漢検1級198点!! 満点取るまで生涯学習!! ➪ “俳句”

我孫子・手賀沼と愛猫レオンの徒然日記。漢検1級チャレンジャーの方の参考となるブログ。2018年7月から“俳句”も開始。

syuusyuu 漢検1級 模擬試験問題 (27-③用) その1 

2015年12月13日 | 模擬試験問題
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<「漢字の学習の大禁忌は作輟なり」・・・「作輟(サクテツ)」:やったりやらなかったりすること・・・>

●ちょっと作ってみました。感想、コメントなどをよろしくお願いします。
●前回の夏の特訓の20作よりは難度を下げて、前回の本番27-②よりは若干難度が高いレベルかと思います。
●具体的には、27-②で実際に獲得された点数から▲10~30点ぐらい低くなる想定で作成しています・・・点数に幅があるのは、前作の経験から、基礎力の違いによって各人の変動の幅が違うからです。・・・さて、そうなっているかな?
●コメントなどを踏まえて次回以降の作成を考えたいと思っていますので、よろしくお願いいたします👍
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<syuusyuu 漢検1級 模擬試験問題 (27-③用) その1 >  制限時間 60分以内を厳守のこと

(一)次の傍線部分の読みをひらがなで記せ。1~20は音読み、21~30は訓読みである。(30)1×30
1.機を織る擲梭の音が聞こえる
2.燕燕于に飛び、其の羽を差池す 
3.黄禾、羸馬を起たしむ
4.養怡の福 永年を得可し 
5.百骸九竅の中に物あり
6.節目の木、嚙蹄の馬多し
7.繊繊伐(う)たざれば必ず妖孼を成す
8.里山で菌蕈を採集する
9.武力で彼らを攘斥する
10.卑枝、屋椽と成す   
11.職事御精厲の由、抃賀の至りに存じ奉り候
12.を絶ち、欲を棄て、明らかに訴訟を弁ぜよ
13.太陽が曄曄として照る
14.伊勢崎銘仙には、「珍絣」ともいうものがある
15.多事仍仍多言する能わざるなり
16.天下正論の起仆必ず此の一挙に之れあるべき
17.明允篤誠な性格が好まれる
18.鬮定により先鋒を選出する
19.を以て楹と為す
20.汝の美しさを説懌
21.窓轅にりて、轍に臥す
22.井を塞ぎ、竈をらぐ
23.万寿、り無し 
24.首を俛し、耳を
25.キャビアはの卵を塩漬けにしたものだ
26.か、それ会うことあらん 
27.「の宣旨」とは、宮廷内で輦に乗ることを許す宣旨のことである
28.道のに朽ちかけた小屋がある
29.桛鱶とは、シュモクザメの異称である
30.管をり、觚を操る

(二)次の傍線部分のカタカナを漢字で記せ。(30)2×15
1.鮭のハララゴがイクラだ
2.「キンシ勲章」の名は、神武天皇東征時に、弓の先に止まった金色のトビに由来しているといわれる。
3.ひしひしと音がヒシメ
4.コウカンな書籍を蔵している   
5.ガイダ、珠を成す
6.モウセンゴケは食虫植物の一つだ
7.その努力がトジに終わることはない
8.豆を煮るにマメガラを燃く
9.アスファルトのことをドレキセイと書く
10.ナマフのもちもちとした食感が堪らない
11.ユダメを用いて強弓を調える
12.神社のネギは神主の下の神職だ
13.ネギの花は擬宝珠に似ている
14.事業に失敗してカサンを傾けてしまった 
15.貴兄のごカサンをお祈りいたします 

(三)次の傍線部分のカタカナを国字で記せ。(10)2×5
1.ナマズは地震のことをいう、という意味もある
2.キクイタダキは頭頂の中央が黄色いのが特徴だ
3.ゴザを敷いて坐る
4.ナタ豆は通常、「鉈豆・刀豆」と書く
5.「ササラ先穂(さっぽう)」とは、「①サボテンの異称のほか、②財産のすり減ったさま・めちゃくちゃになったさま。」を意味する。

