『サングラハ』185号が出ました!

2022年10月02日 | 広報

 『サングラハ』185号が出ました。発送も終わっていますので、読者のみなさんのお手元には間もなく届くと思います。お待ちください。

 まだ読者でないみなさん、以下の「近況と所感」「目次」「編集後記」で推測していただけるような内容です、よろしければぜひご購読ください。お問い合わせ | サングラハ教育・心理研究所 (smgrh.gr.jp)

 

  近況と所感

 これまで体験したことのないほどの大型台風が多くの被害を出して日本列島を縦断した後、急に涼しくなりました。

 被害に遭われたみなさんに心からお見舞い申し上げ、一日も早い復旧-復興をお祈りいたします。

 当研究所の関係者のみなさんはいかがでしたか? いつも神仏・天地自然・ご先祖さまにみなさんのご無事をお祈りしています。

 筆者の住む香川県は自然災害がとても少ないところで、ニュースで知るかぎりでは、今回も少し強めの雨と風だけで済んだようで、我が家も何事もありませんでした。自分だけよければいいとはもちろん思っていませんが、とりあえず感謝すべきことかと思います。

 それにしても「気候変動」による気象の荒れはますます顕著になってきているようで、とても心配です。

           *

 そうした中、「気候変動などという大きなことに対して自分一人では何もできない」と考えてしまう方も少なくないでしょう。気持ちはよくわかります。筆者もふとそういう気持ちになりかかりますから。

 しかし、これまで学んできていただいた読者には、「そういう気持ち=過度に否定的な感情は、非合理的な考え(イラショナル・ビリーフ)から生まれている…んでしたね」と言いたいと思います。

 どこが非合理的か確認しましょう。その気持ちの裏に「自分一人で気候変動をどうにかしなければならない」という考えが潜んでいませんか? それはどう考えても無理・非合理的です。自分一人ではもちろんどうにかできません。

 気候変動は、自分一人のせいではなく、長い歴史をかけて人類全体が生み出したものですから、「人類全体でどうにかしなければならない」と言ったほうがやや正確・合理的ですし、もっと言えば「大きな被害やまして絶滅を避けたいのなら、人類全体で協力してどうにかしたほうがいい」ということなのではありませんか?

 そこでポイントは、「たいのなら」と「協力して」と「ほうがいい」というところではないかと思います。

 まず、人類全体が協力できなかったら、とてもとても残念ですが大きな被害やもしかすると絶滅も避けられないでしょう。それはきわめて論理的な結末です。

 しかしポジティヴに言い直すと、「人類全体が協力できたら、被害も絶滅も避けることができる」ということです。

 では、次は協力できるのかということですが、協力は無意識的にされることはほとんどなく意識的に合意することによって可能になるのではないでしょうか。

 言い方を替えると、協力という行動には合意という意識が必要だということです。

 協力できていないのは合意できていないからで、それは十分な共通意識=一体感が形成されていないからです。

 ポジティヴに言い直しましょう。「十分な共通意識=一体感が形成されれば合意が可能になり、協力が可能になり、協力が可能になったら人類の持続も可能になる」と。

 そうすると、「必須の出発点は共通意識に向けた人類の意識の変容だ」ということになると筆者は考えてきました。

 唯識的に言えば、「転識得智(てんじきとくち)」、特に自分や自分たちを実体視するマナ識からすべてのものの平等・一体性を実観(実感の誤植ではありません)する平等性智(びょうどうしょうち)への変容です。

 そして意識の変容は、残念ながら「いっせーのせ」と人類全体ですぐに一挙には起こらないもののようですから、「滅亡したくない」と本気で思った者から取り組むしかない、と思ってきました。

 しかしそれは、「自分一人でどうにかする・しなければならない・できる」ということではなく、「〔人類的合意と協力に向けて〕まず自分から始める」ということです。

 しかも、そうした意識の変容への取り組みはすでにかなり多くの人の中で起こっており、筆者一人がやっているわけではありません。当研究所に関わってくださっているみなさんも、そういう多くの人の一人です。

 大丈夫だと思いますが、「私一人が、サングラハで学んでも、瞑想しても、六波羅蜜を実践しても、世界は変わらないのではないか」とネガティヴ思考に陥りそうになったら、ぜひ「私が意識の変容に取り組んでいるのは、人類の意識変容の先駆者の一人だということであり、それが全体に広がったら、世界は変わりうる」とポジティヴ思考に取り換えてください。

 進化史上、絶滅の危機に瀕した時、きわめて短期間に種全体が合意して飛躍的に変容し生き延びることができたというケースが何度もあるとのことです。私たち人類もそうなったほうがいいですね。ぜひ、そうしましょう。

 以上、まるでコスモロジー心理学ミニレクチャーのようになりましたが、これが筆者の「近況と所感」です。

 

  目 次

■ 近況と所感……………………………………………………………………………… 2

■『正法眼蔵』「生死」巻講義 下 …………………………………………岡野守也… 4

■〈宗教〉に未来はない 増補再説…………………………………………岡野守也… 12

■ 縁起の理法からみたウイルスと私たち

――新型コロナパンデミックをめぐって……………………………………大井玄…… 24

■書評『人新世の「資本論」』における「脱成長コミュニズム」(6)…増田満…… 35

■ 講座・研究所案内………………………………………………………………………… 50

■ 私の名詩選(84) 寒山詩一九三 ……………………………………………………… 52

 

  編集後記

 主幹の正法眼蔵「生死」講義は、短い巻でしたが、表現の簡潔さ・平易さ・率直さの中に一層、深さが感じられました。主幹のもう一つの記事は、新々宗教の問題に関し、過去記事を増補・再説しています。「未来はない」は単に批判・否定ではなく、新たな宇宙観と霊性に向けて超えるという、いまだ実現のめどが見えていない、しかし今こそ必要な建設的提案です。

 大井先生の論文は、目下の新型コロナ禍のようなウィルスのあり様にもまた、進化と縁起の理法が貫徹していることが示されています。

 増田さんによる『人新世の「資本論」』書評は、内面の視点の欠落を指摘して終えられています。確かに、この外面システムのみの代案は、私たちの内的意欲を喚起する力を持ちえないように見えます。

                            (編集担当)

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