べんりや日記

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加工中・・・

2009-05-05 23:38:53 | 新築に近い宮本町M邸(越後杉)

5月の連休前に刻みを終え、連休明けに土台敷きを・・というところでしたが、やはりあと3日は必要かというところ・・
7日より残りの加工を終えれば11日から土台敷きか・・お客さんへの説明どおりの日程となりそうです。(もう少し早くできれば、気分も楽なのですが・・)今回も少し難産。

写真は、受け材の加工風景です。
このような窓上の受け材や差鴨居(さしがもい)が何箇所もあります。屋根が瓦なので余計、強度を持たせたいという配慮です。(普通はここまでやらないのだろうけれど)
金物を使う方法ならば、「短ホゾ差し」で「羽子板ボルト」または「平短冊金物」で固定すれば済むところですが、「長ホゾ差し」にして「鼻栓打ち」にしてあります。
よって、建て方にも時間がかかります。
でも耐久性や耐震性を思うとこちらのほうが、ずっと丈夫になる。
ただそれだけのこと・・・・





丸太の中引(なかびき)の加工も最終段階です。


小屋の梁間方向と直角に入れて、妻から反対側の妻まで突き抜ける1本の丸太を「中引」といい、最近の建物では導入しない部材です。小屋組は「梁」のみで構成されるのが殆どで、「頭つなぎ」(4寸角とか?)で繋げばいいほうです。
小屋梁と直行させて、これらを「渡りあご」等で固定し、小屋組みの「こし」を付けます。
梁は言わば「あばら骨」にあたり、中引は「背骨」にあたります。
昔の建物では、3間間口の梁間で2~3本は入れました。(だから地震に強かった)
現在では「火打梁(ひうちばり)」を多用して小屋組の水平剛性を高めていますが、その火打梁の取り付け面が弱いと、応力が集中し、桁が折れてしまう懸念があるので、極力使いたくないのであります。
でも、検査がしやすいので、瑕疵保証制度の「保険」適用では、取り付けなければならず、やむなく今回は数箇所取り付けるのであります。

それも、金物固定ではなく、大栓、丸栓にて固定・・
よって、部屋側にはいっさい金物は見えません(ていうか、使わないんだけど・・)
下手に金物をダボとかで細工して隠さなくても、はじめから金物を使わなければ、そんな小細工をしなくてもいいじゃないかという・・合理性。(?)




新潟市・潟東にあるテクノランバー新潟




その傍らで刻みを待つ「昇り梁」
プレカットでは出来ないので、手加工になります。
・・にしてもデカイかな・・




通常の梁を落とす「蟻落とし(ありおとし)」


他の会社の現場へ行く材料もあったので、色々と見て回ったのですが、在来軸組み工法だと、こういった仕口で合理化をはかっているのがよくわかります。
「蟻落とし」は昔の巻物では一番強度が出ない継ぎ方で、プレハブ等の簡易的な建物に用いられるのですが、加工も取り付けも簡単なので高度経済成長時に普及した方法です。
桁に梁を落として「羽子板ボルト」で固定するのですが、ウィークポイントが梁の下の部分で、地震時に離れてしまう。特に、梁が大きいと、下は柱で受けることなり、梁下が開くのを止めるためには、柱に穴を開けてボルトを貫通する必要がありますが、そこまで考えている所はほとんどありません。
し、柱に穴を開ければ弱くなってしまう・・・
根本的に考え直す必要があるかと思いますが、「渡りあご」や「折置工法」「きょうろ工法」を採用するには、木構造を勉強し直さなければならないので、普通の工務店さんはプレカット屋さんの言いなりになるしかないのでしょう・・・
その場合でも、梁の取り付け部より少し内側に添え柱を取り付けて、体力的に持たせるとか・・そういった工夫の余地はあると思います。間取りや柱の入れ方でカバーされたし(そこまで考えんか・・フツーは・・)



柱や束等の竪物を加工する機械。
どんどん出てきます。




通し柱の土台の差さる部分(メス加工)


