テレビに最新家電を紹介するコーナーがあった。
両手が使えなくてもチョンと触れるだけで冷蔵庫のドアが開いた。
ラップをしなくても新鮮さを保つ工夫がされた冷蔵庫にルンバの目が釘付け。
次に壊れるのは冷蔵庫だと思っているので私の心中は穏やかではない。
そして次に紹介されたのはモジャモジャの毛髪が魔法のようにスベスベに変化する最新のヘアドライヤー。
10年ほど前に電気店へドライヤーを買いに行った時、普通の3倍もする高価なドライヤーを店員に勧められて、つい買ってしまったけれど私が使ったのは買った直後の一度だけ。
確かにサラサラにはなったけれど、毛が少ないのだから使わなくても乾く。
ルンバだって髪は何かのおとぎ話に出てくる妖怪のような白髪なのに、それでも新型のドライヤーに興味がある様子。
私は冷たく「欲しければ今度は自分で買えよ」と突き放した。何しろ約4万円もするのだ。
ウォーキングに疲れてソファーで横になった途端、眠気に負けて目を閉じた私に、しばらくするとバスタオルが静かに掛けられた。
その気配を感じた途端、彼女の企みを悟った。
きっと方針転換して優しくすることで高価なドライヤーを手に入れようとしているのだ。
(そうはいかない)と私は強い意思を示す為に横を向いて屁を一発出した。