先日、第27回鎌倉市遺跡調査研究発表会に参加しました。お目当ては、奈良貴史先生(新潟医療福祉大学)の「長谷小路周辺遺跡出土の古代人骨」という講演です。この古代人骨は昨年発掘され、大変話題になったイベントでした。奈良先生は人類進化学が専門で、同大学では解剖学の講座を担当している方です。今回の講演では最先端の考古学の話を興味深く聞けました。
まず、石棺の人骨の男女を見分ける方法。これは骨盤の形状で判別するようです。女性の骨盤は赤ちゃんが産道を通りやすくなるよう進化しました。人間は直立歩行する唯一の哺乳類ですが、四足の哺乳類と比べると、出産に不向きな体とのこと。石棺の人骨は女性でした。年齢は歯の形から12歳以下の子供ではなく、さらに出産痕もないことから若年女性のようです。
この女性が生きていた年代は安定同位体分析で推定しますが、材木座や横須賀で出土した人骨よりちょっと新しく800年前後のようです。奈良時代後半から平安時代前半ですね。また埋葬状態から身分の高い人だったようです。鎌倉では今小路遺跡(御成小学校敷地)から「天平五年(733年)」と書かれた木簡が出土され、鎌倉郡衙の所在が確認されていることや、近くの甘縄神明神社は奈良時代に建立されたと云われていること、万葉集に稲瀬川、見越の崎を詠んだ歌もあり、古代都市が形成されていたことは間違いないと思います。
新しい分析法にDNA分析がありますがこの結果はまだ分析の途中で詳しいことは聞けませんでした。ただコラーゲンの安定同位体分析や頭蓋骨(特に鼻)の形状から弥生人の特徴がみられるようです。
これらの分析結果から鎌倉幕府できる以前の鎌倉の様子が分かるといいですね。杉本寺や長谷寺などは奈良時代に建立されたとする伝承がありますが、今一つはっきりしません。鎌倉市内の随所で実施されている発掘調査も部分的で小規模。鎌倉時代以前の地層まで掘り下げることは稀です。これからの調査に期待したいものです。