(四)次の1~5の意味を的確に表す語を下の語群から選び、漢字で記せ。(10)2×5
1.炎症または充血などを除去するために患部を温めまたは冷やす療法
2.身体内部に生じる腫物
3.老人と子供のこと
4.馬・牛・豚などの胆石、腸内の結石。ヘイサラバサラ。
5.雄弁家、論客。
<語群>
(えんぽう、ないよう、さとう、せんぎしゃ、ぼうげい、あんぽう、とうさ、、ばくぎしゃ)

(五)次の四字熟語について、問1と問2に答えよ。 (30)   
問1 次の四字熟語の(1~10)に入る適切な語を下の語群から選び漢字二字で示せ。
(20) 2×10
1.ア(   )求遠 2.イ(  )成章 3.ウ(  )虎頸  4.エ(  )狗盗 5.オ(  )鴆毒 
6.カ一言(  )  7.キ鹿死(  ) 8.ク嚆矢(  )  9.ケ史魚(  ) 10.コ鏃礪(  )
<語群>
(すいしゅ、らんしょう、えんあん、かつう、ざいじ、ほうおん、そせつ、ちゅつひん、えんがん、ひぜん)
問2 次の11~15の解説・意味にあてはまるものを、問1のア~コの四字熟語から一つ選び、記号(ア~コ)で記せ。(10)2×5
11.正道は他に求めず自分自身の中に見いだすべきということ
12.仮もがりの葬儀礼を退けてまで主君を諌めること
13.美しい模様を織りなしていること、文才・文藻のあること
14.声をかけてもらったことを忘れずに感謝すること
15.天下の統一がならない、勝敗が決まらない状態

(六)次の熟字訓・当て字の読みを記せ。(10) 1×10
1.胡頽子 2.角鴟 3.栄螺 4.鬼頭魚 5.四照花 6.蕀苑 7.生絹 8.鹿杖 9.花鶏 10.黄槿

(七)次の熟語の読み(音読み)と、その語義にふさわしい訓読みを(送りがなに注意して)ひらがなで記せ。 (10)1×10
ア.1.嵒巒 ― イ.2.嵒しい
ウ.3.標榜 ― エ.4.榜げる
オ.5.馮河 ― カ.6.馮る
キ.7.勦説 ― ク.8.勦る
ケ.9.驪竜 ― コ.10.驪い

(八)次の1~5の対義語、6~10の類義語を下の語群から選び、漢字で記せ。語群の語は一度だけ使うこと。(20)2×10
<対義語>
1.解纜 2.膏腴 3.称揚 4.可染 5.浄土 
<類義語>
6.摘要 7.騒擾 8.下舂 9.神官 10.吉兆
<語群>
(しょうしき、しど、らんよう、ぼうばん、きゅうちょう、へんぼう、こうぶ、けいりゅう、きょうどう、びょうしゅく)

(九)次の故事・成語・諺のカタカナの部分を漢字で記せ。 (20)2×10
<故事成語類>
1.ケイカを以て須弥を焼く  
2.子孫にチスイの地なし 
3.陰徳有る者は、必ず陽報有り、陰行有る者は、必ずショウメイ有り
4.アマダレは三途の川
5.キョウドウを用いざる者は地の利を得ること能わず
6.コウヨウの何物たるかを知らざるなり
7.命長ければホウライをみる
8.キョウランは翼を交えず
9.ユウチュウに日を窺う
10.ソウチュウ 塵を生ず

