眩暈や合歓の花 
    山田 節子 熊本
水難事故のニュースが今年もあふれた。温暖化などによる豪雨災害や海面上昇。人を死に追いやる現象が増えて。「眩暈」と「花合歓」が整理できずにいる作者を浮かび上がらせ、心象風景をとらえた。

☆ 西田和平・特選賞
33 缶蹴りの幻聴辿る家なき子     
   桑鶴 翔作 鹿児島
缶蹴りの音を聞き、ひとり残されて寂しげに缶を蹴っていた子どもの記憶が呼び戻された。不適切な環境に置かれている子ども等を含めると、精神的な「家なし」は少なくない。現代にも通じる重さを感じた。

☆ 野田遊三・特選賞
543 向日葵の果ては戦線火の匂ひ   
    早川たから 宮崎
以前カスピ海西岸からウクライナへの旅の途上、広大な向日葵の光景に直面したが、時を経て今その果てが火の戦線となっている。人間の愚かさと自然の悠久さ。 

☆ 西村楊子・特選賞
471 半音が狂うピアノに天瓜粉    
    大下真理子 福岡
「半音」が喩とするものの許容範囲が広い。ごく個人的な心情とも、地球規模の食い違いともとれる。そして「天瓜粉」もまた喩だろう。まっしろにしてさあ出来上がりとする意味のなさがおかしみをさそう。

☆ 藤澤美智子・特選賞
72 雪が降る道化師の抱くピカソの絵 
   入口 靖子 長崎
雪の降る夜の街、道化師が胸に絵を抱いて歩く。物語の始まりの様な素材にひかれました。スペインーゲルニカであった惨禍、ピカソに描かれた「ゲルニカ」を道化師は、もう二度と起きることがないようにと、祈っていたと思います。

☆ 服部修一・特選賞
199 尺蠖が測る方舟までの距離   
    榮田しのぶ 熊本
戦争、原爆、地球温暖化、自然災害をもたらし、滅亡に向かっているかもしれない人類。その先にあるのがこの句の方舟だろうか。しかしわれわれは、尺蠖の速度で、心を正ながらゆっくり進みたいものである。

☆ 布施伊夜子・特選賞
277 海風とともにくぐりし茅の輪かな 
    日高まりも 宮崎
海に近い神社の夏越し。青々とした茅萱を人の潜れる大きさの輪にしたのが茅の輪。祈りながら潜るとき、ふと海風に背を押されたような気がした。どこの茅の輪よりも御利益がありそうな気がしてきた。

☆ 松岡耕作・特選賞 
282 黒揚羽ときどき来ては知らん顔  
    安藤 淑江 福岡
黒揚羽とわたしとの時限の世界。黒揚羽はくしくもわが庭に二・三日姿を見せてやがて消えていった。

☆ 松下けん・特選賞
568 しまい込む言葉ざわざわ春の闇  
    堀口 良子 鹿児島
日本語ほど多彩な表現が可能な言語は、世界でも数少ないと

思います。作者は、伝えようとした言葉の違和感から、一度表現を抑えてみたその瞬間、言葉の端々から多くの意味を感じとられたのでしょう。まるで、春の夜の魑魅魍魎が動き始めたように思われた瞬間だったのです。鋭い感覚の表現に脱帽の一句です。

☆ 三舩熙子・特選賞
51 にんげんに疲れし大地 夕焼くる  
   林 紀子 熊本
世の中がどんなに変わっても、命あるものの中では。人間がもっとも愚かだと思うこの頃です。人間に欲望のある限り、仕方のないことかも知れませんが、仕方の無いことで済まされない事が多い昨今です。大地の悲鳴が聞こえています。

☆ 森さかえ・特選賞
419 もぎたてのトマト生真面目すぎるのよ
    鎌倉真由美 大分
真面目すぎるのを生真面目という、真面目すぎるのも善し悪しだが生真面目すぎるのは扱いに困る。そんな人が身近にいる
のか。でも「生真面目すぎる」ほどに熟れたトマトならば美味しくいただこうではないか。

☆ 山下久代・特選賞
27 初雪や紅買いに行く明日ありて  
   河野 輝暉 大分
 白い雪と紅の鮮やかな対比が美しい。さらに、初と明日によって、未来へと展かれていく印象も抱いた。具象画のなかに詩的な抽象性を覚える一句。ゆえに結句の「ありて」も感傷的な意味から遠いところにある。

☆ 横山哲夫・特選賞
196 万緑に生きる力をもらいけり 
    野村太貴江 福岡
先人により秀句が詠まれ尽くされた感のある現今、佳句を生産しうる可能性は乏しい。難解独善の句の多出する所以である。その中にあって明瞭・骨太の感懐の佳句と感じた。


〈 各賞の決定方法 〉
選者の特選賞を二点、その他を一点として計上し、獲得点数の最も高い句が大会大賞を受賞し、獲得点数8点以上の七句が優秀賞を受賞しました。選者特選賞は、選者一人につき一句で、合計三九句でした。

附)選者賞を設けたことと句集や賞品券を賞品としたことは
今回だけの取り組みでした。
次回2025年の大会は、
別の県の協会が幹事県になりますので、
どのようにされるかはわかりません。



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