全身麻酔の手術を5回も受けたことのある私は、三途の川の手前まで5往復したことになるのかも知れない。
初めて手術室に行くときはストレッチャーで運ばれ、いつもは気にしたことの無い流れる天井を見ていた。
2回目は既にベテランの域で・・・・・と思うだろうけれど、一度苦しさを経験していたので2回目の方が辛かった。
だから女性が初夜で緊張して次の時からは全然平気になるのとは真逆だ。
3.4.5回目は、4年前だ。
看護師さんに先導され、徒歩で手術室へ入った。
その時の様子は既に書いたので省くが、読み返しても自分で笑ってしまうほどになかなか面白い。
さて、手術台に寝かされると太い注射針を腕に刺されて点滴開始。
麻酔医が頭の上にスタンバイし「それじゃ麻酔をかけますからね、数を数えて下さい」と云うのだが、大抵「一つ、二つ、三つ・・・・・」ぐらいで映画のワンシーンのように無影灯の沢山の灯りがモワッと一つに重なったと感じた途端、意識が飛ぶ。
意識が戻るのは五感の内で聴覚からだ。
急に周りの音がうるさく感じて、「眠っているんだから静かにしてよ」と思った所で(あっ、手術をしたんだ) と云うことを思い出した。
だから逆に死ぬときは聴覚が最後まで残っているのかも知れないと、いつも思っている。
心臓が止まって「ご臨終です」と医師が告げても、しばらく音だけは聞こえているような気がするのだ。
その時、「お父さん、ホラ 大好きなオッパイだよ」と云って枕辺にいる女性達が乳をポロンと出してくれたら、消えゆく意識の中で(えっ、オッパイ) と思った途端、生き返る可能性は充分にある。♥♥♥