(十)文章中の傍線(1~10)のカタカナを漢字に直し、傍線(ア~コ)の漢字の読みをひらがなで記せ。 (30)書き2×10 読み1×10

「・・・玄機が女子の形骸を以て、男子の心情を有していたことは、この詩を見ても(1)スイチすることが出来る。しかしその形骸が女子であるから、吉士を(ア)懐うの情がないことはない。ただそれは蔓草が木の幹に(イ)纏い附こうとするような心であって、房帷の欲ではない。玄機は彼があったから、李の聘に応じたのである。此これがなかったから、林亭の夜は索莫であったのである。
 既にして玄機は咸宜観に入った。李が別に臨んで、衣食に窮せぬだけの財を(ウ)餽ったので、玄機は安んじて観内で暮らすことが出来た。趙が道書を授けると、玄機は喜んでこれを読んだ。この女のためには経を講じ史を読むのは、家常の茶飯であるから、道家の言が却ってその新を(エ)趁い奇を求める心を悦ばしめたのである。
 当時道家には中気真術と云うものを行う習いがあった。毎月(2)サクボウの二度、予め三日の(オ)斎をして、所謂四目四鼻孔云々の法を修するのである。玄機は・・・・のがるべからざる規律の下にこれを修すること一年余にして忽然 (3)ゴニュウする所があった。玄機は真に女子になって、李の林亭にいた日に知らなかった事を知った。これが咸通二年の春の事である。
・・・・・
 玄機は共に修行する女道士中のやや文字ある一人と親しくなって、これと寝食を同じゅうし、これに心胸を披瀝した。この女は名を采蘋(さいひん)と云った。ある日玄機が采蘋に書いて遣った詩がある。
・・・・
 采蘋は体が小くて軽率であった。それに年が十六で、もう十九になっている玄機よりは少いので、始終沈重な玄機に制馭せられていた。そして二人で争うと、いつも采蘋が負けて泣いた。そう云う事は日毎にあった。しかし二人は直ちにまた和睦する。女道士仲間では、こう云う風に親しくするのを対食と名づけて、傍から揶揄する。それには(4)セン(5)トも交じっているのである。
 秋になって采蘋は忽ち失踪した。それは趙の所で(6)ソゾウを造っていた旅の工人が、(カ)暇を告げて去ったのと同時であった。・・・
・・・
そのうち三人の関係が少しく紛糾して来た。これまでは玄機の挙措が意に満たぬ時、陳は寡言になったり、または全く口を(キ)噤んでいたりしたのに、今は陳がそう云う時、多く緑翹と語った。その上そう云う時の陳の詞は極めて温和である。玄機はそれを聞く度に胸を刺されるように感じた。
 ある日玄機は女道士仲間に招かれて、某の楼観に往った。書斎を出る時、緑翹にその観の名を教えて置いたのである。さて夕方になって帰ると、緑翹が門に出迎えて云った。「お留守に陳さんがお出なさいました。お出になった先を申しましたら、そうかと云ってお帰りなさいました」と云った。
 玄機は色を変じた。これまで留守の間に陳の来たことは度々あるが、いつも陳は書斎に入って待っていた。それに今日は程近い所にいるのを知っていて、待たずに帰ったと云う。玄機は陳と緑翹との間に何等かの秘密があるらしく感じたのである。
