日本漢字能力検定(漢検) ブログランキングへ
<「漢字の学習の大禁忌は作輟なり」・・・「作輟(サクテツ)」:やったりやらなかったりすること・・・>

<漢検1級 27-③に向けて その66>
●福沢諭吉の「学問のすすめ」・・・。
●難度:意外に難かも・・・80%(24点)以上が目標・・・。
●文章題㉛:次の文章中の傍線(1~10)のカタカナを漢字に直し、傍線(ア~コ)の漢字の読みをひらがなで記せ。(30) 書き2×10 読み1×10
「学問のすすめ」(福沢諭吉)
「・・・ゆえに学問の本趣意は読書のみにあらずして、精神の働きにあり。この働きを活用して実地に施すにはさまざまの工夫なかるべからず。
すなわち視察、推究、読書はもって智見を集め、談話はもって智見を交易し、著書、演説はもって智見を散ずるの術なり。然りしこうしてこの諸術のうちに、あるいは一人の私をもって能くすべきものありといえども、談話と演説とに至りては必ずしも人とともにせざるを得ず。演説会の
(1)ヨウヨウなることもって知るべきなり。
(2)ホウコンわが国民においてもっとも憂うべきはその見識の
(ア)賤しきことなり。これを導きて高尚の域に進めんとするはもとより今の学者の職分なれば、いやしくもその方便あるを知らば力を尽くしてこれに従事せざるべからず。しかるに学問の道において、談話、演説の大切なるはすでに明白にして、今日これを実に行なう者なきはなんぞや。学者の
(3)ランダと言うべし。人間の事には内外両様の別ありて、両つながらこれを勉めざるべからず。今の学者は内の一方に身を
(イ)委して、外の務めを知らざる者多し。
・・・右のごとく、インドの文も、トルコの武も、かつてその国の文明に益せざるはなんぞや。その人民の所見わずかに一国内にとどまり、自国の有様に満足し、その有様の一部分をもって他国に比較し、その間に優劣なきを見てこれに欺かれ、議論もここに止まり、徒党もここに止まり、勝敗栄辱ともに他の有様の全体を目的とすることを知らずして、万民太平を謡うか、または兄弟墻(かき)に
(ウ)鬩ぐのその間に、商売の権威に圧しられて国を失うたるものなり。洋商の向かうところはアジヤに敵なし。恐れざるべからず。もしこの
(4)ケイテキを恐れて、兼ねてまたその国の文明を慕うことあらば、よく内外の有様を比較して勉むるところなかるべからず
・・・そもそもわが国の人民に気力なきその原因を尋ぬるに、数千百年の古より全国の権柄を政府の一手に握り、武備・文学より工業・商売に至るまで、人間些末の事務といえども政府の関わらざるものなく、人民はただ政府の
(5)ソウするところに向かいて奔走するのみ。あたかも国は政府の私有にして、人民は国の食客たるがごとし。すでに無宿の食客となりてわずかにこの国中に寄食するを得るものなれば、国を視ること
(6)ゲキリョのごとく、かつて深切の意を尽くすことなく、またその気力を
(エ)見すべき機会をも得ずして、ついに全国の気風を養いなしたるなり。
しかのみならず今日に至りては、なおこれよりはなはだしきことあり。おおよそ世間の事物、進まざる者は必ず退き、退かざる者は必ず進む。進まず退かずして
(オ)潴滞する者はあるべからざるの理なり。
・・・第四、人にはおのおの至誠の本心あり。誠の心はもって情欲を制し、その方向を正しくして止まるところを定むべし。たとえば情欲には限りなきものにて、美服美食もいずれにて十分と
(カ)界を定め難し。今もし働くべき仕事をば捨て置き、ひたすらわが欲するもののみを得んとせば、他人を害してわが身を利するよりほかに道なし。これを人間の所業と言うべからず。この時に当たりて欲と道理とを分別し、欲を離れて道理の内に入らしむるものは誠の本心なり。第五、人にはおのおの意思あり。意思はもって事をなすの志を立つべし。譬えば世の事は怪我の
(キ)機にてできるものなし。善き事も悪き事もみな人のこれをなさんとする意ありてこそできるものなり。
・・・さて百姓に至りてはもはや目下の者もあらざれば少し当惑の次第なれども、元来この議論は人間世界に通用すべき当然の理に基づきたるものなれば、百万遍の道理にて、回れば本に返らざるを得ず。「百姓も人なり、禁裏さまも人なり、遠慮はなし」と御免を蒙り、百姓の心をもって禁裏さまの身を勝手次第に取り扱い、
(ク)行幸あらんとすれば「止まれ」と言い、
(ケ)行在に止まらんとすれば「
(7)カンギョ」と言い、起居眠食、みな百姓の思いのままにて、金衣玉食を廃して麦飯を進むるなどのことに至らば如何。かくのごときはすなわち日本国中の人民、身みずからその身を制するの権義なくしてかえって他人を制するの権あり。
・・・ しかるに世の中にはこの蟻の所業をもってみずから満足する人あり。今その一例を挙げん。男子年長じて、あるいは工につき、あるいは商に帰し、あるいは官員となりて、ようやく親類朋友の厄介たるを免れ、相応に衣食して他人へ不義理の沙汰もなく、借屋にあらざれば自分にて手軽に家を作り、
(8)カジュウはいまだ整わずとも細君だけはまずとりあえずとて、望みのとおりに若き婦人を
(コ)娶り、身の治まりもつきて倹約を守り、子供は沢山に生まれたれども教育もひととおりのことなればさしたる銭もいらず、不時病気等の入用に三十円か五十円の金にはいつも差しつかえなくして、細く永く長久の策に心配し、とにもかくにも一軒の家を守る者あれば、みずから独立の活計を得たりとて得意の色をなし、世の人もこれを目して
(9)フキ独立の人物と言い、過分の働きをなしたる手柄もののように称すれども、その実は大なる間違いならずや。
(十三編 ― 怨望の人間に害あるを論ず ―)
およそ人間に不徳の筒条多しといえども、その交際に害あるものは怨望より大なるはなし。
(10)タンリン、奢侈、誹謗の類はいずれも不徳のいちじるしきものなれども、よくこれを吟味すれば、その働きの素質において不善なるにあらず。これを施すべき場所柄と、その強弱の度と、その向かうところの方角とによりて、不徳の名を免るることあり。・・・」
👍👍👍 🐑 👍👍👍


(1)要用(「①必要なこと。肝要。須要。②大切な要事。」(広辞苑) (2)方今 (3)懶惰 (4)勁敵(「勍敵」でも可か) (5)嗾 (6)逆旅 (7)還御 (8)家什 (9)不覊 (10)貪吝
(ア)いや (イ)まか (ウ)せめ (エ)あらわ (オ)ちょたい (カ)さかい (キ)はずみ (ク)ぎょうこう (ケ)あんざい (コ)めと
👍👍👍 🐑 👍👍👍