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日本の真の活性化を考える  吉川忠雄

菅首相は財務官僚路線だから、大震災と原発事故の対応を誤った

2011-06-05 11:09:01 | 日記
菅内閣には以前から国民の批判が多く、不支持率が高かったのですが、3・11の大震災の被災者救済策の遅さと不十分さ、それから原発事故の対応策や情報開示のまずさ、住民(特に子供)の避難対策のまずさと遅さ等で、更に批判の声が高まっています。 そのため民主党内の中間派等からの批判も高まりました。

それに乗じた自民党・公明党+小沢派の仕掛けによる信任案を菅首相は鳩山氏の仲介によりぎりぎりでかわしたものの、その時の退陣約束騒動で菅内閣は死に体内閣になりつつあります。

(ただし、自公民とも原発推進政策を実行して来た責任があります。 そしてこれまでずっと東京電力などから利益供与を受けて便宜をはかり、原子力安全委員会や保安院の形骸化・官僚化・弱体化に手を貸したり放置して来た責任が有ります。 が、本気で反省している様子はありません)

ところで、そもそも菅首相らの対応の遅さや不十分さ、「心の無さ」と映る姿勢はどこから来るのでしようか?  

言われているように単なるリーダーシップの無さや首相の座への執着などの個人的資質が原因でしょうか?


振り返れば菅氏は首相になった途端に、民主党内で議論することさえなく、参議院選挙で「日本もギリシャのようになったら大変だ! 財政再建のためには増税しかない! 自民党の消費税10%案も参考に与野党一緒に検討して欲しい」と演説して回りました。

民主党内で議論することさえなく唐突に提起されたので、参院選の候補者も応援する衆議員議員や民主党員・サポーターたちも大いに面食らいました。

そして予想通り大敗しました。  その後の地方選挙でも連敗しています。

確かに財政再建は大事ですが、菅・与謝野路線(=増税だけの財務省路線)では、各省庁のムダ発生構造に何ら切り込まず温存し、また日本のマクロ経済を悪化させ、かえって財政再建もできなくなります。

しかも国民の支持も得られません。

菅首相・野田・与謝野大臣らは「大震災の復興公債でも、同時にその財源、すなわち増税を決めておかねば国際的信用が落ちて大変なことになる」と言います。

みんなの党は「まず、国債整理基金の剰余金10兆円と労働保険特別会計の剰余金5兆円なら被災者救済や復興にすぐ使えるではないか」と主張。 これに対しても野田財務長官は「それでは国際的信用が落ちる」と言います。

しかし、それは財務省官僚の言い分の受け売りに過ぎません。 

確かに「国債の残高が増えると将来の国民負担が増える」ことになるでしょう。

(国債は増え過ぎるといずれ日本国内で引受け手がなくなり、急な大増税や福祉切り捨てを迫られる。 それを避けると日銀の国債引受けによる紙幣増発が巨額になり、貨幣価値が下落してハイパーインフレを起こす。 その前に国債を減らす必要がある)

けれども、「たとえ格付け会社が日本財政の格付けを下げようと、今の日本は国際的には困らない」でしょう。

第一に、日本は外国から借金をしている訳ではないし、今後も借金が必要な訳ではないのです。 むしろ毎年の貿易黒字は巨額だし、外国に対する巨額の債権を持っています。 だからそんなに困らないのです。

第二に、現在ドルは財政出動と金融緩和のため印刷し過ぎて大きく下落しています。 ユーロも南欧などの貿易赤字+財政赤字の国々の信用不安を抱えて下落しています。 

一方、日本経済が良くないのに、デフレ(すなわち円の発行残高が相対的に少なくお金の回りも悪い)のために、円だけが高くなっているのです。 

円高のため原材料高は緩和されています。 が、それ以上に円高によって輸出産業は国内ではコスト高となり、雇用が減少したり、賃金が低下して来ています。 また外国特にアジアの新興国からの安い商品の輸入が増え、国内産業が苦しんでいます。

だから、日本の財政の信用が落ちて円が安くなっても、今はかえって日本経済にも勤労者にも失業者にも好都合なのです。

それゆえ、今回限りの大震災と原発事故対策には、今、思い切って必要なだけ何十兆円か掛けても、「即増税」と考える必要はないのです。 むしろ早い増税はデフレをひどくしかねないのです。

今は脱原発のための投資や将来性の大きい有望なアイデア+技術の実用化ために有効な投資をし、またそれを公的・民間合わせた融資を使ってお金を大きく回しながら行うことによって、日銀からのお金の供給を良い方向で増やしてデフレから脱却しつつ日本経済を活性化すべき時です。

たとえば、脱原発のため、ガスコジェネ発電・太陽・風力・地熱発電の普及や油を作り出す藻の実用化研究などに投資する。

たとえば、再生医療や介護ロボットやうなぎその他高級魚の完全養殖と世界への販売や・・・

 
また、オーストラリアの成功例にも学び、官僚の人事制度を改め、省庁の幹部人事は公募制にしてしまい、民間などでの実績と省庁改革の志の高さと具体策を評価して採用し、活躍してもらうことで効果的で効率的な行政に変え、劇的にムダを省くことが可能です。

その上で段階的に少しずつ税率を上げていけば、財政再建は十分可能です。


そのことを理解できない政治家だから、長期的に財政再建を考えている積りで、目先の財政負担の増加を恐れて、思い切った救済策が取れないのしょう。

しかし、そのことが自らの政権の命取り=短命化になるのだから、皮肉なものです。