 玄機は黙って書斎に入って、暫く坐して沈思していた。(7)サイギは次第に深くなり、(8)フンコンは次第に盛んになった。門に迎えた緑翹の顔に、常に無い侮蔑の色が見えたようにも思われて来る。温言を以て緑翹を(ク)賺す陳の声が(9)レキレキとして耳に響くようにも思われて来る。
 そこへ緑翹が燈(ともしび)に火を点じて持って来た。何気なく見える女の顔を、玄機は甚だしく陰険なように看取した。玄機は突然起って扉に鎖(じょう)を下した。そして震う声で詰問しはじめた。女はただ「存じません、存じません」と云った。玄機にはそれが甚しく(10)コウカイなように感ぜられた。玄機は床の上に跪いている女を押し倒した。女は(ケ)懾れて目をみはっている。「なぜ白状しないか」と叫んで玄機は女の(コ)吭を扼した。女はただ手足をもがいている。玄機が手を放して見ると、女は死んでいた。・・・」「魚玄機」(森鴎外)
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<syuusyuu 漢検1級 模擬試験問題(27-③用)その1 標準解答>
(一)
1.てきさ 2.しち 3.こうか 4.ようい(体の養生につとめること) 5.きゅうきょう 6.ごうてい 7.ようげつ 8.きんじん 9.じょうせき 10.おくてん(低い枝を屋根と垂木となす) 11.べんが 12.てつ 13.ようよう 14.ちんほう・ちんぽう 15.じょうじょう 16.きふ 17.めいいん 18.きゅうてい(くじできめる) 19.よく 20.えつえき
21.すが 22.たい 23.かぎ 24.た 25.ちょうざめ 26.いつ 27.てぐるま 28.くま 29.かせぶか 30.と 
(二)
1.鯡 2.金鵄 3.犇 4.浩瀚 5.咳唾 6.毛氈苔 7.徒爾 8.萁 9.土瀝青 10.生麩 11.檠・榜 12.禰宜 13.葱 14.家産 15.加餐
(三)
1.魸・鯰 2.鶎 3.蓙 4.屶 5.簓
(四)
1.罨法 2.内癰 3.旄倪 4.鮓答(鮓荅) 5.僉議者
(五)
問1
1.在邇 2.斐然 3.燕頷 4.鼠窃 5.宴安 6.芳恩 7.誰手 8.濫觴 9.黜殯 10.括羽
問2
11.ア 12.ケ 13.イ 14.カ 15.キ
(六)
1.ぐみ 2.みみずく 3.さざえ 4.しいら 5.やまぼうし 6.いとひめはぎ 7.すずし 8.かせづえ 9.あとり 10.はまぼう
(七)
1.がんらん 2.けわ 3.ひょうぼう 4.かか 5.ひょうが 6.かちわた 7.そうせつ 8.かすめと 9.りりょう(りりゅう) 10.くろ
(八)
1.繋留 2.荒蕪 3.貶謗 4.生色 5.此土 6.攬要 7.洶動 8.旁晩 9.廟祝 10.休徴
(九)
1.蛍火 2.置錐 3.昭名 4.霤 5.嚮導・郷導 6.羔羊 7.蓬莱 8.梟鸞 9.牖中 10.甑中
(十)
(1)推知 (2)朔望 (3)悟入 (4)羨 (5)妬 (6)塑像 (7)猜疑 (8)忿恨(「憤恨」でも可でしょう) (9)歴々 (10)狡獪
(ア)おも (イ)まと (ウ)おく (エ)お (オ)ものいみ (カ)いとま (キ)つぐ (ク)すか (ケ)おそ (コ)のど

