ものづくり中部の革新者たちⅢ より 石河正竜を紹介します。
去る2022(令和4)年9月10日(土)に名古屋都市センター(金山南ビル内) 11階「まちづくり広場・企画展示コーナー」で行われた、第17回パネル展 での学びを振り返ります。
ここから http://csih.sakura.ne.jp/panerutenn.html
今回は、石河正竜 常に先を見て事を起こす-初期綿糸紡績所設立の立役者-
1. 革新実業家 (1)
常に先を見て事を起こす
石河正龍一初期綿糸紡績所設立の立役者-
■ 鹿児島紡績所、堺紡績所建設の建白書と開業
石河正龍は、 1826年1月26日 (文政8年12月19日)、 現 奈良県橿原市で出生。 江戸 、 長崎で蘭学を学ぶ。 1857年に薩摩藩に召し抱えられ、 1862年に物産会所の建議、 国内交易の提案などを行う。 1863年には紡績機械を輸入して紡績所建設の意見書を提出。 これが採用され1867年に日本最初の近代紡績所となる鹿児島紡績 所が開業する。 続いて同藩の本格的紡績工場として建設したのが 1870 (明治3) 年に大阪戎島に開業した堺紡績所であった。 その建設責任者もまた石河正龍であった。 英国から2000錘のミュール精紡機や蒸気機関が輸入され、同年12月に本格稼働する。 ここは廃藩置県の際に明治政府
に買収されるが、 石河正龍は引き続きその責任者として政府に登用され任に当たった。
■官営の愛知紡績所を建設
明治政府は、国内の近代紡績の振興を図るため、 前田正名の「興業意見」に基づき、 ①官営模範工場の設置 (2工場)、②10基の輸入紡績機代金の無利子10ヶ年の年譜払い下げ (十基紡と呼称、 実際は9工場)、 ③翰入紡績機の代金立替払い (3工場)、 の3つの奨励策を推進した。 愛知紡績所は第1紡績所として(第2紡績所は広島紡績所、 開業前に民間払い下げ)、現・岡崎市大平町に建設され、 2000錘のミュール 青紡機を据え付け、 1881 (明治14) 年に唯一の官営の綿糸紡績工場として開業する。 石河正龍は堺紡績所建設での技術が高く評価され、ここでも政府雇技師として愛知紡績所や広島紡績所のほか、上記②や③を含めた初期綿糸紡績所の13工場の立地選定及び紡績所設計で中心的に関わることとなった。
■初期綿糸紡績所の建設に奔走
こうした紡績所建設で石河正龍が重視したのは、 紡績機械の動力に水車を用いることであった。 日本では水車設置に適する河川が多いと見ていたことによるが、 そのために立地選定で全国各地を奔走する。 最初の建設となった愛知紡績所では、 模範工場であったことから、最も力を注ぐことになる。 その一つが大出力が可能なフルネイロン水車と呼ばれる洋式のタービン水車を設置したことであった。 しかもこれを輸入でなく開業1年前の1880年に横須賀造船所で作らせている。 国産にしなければ製造技術は育たないとみた石河正龍の先を見据えた方針であった。 これを皮切りに1885年までに広島紡績所、 三重紡績所、 豊井紡績所、 島田紡績所、 下野紡績所にほぼ毎年1台ずつ製造して設置していくことになる。
その1台が写真に見る形式である。 こうした水車図面が下野紡績所と島田紡績所創業者宅から発見されている。 中でも画期は、 英国製とは異なる吹上形式として軸受負荷を軽減していることで、 石河の工夫とも推測されている。
石河正龍は、 愛知紡績所に続く十基紡等の立地や工場設計に奔走したが、 その拠点は居を構えていた愛知紡績所のある岡崎であった。 まさに石河正龍なくして初期綿糸紡績所は成り立たなかったであろう。 「我が国近代紡績の父」と呼ぶに相応しい人物であった。(天野武弘)
愛知紡績所 紡績機械配置図
(導水路、建物配置、門が実際とずれている)
出典: 『本邦綿糸紡績史 第2巻』 1937年
《 参 考 》
橿原が生んだ偉人 谷三山と石河正竜 http://www.kazabito.com/npo_history/200119tanisanzan&ishikawaseiryu.pdf
石河正竜(いしかわ・せいりゅう)・奈良/鹿児島の偉人 http://blog.livedoor.jp/ijinroku/archives/51634979.html
石河正龍と大島高任 - Author(s) 堀江, 保蔵 Citation 經濟論叢 ... https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/132697/1/eca0843_183.pdf
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