古文書を読もう!「水前寺古文書の会」は熊本新老人の会のサークルとして開設、『東海道中膝栗毛』など版本を読んでいます。

これから古文書に挑戦したい方のための読み合わせ会です。また独学希望の方にはメール会員制度もあります。初心者向け教室です。

太祇句集 翻刻4 秋

2017-01-24 11:01:05 | 炭太祇

  不夜菴太祇句集

    秋

277  すゝしさのめでたかり鳧今朝の秋

278  初秋や障子さす夜とさゝぬよと

279  七夕や家中大かた妹と居す

280  月入て闇にもなさす銀河(天の川)

281  家つとの京知顔やすまひとり

282  裸身に夜半の鐘や辻相撲

283  勝迯の旅人あやしや辻角力

                    原画 早稲田大学古典籍

 

284  引組て猶分別やすまひとり

285  山霧や宮を守護なす法螺の音

286  さし鯖や袖とおぼしき振あハせ

287  明はなし寐た夜つもりぬ虫の声

288  城内に踏ぬ庭あり轡虫

289  見かけ行ふもとの宿や高灯籠

290  夕立の晴行かたや揚灯籠

291  声きけハ古き男や音頭取

292  彼後家のうしろにおとる狐かな

293  末摘のあちら向ひてもおとり哉

294  蕃椒畳の上へはかりけり 

295  つる草や蔓の先なる秋の風

296  痩たるをかなしむ蘭の莟かな

     あるかたより蘭を贈くるゝに名立事ありて

297  蘭の香や君かとめ寄楠に若も又

     長月の末召波訪来りし時

                   原画 早稲田大学古典籍

 

298   何もなし夫婦訪来し宿の秋

299  行秋に都の塔や秋の空

     岩倉にて雨にあひ金蔵寺大徳の情に一夜の舎り 

     免され嬉しと這上りて

300  笠ぬけハ鹿の聞度夜とそなる

     南谷上人の書の額あり薬師の宝前に二種の草あ

     り

301  南無薬師菊の事もきく桔梗

     をくら山のふもとなる湧蓮寺の庵を卯雲子と共に尋

     侍るにあらざりけれハ扉にかいつく

302  留守の戸の外や露をく物ハかり

303  此鱸口明せずと足ンぬへし

304  畠から西瓜くれたる庵かな

305  遺言の酒備へけり魂まつり

306  懸乞の不機嫌ミせそ魂祭

307  おもへとも一向宗やたま祭

308  魂棚やほた餅さめる秋の風

309  たま祭る料理帳有筆の跡 

                   原画 早稲田大学古典籍

 

310  送り火や顔顔覗あふ川むかひ

311  いなつまや舟幽霊の呼ふ声

312  鬼灯や掴ミ出したる袖の土産

313  乞けれハ刈てこしけり草の花

314  二里といひ一里ともいふ花野哉

315  鮹追へハ蟹もはしるや芋畠 

316  餓てたに痩んとすらむ女郎花

317  其葉さへ細きこゝろや女郎花

318  鶏頭やはかなきあきを天窓勝

319  鶏頭やすかと仏に奉る

320  蜘の囲棒しはりなるとむほ哉

321  静なる水や蜻蛉の尾に打も

322  萩原に棄て有けり風の神

323  萩吹燃る浅間の荒残り

324  椋鳥百羽命拾ひし羽音哉 

     経師何かし芭蕉画る扇に賛望れて

                   原画 早稲田大学古典籍

 