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漢検1級 27-③に向けて その71 窶 穹

2015年12月13日 | 熟語の読み(音・訓) -個別記事- 
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<「漢字の学習の大禁忌は作輟なり」・・・「作輟(サクテツ)」:やったりやらなかったりすること・・・>

<漢検1級 27-③に向けて その71 >
●予告・・・「syuusyuu模擬試験(27-③用))」近日公開(^^)
・文章題訓練もだいぶ続けているし、そろそろ、本格的な学習・・・冬の特訓・・・に入る準備をしています。つまり、また、「syuusyuu模擬試験」の作成・実施です(^^)
・自分の復習にもなるし、作ることで全分野を深掘りすることになるので、自分の力も相当つくことがわかったので、なんとか作りたいと思っています。2月に入ってすぐ27-③ですので、この時期に実施しないと(復習の時間も考えると)間に合いませんよね・・・。今度はなるべくオーソドックスな模擬試験にしたいと思っています(^^;)
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●漢検漢字辞典第2版から・・・
<窶:ク、ロウ、まず(しい)、おか、つか、やつ(れる)、やつ(す)> *「やつれる、やつす」は邦語であるが、「まずしい」と同義にとらえている向きもある由(字通)
・第2版、音による意味分けあり・・・「ク」=まずしい、「貧窶(ヒンク)」・・・ 「ロウ」=おか、つか 「甌窶(オウロウ)」(=塚、小さな丘)
・訓には「おか、つか」の読みなし・・・意味のところで熟語とともに載せている・・・こういうトコロがイカンと云っているのに(ーー)
 *まずしい(やつれる、やつす)・・・窶国(クコク)=貧乏な国、窶国の民。窶困(クコン)=貧しくて困苦する。窶人(クジン)=貧しくて賤しい人・・・
 *おか、つか・・・以前、故事成語類で、「部婁(ホウロウ)に松柏なし」「培塿(ホウロウ)に松柏なし」って記載しましたが、本来は「“培窶(または培塿)”(ホウロウ)に松柏なし」ってのが適切な熟語なんじゃないでしょうかね・・・両字ともに「おか」って意味があるから。・・・「部」や「婁」は音が通じていることによる当て字的な使い方なんじゃないでしょうか。ま、一般的に通用しちゃっているみたいだけど(ーー)
<穹:キュウ、あな、おおぞら、ゆみがた、おお(きい)、たか(い)、ふか(い)>
・第2版、「ゆみがた」以外は訓にあり・・・音熟語は「あな」以外は、まあ、有るといえば有る・・・
・掲載の音熟語・・・
 「穹窿」「蒼穹」「青穹」「穹石」(=大きい石)、「穹谷」(=①深い谷 ②大きい谷、空谷。*弓なりに窪んだ大きな谷(漢字源))、「穹廬」=モンゴル族の移動式住居
・訓の「あな」と「たか(い)」に対応する熟語がないようなので・・・
 *「あな」・・・「穹窒(キュウチツ)」=穴をきわめふさぐ、鼠の穴とも(大漢和・字通)。ねずみの穴を全部探してふさぐ(大字源)。「穹岫(キュウシュウ)」=山の岩穴
 *「たか(い)」・・・穹嵌(キュウカン)=高くけわしい処、穹然(キュウゼン)=高く大きいさま
 
