主宰五句 村中のぶを
俯きし提灯花の一隅よ
ゆくりなく「只管写生」碑に夏茜
梅雨夕焼球磨の山河をおもへとや
冷酒やいのち冥加と申すべく
麦稈帽下駄履きわれの自尊心
※「只管写生」は松本たかしが唱えた俳句作法
松の実集
リハビリ 安永静子
リハビリの秋庭周回蚊遣香
明日あるを信じリハビリ星涼し
冷房や籠り居に脚弱りゆく
生きなんとリハビリ続け秋に入る
リハビリにふらつく足や秋暑し
雲の峰 山並一美
涼しさも届く受話器の向かうから
草を取るときどき海を眺めては
逢へる日の当てなき別れ菊に酌む
独りには非ず仏と満月と
雲の峰時折り遠き子のことを
風合いと色合ひ 伊東琴
紫草(むらさき)や母の好みし色吾も
織り上げし麻布の風合母に問ふ
藍刈るや手に染む藍もこぼさじと
経も緯も糸はカシミヤ草茜(あかね)染め
八千草や織機を踏めぬ足となり
先師の忌 西村泰三
岩すべり覚え幼や水遊び
逃げろ逃げろパパの水鉄砲追ひ来
芦の音波音ときに通し鳰
忍び入るかに空堀を葛伸びゐ
夕野火忌・連葉子忌
梅雨に祈る十日違ひの先師の忌
雑詠選後に のぶを
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