ソーシャルメディアにおける「読解力」に関する一考察
ここから https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkg/68/8/68_406/_pdf/-char/ja
本論文は,ソーシャルメディアを利用する際に求められる「読解力」の特徴とその教育方法について考察することを目的としたものである。具体的には,メディア・リテラシーに関する研究の蓄積,ソーシャルメディアの特性に関する議論,教材開発と教育実践の事例を概観して検討した。その結果,「多様な価値観をもつ人と人との相互作用で生成されていること」や「目にする情報の範囲を自分で限定していること」などを踏まえて読み解くことが,ソーシャルメディアの「読解力」として必要になることを指摘した。また,そうした能力を育む「探究と対話を通じた教育方法」の可能性を確認することができた。
一部を抜き出します。
そもそも,「読解力」をどのように捉えるべきか。わが国の教育現場における「読解力」という言葉は,従来「書かれた文章を,筆者の目的と意図に応じて正確に読む力と,読み手の目的に応じて文章の中から必要な情報を正確に取り出すこと,そして文章を正確に読んで自らの感動や主観的な気づきを感じること」を意味していたとされる 4)。
一方,現在では,OECD(経済協力開発機構)が PISA 調査において定義している「自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会に参加するために,書かれたテキストを理解し,利用し,熟考する能力」としても捉えられるようになった。
文部科学省は,この後者の「読解力」について,文章や資料から「情報を取り出す」ことに加えて,「解釈」「熟考・評価」「論述」することを含むものであるとし,以下のような特徴を有していると説明している 5)。
1 テキストに書かれた「情報の取り出し」だけはなく,「理解・評価」(解釈・熟考)も含んでいること。
2 テキストを単に「読む」だけではなく,テキストを利用したり,テキストに基づいて自分の意見を論じたりするなどの「活用」も含んでいること。
3 テキストの「内容」だけではなく,構造・形式や表現法も,評価すべき対象となること。
4 テキストには,文学的文章や説明的文章などの「連続型テキスト」だけでなく,図,グラフ,表などの「非連続型テキスト」を含んでいること。