👍👍👍 🐑 👍👍👍



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漢検1級 27-③に向けて その70  文章題訓練㉝&㉞

2015年12月13日 | 文章題
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<「漢字の学習の大禁忌は作輟なり」・・・「作輟(サクテツ)」:やったりやらなかったりすること・・・>

<漢検1級 27-③に向けて その70>
●夏目漱石の「趣味の遺伝」から・・・。<その1><その2>の2題です。
●難度は並み以上・・・チャレンジャーは80%(24点)程度が目標・・・。リピーターは90%以上(^^;)

●文章題㉝:次の文章中の傍線(1~10)のカタカナを漢字に直し、傍線(ア~コ)の漢字の読みをひらがなで記せ。(30) 書き2×10 読み1×10

「趣味の遺伝」(夏目漱石) その1

「・・・将軍のあとに続いてオリーヴ色の新式の軍服を着けた士官が二三人通る。これは出迎えと見えてその表情が将軍とはだいぶ違う。(1)キョは気を移すと云う孟子の語は小供の時分から聞いていたが戦争から帰った者と内地に暮らした人とはかほどに顔つきが変って見えるかと思うと一層感慨が深い。どうかもう(2)イッペン、将軍の顔が見たいものだと延び上ったが駄目だ。ただ場外に群がる数万の市民が有らん限りの(ア)鬨を作って停車場の硝子窓が破れるほどに響くのみである。余の左右前後の人々はようやくに列を乱して入口の方へなだれかかる。見たいのは余と同感と見える。余も黒い波に押されて一二間石段の方へ流れたが、それぎり先へは進めぬ。こんな時には余の性分としていつでも損をする。寄席がはねて木戸を出る時、待ち合せて電車に乗る時、人込みに切符を買う時、何でも多人数競争の折には大抵最後に取り残される、この場合にも先例に洩れず首尾よく人後に落ちた。しかも普通の落ち方ではない。遥かこなたの人後だから心細い。葬式の赤飯に手を出し損なった時なら何とも思わないが、帝国の運命を決する活動力の断片を見損うのは残念である。どうにかして見てやりたい。広場を包む万歳の声はこの時四方から(イ)大濤の岸に崩れるような勢いで余の(3)コマクに響き渡った。もうたまらない。どうしても見なければならん。・・・
・・・浩さん! 浩さんは去年の十一月旅順で戦死した。二十六日は風の強く吹く日であったそうだ。遼東の大野を吹きめぐって、黒い日を海に吹き落そうとする野分の中に、松樹山の突撃は予定のごとく行われた。時は午後一時である。(4)エンゴのために味方の打ち出した大砲が敵塁の左突角に中たって五丈ほどの砂煙を捲き上げたのを相図に、散兵壕から飛び出した兵士の数は幾百か知らぬ。蟻の穴を蹴返したごとくに散り散りに乱れて前面の傾斜を(5)ヨじ登る。見渡す山腹は敵の敷いた鉄条網で足を容るる余地もない。ところを梯子を担い(6)ドノウを背負って区々に通り抜ける。工兵の切り開いた二間に足らぬ路は、先を争う者のために奪われて、後より詰めかくる人の勢いに波を打つ。こちらから眺めるとただ一筋の黒い河が山を裂いて流れるように見える。その黒い中に敵の弾丸は容赦なく落ちかかって、すべてが消え失せたと思うくらい濃い煙が立ち揚がる。怒る野分は横さまに煙りを千切って遥かの空に攫って行く。あとには依然として黒い者が  (ウ)簇然(エ)蠢いている。この蠢いているもののうちに浩さんがいる。
・・・占めた。敵塁の右の端の突角の所が朧気に見え出した。中央の厚く築き上げた石壁も見え出した。しかし人影はない。はてな、もうあすこらに旗が動いているはずだが、どうしたのだろう。それでは壁の下の土手の中頃にいるに相違ない。煙は拭うがごとく一掃きに上から下まで(7)ゼンジに晴れ渡る。浩さんはどこにも見えない。これはいけない。(オ)田螺のように蠢いていたほかの連中もどこにも出現せぬ様子だ。いよいよいけない。もう出るか知らん、五秒過ぎた。まだか知らん、十秒立った。五秒は十秒と変じ、十秒は二十、三十と重なっても誰一人の(8)ザンゴウから向うへ這い上がる者はない。ないはずである。ザンゴウに飛び込んだ者は向うへ渡すために飛び込んだのではない。死ぬために飛び込んだのである。彼らの足が(9)ゴウテイに着くや否や(カ)穹窖より覘(ねら)いを定めて打ち出す機関砲は、杖を引いて竹垣の側面を走らす時の音がして瞬く間に彼らを射殺した。殺されたものが這い上がれるはずがない。石を置いた沢庵のごとく積み重なって、人の眼に触れぬ坑内に横たわる者に、向うへ上がれと望むのは、望むものの無理である。横たわる者だって上がりたいだろう、上りたければこそ飛び込んだのである。いくら上がりたくても、手足が利かなくては上がれぬ。眼が暗んでは上がれぬ。胴に穴が開いては上がれぬ。血が通わなくなっても、脳味噌が潰れても、肩が飛んでも身体が棒のように(キ)鯱こ張っても上がる事は出来ん。二竜山から打出した砲煙が散じ尽した時に上がれぬばかりではない。寒い日が旅順の海に落ちて、寒い霜が旅順の山に降っても上がる事は出来ん。ステッセルが開城して二十の(10)ホウサイがことごとく日本の手に帰しても上る事は出来ん。日露の講和が成就して乃木将軍がめでたく凱旋しても上がる事は出来ん。百年三万六千日乾坤を(ク)提げて迎えに来ても上がる事はついにできぬ。これがこのザンゴウに飛び込んだものの運命である。しかしてまた浩さんの運命である。(ケ)蠢々として御玉杓子のごとく動いていたものは突然とこの底のない(コ)坑のうちに落ちて、浮世の表面から闇の裡に消えてしまった。旗を振ろうが振るまいが、人の目につこうがつくまいがこうなって見ると変りはない。浩さんがしきりに旗を振ったところはよかったが、壕の底では、ほかの兵士と同じように冷たくなって死んでいたそうだ。・・・」
👍👍👍 🐑 👍👍👍

(1)居 (2)一遍 (3)鼓膜 (4)掩護(「援護」でもOKでしょう) (5)攀 (6)土嚢 (7)漸次 (8)塹壕 (9)壕底 (10)砲砦 
(ア)とき (イ)おおなみ (ウ)そうぜん (エ)うごめ (オ)たにし (カ)きゅうこう (キ)しゃち (ク)ひっさ (ケ)しゅんしゅん (コ)あな 
👍👍👍 🐑 👍👍👍

