仕事中、1本の外線が入った。
得意先のひとつである、とある総合病院からだった。
「低体重児用の粉ミルクが、大至急欲しいんですが」。
その病院は、私がえいみを出産した場所だった。
私の現在の仕事先は食品系メーカーで、育児用粉ミルクを病院にも卸している。
本来なら土日祝休みで、当然ゴールデンウィークも基本的にはカレンダー通り。
けれど私の所属する経理系部署は、新年度から大きくシステムが変わった後の最初の締めを迎えたばかりで、請求関係の事務作業が山場だったことから出勤をしていた。
さらに、そんな事情から今回だけは特別に、営業を含めた他部門からも、数人が応援として休日出勤をしていた。
その中に、たまたま育児用商品の管理のことをわかる人がいた。
低体重児用のミルクなど、一般のお店には置いていない。
病院にはいくつもの育児用品メーカーが関わっているが、ほとんどはゴールデンウィークで休みだったに違いない。
きっと予定外の出産で、しかも週数が臨月に達しないような急遽の出産だったに違いない。
どんなに小さな子だったんだろう。
出産したばかりのお母さんは、どれほど不安だろう。
細長い廊下、きれいなLDR、そして病棟にいた保健師さんや栄養士さん、先生の顔が次々に浮かんでくる。
今ごろみんな慌ただしく対応に追われているんだろうな……。
幸いにも低体重児用のミルクは在庫があり(会社は工場とは別の場所なので、倉庫にはサンプル程度の在庫しか置いていない)、1時間程度で先方が取りに来るとの連絡があった。
その後、いつ取りに来たかまではわからないけれど、きっと無事に赤ちゃんの元まで届いたものと思う。
ひとまず、ほっとする。
えいみが生まれるまでは、「今の医療なら例え小さく産まれても無事に大きくなれる」と気安く思っていた。
もちろんそれは間違ってはいないのだけれど、でもやっぱり、人並みの大きさになって体力がつくまでの苦労は、他の子に比べてずっと多い。
そう思うと、えいみが、予定日を過ぎるほどにゆっくりお腹の中にいて、平均的な大きさで無事に生まれてきてくれたことが、当たり前のようでいて本当にありがたいなぁとつくづく感じる。
今日、生まれた小さな子が、無事にすくすくと育ちますように……!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/d3/a527f6ea17f0e25da0215eff92386540.jpg)
↑芝生で遊ぶえいみさん。
とても男の子チックですが、女の子です。