会員の平井さんがヤフーおークションで購入された版本の「江戸往来」です。著作権を気にせず掲載できます。
「芝泉堂」というのは芝浜松町二丁目にあった筆道塾で、ここには諸藩の右筆や手習い師匠を育成する上級の書道家を目指す人材が集まって門弟数三千人を擁したと言われる当時において日本一の書道塾でした。
「江戸往来」は1669年(寛文9)/往来ものでは先駆的な作ですが、著者不明。江戸の武家の儀礼や、行事、江戸の地名、神社仏閣、諸国の物産などを紹介して、江戸についての参考書のような使われ方をしたようです。
寺子屋などではもじ習得のテキストとして使われました。別名「自遣往来」
芝泉堂先生書
江戸往来並八景和歌
東都書林 泉栄堂梓
自遣往来
陽春之慶賀珍重珍重
富貴万福、幸甚・幸甚、日々
新而自他繁栄重畳、於
于今者雖事旧候、猶更
不可有休期候、先以年始之
御規式、元日二日御一門之
御方々、国主、城主之歴々
三献之御祝、其外諸候
昵近之面々、詰衆、番頭、物頭
諸役人、諸番之健士、御流
頂戴之、且又大中納言、参議
中将、少将、侍従、四品五位之
諸大夫迄者、美服二領宛下
賜之、依家禄之軽重与官
※休期・・・(きゅうご)辞書にない言葉ですが,現代の言葉に訳すれば休暇
位之浅深、或台、或以廣蓋
拝領之、三日者諸大名之息子
無位無冠並諸家中之証人
及京都、大坂、奈良、堺、伏見
淀、過書、銀座、米座之輩迄
群候于落縁、品々進物奉
捧之御礼申上候也、同日入夜
為御謡初酉刻大広間
出御祇候之大小名令着長
袴■装四座之猿楽、群居
※証人・・・江戸時代、幕府が人質の意味をもって、江戸屋敷に居住させた
大名の妻子。
過書・・・ 関所通行の許可証。律令制では、官人に政府の発行する通行証
を携行させた。中世には通行税免除証となり、江戸時代には関所
手形となった。かそ。ここではその場所を言っているようだ。
■・・・読みは装をつくろふるですが、つくろうが漢字一覧にありません。
板縁、御囃子三番、所謂老
松、東北、高砂是也、折々小
謡唄之、従諸候所献御盃
台、銘々披露有之間、御酒
宴也、御作法之結構、言語
道断、難顕筆端候、門々警固
挑灯者輝櫓多門、焼戦篝
火者映堀水、不異白昼候
五日者寛永寺之僧侶数
十許之輩、六日者近里遠
境之諸寺、諸山、出家、社人
山伏等数百人充満于営中
奉拝 台顔、七日者七種之
御粥献之、十一日者御具足
御祝並連歌之御興行是
依御嘉例也、十五日者恒例之
諸御礼、十七日者東叡山
御参 宮、廿日同所御参堂
廿四日増上寺御仏詣也、凡
此三箇日者別而被改御装束
※台顔・・・将軍の顔、拝謁すること。
被回長柄之御輿、供奉之
勇士列二行其出立、或時者
衣冠衛府之太刀帯之、又或
時者大紋風折烏帽子也
布衣以下平侍、頗難斗
其員、辻々、門々、屋々警固
着烏帽子、素袍袴、平伏
大路而敢無奉拝御轅(ながえ)拝
殿及入御者予所候之
伶綸奏楽、繁絃、急管金
※布位・・・(ほい)6位相当の官職
玉之聲玲瓏而澄心耳
衆僧者解御経之紐、奉読
誦之音声斗会而響
青雲九天之上、天人影降
菩薩来臨経歟与疑、無
精草木垂枝敷葉翔空
翅下地、走地獣者屈膝抛
脛、况於人倫哉無不傾渇仰
首御先祖之御崇敬、仏神
御信仰l理世安民之御政言袷(かれ)
言恰(これ)前代未聞之名君挙
世所知之也、猶追日、時々節々之
御祝儀、其外臨時之御祝等
連綿而無断絶候、誠目出
度御粧嘉展令月歓無
極千秋萬歳不易之御代
誰不奉仰之哉、因茲国々之
土産所々之珍奇、日々之進物
菓肴衣服器財以下雖令
混乱任、思出馳禿筆訖
※禿筆・・・(とくひつ)穂先の擦り切れた筆。ちびた筆。また、自分の文章や筆力
を謙遜していう語。
是併大海之一滴九牛之
一毛也、先御菓子者吉野榧
非異朝、大和柿、小渋柿、西
條柿、八代蜜柑、白輪柑子、上
條瓜、真桑瓜、舳瓜、川越瓜
当所之新田、鳴子瓜、浅草
鯉、芝肴、品川海苔、馬刀蛤
岩堀菱、醒井餅、仙台糒(ほしい)、
氷餅、甲州之楊梅、林檎、丹波
大栗、朝倉山椒、鎮西之薏
以仁、博多練酒、白芋茎、
菊池海苔、相良和布、雅海藻、
十六嶋海苔、日光山岩茸
富士苔、松本漬蕨、川茸、海
蕈(うみきのこ)、入野鮒、岩槻鯽、竹嶋蚫
海部熨斗、紀伊国忍冬
酒、興津鯛、丹後鰤、能登鯖
岩城浮亀、海丹塩辛、松前
昆布、膃朒𦜝(おっとせい)、小豆島之串海
鼠、、五嶋鯣(するめ)、宇和鰯、黒漬、疋
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