●文章題㉞:次の文章中の傍線(1~10)のカタカナを漢字に直し、傍線(ア~コ)の漢字の読みをひらがなで記せ。(30) 書き2×10 読み1×10

「趣味の遺伝」(夏目漱石) その2

「・・・しばらく化銀杏(ばけいちょう)の下に立って、上を見たり下を見たり(ア)佇んでいたが、ようやくの事、幹のもとを離れていよいよ墓地の中へ這入り込んだ。この寺は由緒のある寺だそうでところどころに大きな(1)レンダイの上に据えつけられた石塔が見える。右手の方に柵を控えたのには梅花院殿瘠鶴大居士とあるから大方、大名か旗本の墓だろう。中には至極簡略で尺たらずのもある。慈雲童子と楷書で彫ってある。小供だから小さい訳だ。このほか石塔も沢山ある、戒名も飽きるほど彫りつけてあるが、申し合わせたように古いのばかりである。近頃になって人間が死ななくなった訳でもあるまい、やはり従前のごとく相応の亡者は、年々御客様となって、あの剥げかかった額の下を潜るに違ない。しかし彼らがひとたび化銀杏の下を通り越すや否や急に古仏となってしまう。何も銀杏のせいと云う訳でもなかろうが、大方の檀家は寺僧の懇請で、余り広くない墓地の空所を狭めずに、先祖代々の墓の中に新仏を祭り込むからであろう。浩さんも祭り込まれた一人ひとりである。
・・・浩さんの墓は古いと云う点においてこの古い(2)ラントウバ内でだいぶ幅の利く方である。墓はいつ頃出来たものか(イ)確とは知らぬが、何でも浩さんの御父っさんが這入り、御爺さんも這入り、そのまた御爺さんも這入ったとあるからけっして新らしい墓とは申されない。古い代りには(3)ケイショウの地を占めている。隣り寺を境に一段高くなった土手の上に三坪ほどな平地があって石段を二つ踏んで行き当りの真中にあるのが、御爺さんも御父さんも浩さんも同居して眠っている河上家代々之墓である。極めて分りやすい。化銀杏を通り越して一筋道を北へ二十間歩けばよい。余は(ウ)馴れた所だから例のごとく例の路をたどって半分ほど来て、ふと何の気なしに眼をあげて自分の(エ)詣るべき墓の方を見た。
・・・百花の王をもって許す牡丹さえ崩れるときは、富貴の色もただ(オ)好事家の憐れを買うに足らぬほど脆いものだ。美人薄命と云う(カ)諺もあるくらいだからこの女の寿命も容易に保険はつけられない。しかし妙齢の娘は概して活気に充ちている。前途の希望に照らされて、見るからに陽気な心持ちのするものだ。のみならず友染とか、(キ)繻珍とか、ぱっとした色気のものに包まっているから、横から見ても縦から見ても派出である立派である、春景色である。その一人が――最も美くしきその一人が寂光院の墓場の中に立った。浮かない、古臭い、沈静な四顧の景物の中に立った。するとその愛らしき眼、そのはなやかな袖が忽然と本来の面目を変じて(4)ショウジョウたる周囲に流れ込んで、境内寂寞の感を一層深からしめた。天下に墓ほど落ついたものはない。しかしこの女が墓の前に延び上がった時は墓よりも落ちついていた。銀杏の(5)コウヨウは淋しい。まして化けるとあるからなお淋しい。しかしこの女が化銀杏の下に横顔を向けて佇んだときは、銀杏の精が幹から抜け出したと思われるくらい淋しかった。上野の音楽会でなければ釣り合わぬ服装をして、帝国ホテルの夜会にでも招待されそうなこの女が、なぜかくのごとく四辺の光景と(6)エイタイして索寞の観を添えるのか。これも諷語だからだ。マクベスの門番が怖しければ寂光院のこの女も淋しくなくてはならん
