taimuのひとり言

毎日の生活の中で感じた事を 徒然なるままに・・・。

読書日記 17 今月読んだ本 8月 

2008-09-04 16:55:10 | 読書


「吉原手引草」 松井今朝子著
 
 
  「吉原」というと悲惨な過去を持つ女性達、
  過酷な日常生活、いじめ、等々。
  暗い陰惨な物語を想像していましたが
  いい意味で裏切られました。

 なぜ、吉原一を誇った花魁葛城は、
  忽然と姿を消したのか?遣手、幇間、楼主、女衒、
  お大尽―吉原に生きる魑魅魍魎の口から語られる、
  廓の表と裏。やがて隠されていた真実が、
  葛城の決意と悲しみが、徐々に明らかになっていく…。
                      幻冬舎 2007年

  読みやすい小説です。ある人物(多分イケメンの若侍)が
  吉原で起きた事件について関係者に聞いてまわる設定。
  小説は章ごとに語り手を替え、その語り言葉だけで
  いろいろなことが明らかになっていきます。
  最初のほうは「吉原」のしきたりや遊び方等、
  ちょっとしたガイドブック的な所もあります。
  小説の主人公「花魁葛城」は一切(直接には)登場しません。
  徐々に「花魁葛城」がどういう女性だったのか、
  そしてどうなってしまったのかが わかってきます。

  「花魁」になるには 器量がいいだけではだめで
  客との駆け引き、美しい文字で手紙を書き、教養もあり、
  仲間からの人望もあり、など雑学的な興味でも面白かったです。

  「吉原」に関係のある十数人の一人語りの中で
  葛城のことだけでなく、自分の過去や立場や仕事の内容などが
  語られ、隔離された「廓」の良い面も悪い面も見えてきて
  話がどんどん広がってくるようで面白く感じました。

  ただ「花魁葛城」がこれだけ語られているのにも
  かかわらず 葛城の人物像が私には はっきり見えてこない
  のが 残念でした。