2018年の冬
吉田拓郎さんファンが集まる、とあるフォークバーに
ミュージシャンの友人と行ったときのことだった
小さなカウンターと、小さなスペースにギターがあり
いくつかのテレビ画面では、拓郎さんファンが喜ぶお宝映像ライブが流れている
私と友人が訪れた時、誰もお客がいなくて
カウンターには、ママらしき人と、もう一人男性が
人見知りの私は、こういうシチュエーションはできるだけ避けたい(笑)
ただ、拓郎さんファンにとって
ここは絶対に一回は行かずにはおれない場所であろう
バーにいた女性は
とても気を遣ってくれているのが分かったが
ただ、友人がミュージシャンであることは、友人の口からは出ず
なんだか、落ち着けない雰囲気
お互いに口や態度で出すエネルギーと、本音がまるで違っていて
そのうち、どちらが拓郎さんをよく知っているか合戦になっていた
どんどん居心地が悪くなって
20分もしないうちに、帰りたくなり
帰る前に、店においてあるギターを友人が弾き始めた
演奏の途中に店に入ってきた、おじいちゃんが
友人の演奏に合わせてベースを弾き、大満足をして帰ることに
店の女性はおじいちゃんに言った
「なかなかいつもは演奏しないのに、今日はどうしたの?」
後で知ることになるこのベーシストは
吉田拓郎さんのバックで演奏していた石山恵三さんだった
何も語らず、黙って演奏をしだして
ただならぬ感じの雰囲気
まあミュージシャンには変わっている人が多いからと気にしないようにしていたが
こういう経歴を持っていたわけである
結局、偏見があると大事なものを見過すのである
師が言っていた
覚醒前と覚醒後の絵は
まるで変わらず
しかも覚醒すると、自分を証明する必要性がなくなってくるから
パワーも使わない
まるで風のように空気のようにすり抜ける
そこに威圧的な存在感もなく
ただそこに確実に存在している
同じ領域にいるものは、ただわかる
私が見る石山さんの印象は、ドラゴンボールの亀仙人
普通じゃないけど、普通のおじいちゃんだ
2021年1月18日にお亡くなりになった
いつどこで、出会いがあるかわからない
出会いはあるべき場所で、完璧なタイミングで出会う
いつも何かを準備しているわけではないから
私たちはいつも準備ができていない
風が吹くごとく、それは去っていく
そして本物であるかは大抵見抜けないのである