・・・とりあえず、書斎に立て籠こもって懐中から例の手帳を出したが、何分夕景ではっきりせん。実は途上でもあちこちと拾い読みに読んで来たのだが、鉛筆でなぐりがきに書いたものだから明るい所でも容易に分らない。ランプを点ける。下女が御飯はと云って来たから、めしは後で食うと追い返す。さて一頁から順々に見て行くと皆陣中の出来事のみである。しかも(7)コウソウの際に分陰を(ク)偸んで記しつけたものと見えて大概の事は一句二句で弁じている。「風、坑道内にて食事。握り飯二個。泥まぶれ」と云うのがある。「夜来風邪の気味、発熱。診察を受けず、例のごとく勤務」と云うのがある。「テント外の歩哨散弾に中たる。テントに(ケ)仆れかかる。血痕を印す」「五時大突撃。中隊全滅、不成功に終る。残念!!!残念の下に!が三本引いてある。無論記憶を助けるための手控えであるから、毫も文章らしいところはない。字句を修飾したり、彫琢したりした痕跡は薬にしたくも見当らぬ。しかしそれが非常に面白い。ただありのままをありのままに写しているところが大いに気に入った。ことに俗人の使用する壮士的(コ)口吻がないのが嬉しい。怒気天を衝くだの、暴慢なる露人だの、(8)シュウリョの胆を寒からしむだの、すべてえらそうで安っぽい辞句はどこにも使ってない。文体ははなはだ気に入った、さすがに浩さんだと感心したが、肝心の寂光院事件はまだ出て来ない。だんだん読んで行くうちに四行ばかり書いて上から棒を引いて消した所が出て来た。こんな所が怪しいものだ。・・・
・・・占めた占めたこれだけ聞けば充分だ。一から十まで余が鑑定の通りだ。こんな愉快な事はない。寂光院はこの小野田の令嬢に違いない。自分ながらかくまで機敏な才子とは今まで思わなかった。余が平生主張する趣味の遺伝と云う理論を証拠立てるに完全な例が出て来た。ロメオがジュリエットを一目見る、そうしてこの女に相違ないと先祖の経験を数十年の後に認識する。エレーンがランスロットに始めて逢う、この男だぞと思い詰める、やはり父母(9)ミショウ以前に受けた記憶と情緒が、長い時間を隔てて脳中に再現する。二十世紀の人間は散文的である。ちょっと見てすぐ惚れるような男女を捕えて軽薄と云う、小説だと云う、そんな馬鹿があるものかと云う。馬鹿でも何でも事実は曲げる訳には行かぬ、逆さにする訳にもならん。不思議な現象に逢わぬ前ならとにかく、逢おうた後にも、そんな事があるものかと冷淡に看過するのは、看過するものの方が馬鹿だ。かように学問的に研究的に調べて見れば、ある程度までは二十世紀を満足せしむるに足るくらいの説明はつくのである。とここまでは調子づいて考えて来たが、ふと思いついて見ると少し困る事がある。この老人の話によると、この男は小野田の令嬢も知っている、浩さんの戦死した事も覚えている。するとこの両人は同藩の縁故でこの屋敷へ平生出入して互いに顔くらいは見合っているかも知れん。ことによると話をした事があるかも分らん。そうすると余の(10)ヒョウボウする趣味の遺伝と云う新説もその論拠が少々薄弱になる。これは両人がただ一度本郷の郵便局で出合った事にして置かんと不都合だ。浩さんは徳川家へ出入する話をついにした事がないから大丈夫だろう、ことに日記にああ書いてあるから間違いはないはずだ。しかし念のため不用心だから尋ねて置こうと心を定めた。・・・」
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(1)蓮台 (2)卵塔婆(原文)(「卵塔場」で可。)) (3)形勝 (4)蕭条 (5)黄葉 (6)映帯(光や色彩がうつりあうこと。映発。) (7)倥偬 (8)醜虜 (9)未生 (10)標榜 
(ア)たたず (イ)しか (ウ)な (エ)まい (オ)こうずか (カ)ことわざ (キ)しゅちん (ク)ぬす (ケ)たお (コ)こうふん 
*形勝:①地勢や風景のすぐれていること。その土地。②要害の地。
*(参考)景勝:景色のすぐれていること。その土地。
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