プレカットだと、こういった「丸」加工しか出来ません。
「丸ノコ」や「ノミ」が出て加工するのではなく、「ドリル」や「回転歯」が加工するため、こういった形状になります。
これでは、横架材を差せないので、「角」にする作業をします。




プレカット在中の大工が、わざわざ「ノミ」で加工する


こうやって、最後は「手加工」によって「丸」を「角」に仕上げていきます。



仕上げ終わった横架材の仕口
このように、前後、左右の取り付け位置に段差をつけることで、
欠損の分散をして、強度をなるべく損なわないようにしています。
「渡りあご」だから出来る方法です。


「プレカット工場」と言えど、大工も入って細かい作業をしなければならないのも、私の物件であるゆえの試練。他の物件では殆どないようです。(すまないね~)
強度が弱い地元杉材では、構造的に貧弱になってしまうという欠点を補うための「長ホゾ」の採用なのですが、そのためには1工程も2工程も多くなってしまいます。また、材料もワンランクアップの断面にしないと強度が上がらないし、継ぎ手も長めで接続しないと弱い継ぎ手になってしまう。

普通の在来木軸の作り方だと、「弱い」建物になってしまうのに、そのまま地元杉材に切り替えている工務店が多いのも、困ったものです。金物だって、食込んで、空いて効かなくなってしまう。
大工がもっと、木を勉強してほしいところでもあります。

地元杉材を活用し、流通するには、こういった工夫をしていかないと、単に「粗悪で高い品」のレッテルを貼り続けることになります。
いつまでたっても、材木屋さんに敬遠される材料になってしまうし、他県の材料に圧されてしまう運命にある。

地元産材を活かすも殺すも、地元の大工次第ということを肝に命じて、覚悟して使ってほしい。
そのためにも、こういった技術を公開し続けるのであります。「こういった方法ならば、使いこなせるよ」という方向付けでもあります。



通し柱の先は「重ホゾ(じゅうほぞ)」
プレカットだって、やれば出来る!






他社へ行く通常の柱ホゾ(上)と我が社に納入する「長ホゾ」の柱(下)


通常のプレカットのホゾは黙っていれば最長6センチです。
土台の半分までしか入らないので、土台に重みがかかり、土台が圧縮されてめり込んでしまいます。
土台を貫通して、柱のホゾが基礎にトンと乗れば、そういった心配もなくなります。
「通しホゾ」を採用することで、土台のめり込みも耐震性も向上します。
「耐震性?」と思われるかも知れませんが、地震時、短ホゾだと応力が集中し、ホゾが土台を裂いてしまう現象が確認されました。V金物で補強したところが、釘によって逆に土台や柱、筋違いが裂けてしまう・・・

「長ホゾ」にすることで、応力が平均にかかり、抜ける確立も裂ける割合も低くなります。

こういった工夫も、「新潟県中越地震」の経験の賜物です。
でも、市内のプレカット屋さんでは「長ホゾ」ではなく「硬木」をホゾの足りない6センチ部分に入れればいいという工法を自信満々で採用していて薦めている様で・・
それでは、全く短ホゾと変わりが無い分けで・・いったい地震で何を学んだのか・・泣けてきます。

こういった、小さなことを一つ一つ解説していくと、きりがないのでありますが、繰り返し説明していかないと、他の会社と同じようなことをしているのだと勘違いされて、仕上げとか見た目とか営業の上手い下手だけで判断されているので、改めて解説しております。

「地元の山の木」を使うのは、とっても大変。
でも、その苦悩をクリアすれば、耐久性もあり、地震にも大雪にも強い建物になり、「癒しの空間」を実現することができます。
温暖化防止、地元の環境保全、循環経済の形成にも役立つことにもなる。

安心、安全、将来性・・目に見えないもの・・直ぐに分からないもの・・儲からないもの・・そういうものに命を掛ける。
そういう人が居たっていいじゃないか?

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