下:短ホゾ差し(小胴付き)
長期優良住宅の検討を行っていますが、どうも納得いかないのが、「傾木大入れ短ホゾ差し」(かたぎおおいれたんほぞさし)です。
長期優良住宅やフラット35Sの仕様にも採用されているのですが、どうも木造住宅に明るくない人たちが作って、そのままのものを引き継いでいるような感じがあります。
現在、主流になっているのがプレカットによる工場加工による軸組みですが、プレカット機械では、「傾木大入れ短ホゾ差し」は加工不可能なはずです。
下の図(小胴付短ホゾ指し)が一般に行われていると思われますが、長期優良の仕様では「傾木大入れ短ホゾ差し」が指定され、「手加工」による通し柱と梁の仕口が必要です。
でも、おそらく、この部分を手加工で行っている工務店は少ないでしょう。
実際、「傾木大入れ短ホゾ差し」のほうが、力を伝える面積が大きく、めり込みが少なくなるので構造的には有効です。また、通し柱の欠き取り少なくて済みます。
最終的には、兼折金物や羽子板ボルトにて固定するのですが・・
問題点 |
「傾木大入れ短ホゾ差し」の場合、片側から1方向の差込ならばよいのですが、L字、T字に入る場合はどうするのか・・ということです。
L字コーナーに入れた場合、梁と梁どうしの傾木部分が交差し合い、片側を欠き取らねばなりません。
対策としては、柱を大きくすることでしょうか・・
調べた所、財団法人 日本住宅・木材技術センターの「標準納まり図」でも同じ図が載っていて、基準法第47条「継ぎ手及び仕口の納まり」及び品格法(告示第1654号)の「横架材及び通し柱と接合金物の納まり」に同様の図が掲載され、やはり隠れた場所は分からないように描いてあります。
「これに準ずる方法で接合、補強する」
ということですが、元が
「不完全」
な場合は、
「不完全なものに準ずる接合方法」
で、良いのでしょうか?
これは、今まで誰も指摘しなかったのでしょうか・・・・
よく、ここまで野放しになっていたものです。長期優良住宅の根本でもある品格法の内容がこれですから・・・大丈夫なのだろうか?
とは言え、ちゃんとしたものを提案しなければ、次へは進めないわけで、補足しながら検討していきましょう。
T2仕様の場合 |
通し柱にT字交差する場合、一方は「梁」になる可能性があります。
梁は上からの力を支える大事な部材で、それを取り付ける柱の部分には、荷重がかかります。この部分の面積が十分にとられていないと、柱や梁がめり込んで下がってしまう。
仕口の検討には、そういった配慮が必要になってくるのですが・・・・
1方が床梁の場合の傾木大入短ホゾ差しの納まり
梁は上からの荷重を支える材料なので、
柱の取り付け面に注意が必要です。
これが一番理想的なのではないでしょうか?
「世界で一番やさしい木構造」より
この仕口でも、まだ問題はあります。荷重を支えるだけの部分を優先するために、梁と桁を段違いにしている点です。
これには「全体的な構造の検討」が必要となってきます。
梁と桁を段違いにした場合、他の部分でも段差ができるため、「渡りあご」の部分が必ず出てきます。
これは、「伝統構法」に近い構造となりますが、力の流れを考慮して、「全体の構造」を決定していくことが必要で、「仕口の部分」だけを見て決めて行く作業では追いつきません。
「部分と全体」が大切です。
「世界で一番やさしい木構造」
山辺豊彦(やまべとよひこ)著 エクスナレッジ発行
価格 \2,800+税
伝統構法を応用した長期優良プロジェクトへ・・
藤川さんが今回指摘されたような事は、木構造において、まだまだたくさんあるんでしょうね。一つ一つを検証して整理していく作業がこれから必要なんだと感じました。
長期優良住宅に関しては、葛藤があります。何で100年もつ住宅をわざわざ60年までの耐久性に落とさねばならないのか・・
60年住宅(長期優良住宅)を100年までもたせるまでにレベルを上げたいところです。それには金物の入れ方を工夫していく必要がある。
次は「継ぎ手」の話になってくると思います。宮崎さんも覚悟しておいてください(笑)