325  裂やすきはせをに裏を打人歟

326  秋さびしおほへたる句を皆申す

327  簗をうつ魚翁かうそやことし限

328  ものの葉に魚のまとふや下簗

     京へのぼりし時

329  蕣に垣根さへなき住居かな

330  ミとり子に竹筒負せて生身魂

331  野分して樹々の葉も戸に流れけり

332  浅川の水も吹散る野分かな

333  渡し守舟流したる野分哉

334  片店はさして餅売る野分かな

335  芋茎さへ門賑しやひとの妻

336  おもはゆく鶉なく也蚊屋の外

337  畠踏む似せ侍や小鳥狩

338  身の秋やあつ燗好む胸赤し

     いとわかき大女に秋来て柳絮の才も

     一葉と散行蘭蕙の質も芳しき

                   原画 早稲田大学古典籍

     名のミに帰り来ぬ道のくまぐま問よ

     る中に交りて父の蘭虎によす                    

339  此夕べぬしなき櫛の露や照

     花燭をおくりて霊前にさしよするハいさゝか其情を

     慰するにあり

340  ミそなはせ花野もうつる月の中

341  あさかほに夜も寐ぬ嘘や番太郎

342  ミか月やかたち作りてかつ寂し

343  三日月の船行かたや西の海

344  みか月や膝へ影さす舟の中

345  雨に来て泊とりたる月見かな

346  狂ハしやこゝに月見て亦かしこ

347  来ると否端居や月のねだり者

348  明月や君かねてより寝ぬ病

349  明月や花屋寐てゐる門の松

350  うかれ来て蚊屋外しけり月の友

351  後の月庭に化物作りけり

352  灯の届かぬ庫裏やきりぎりす

                   原画 早稲田大学古典籍

 

353  雪ふれハ鹿のよる戸やきりぎりす

354  大根も葱もそこらや蕎麦の花

355  うら枯ていよいよ赤しからす瓜

356  萩活て置けり人のさはるまて

357  石榴食ふ女かしこうほときけり

358  喰すともさくろ興有形かな

359  菊の香やひとつ葉をかく手先にも

360  見通しに菊作りけりな問はれかほ

361  菊の香や山路の旅籠奇麗也

362  旅人や菊の酒くむ昼休ミ

363  残菊や昨日迯にし酒の秋

364  朝露や菊の節句ハ町中も

365  古畑の疇ありながら野菊かな

366  泊問ふ船の法度や秋の暮

367  有侘て酒の稽古や秋の暮

368  おとり人も減し芝居や秋の暮

                   原画 早稲田大学古典籍

 

369  ひとり居や足の湯湧す秋の暮

370  夕霧に蜂這入たる垣根哉

371  出女の垣間見らるゝきぬた哉

372  泊居てきぬた打也尼の友

373  菊の香や花屋か灯むせふ程

374  剃て住法師か母のきぬた哉

375  寐よといふ寝さめの夫や小夜砧

376  夜あらしに吹細りたるかゝし哉

377  やゝ老て初子育る夜寒かな

378  旅人や夜寒問合ふねふた声

379  舟曳のふねへ来ていふ夜寒哉

380  水瓶へ鼠の落し夜寒かな

381  朝寒や起てしハふく古こたつ

382  縁端の濡てワひしや秋の雨

383  茄子売る揚屋か門や秋の雨

384  夜に入は灯のもる壁や蔦かづら

                   原画 早稲田大学古典籍

 

385  引ケハ寄蔦や梢のこゝかしこ

386  町庭のこゝろに足るやうす紅葉

387  鉄槌に女や嬲るうちもみち

388  空遠く声あハせ行小鳥哉

389  露を見る我尸や草の中

390  青き葉の吹れ残るや綿畠

391  柿売の旅寐は寒し柿の側

392  関越て亦柿かふる袂かな

393  残る葉と染かハす柿や二ツ三ツ

394  かぶり欠く柿の渋さや十か十

395  恋にせし新酒吞けりかづら結

396  よく飲ハ゛価ハとらしことし酒

397  きりはたりてうさやようさや呉服祭

398  新米のもたるゝ腹や穀潰し

399  とうあろと先新米にうまし国

400  芦の穂に沖の早風の余哉

                   原画 早稲田大学古典籍

 

401  迷ひ出る道の藪根の照葉かな

402  薬堀蝮も提てもとりけり

403  身ひとつをよせる籬や種ふくへ

404   口を切る瓢や禅のかの刀

405  此あたり書出し人もへくへ哉

406  ひとつ家に年あるさたや水煙草

407  夜の香や煙草寐せ置庭の隅

408  事繁く臼踏む軒やかけたはこ

409  小山田の水落す日やしたりかほ

410  永き夜を半分酒に遣ひけり

411  あきの夜や自問自答の気の弱

412  長き夜や夢想さらりと忘れける

413  寐て起て長き夜にすむひとり哉

414  永き夜や思ひけし行老の夢

415  落る日や北に雨もつ暮の秋

416  長きよや余所に寝覚し酒の酔

                   原画 早稲田大学古典籍

 

417  壁つゞる傾城町やくれのあき

418  塵塚に 蕣さきぬくれの秋

419  行秋や抱けは身に沿ふ膝頭

420  孳せし馬の弱りや暮の秋

                        原画 早稲田大学古典籍