寒い。
昨日も寒かったし今日も寒い。
もう半袖は無理。
長袖に上着を重ねて買物へ出ようとしたら、隣家の前に車が停まっていた。
隣家のH御夫婦は15年程前に、市内で働いている娘さん一人を残して愛知県へ住み込みの出稼ぎへ行っているので車が置かれているのは珍しい。
確認したら本州のナンバーが付いていた。
そう云えば、もう仕事を辞めたと年賀状に書いてあったから戻ってきたのかも知れない。
庭で動く人影を見て「帰って来たの?」と久しぶりの対面。かなりハゲ度は進んでいたが相変わらずHさんの笑顔は優しさを感じる。
「寒いでしょう」と云う私に「実は明日戻る」と云う。
家を売って、家族全員でもう一人の娘さんがいる愛知県へ引っ越すのだそう。
その整理の為に一度帰宅したとか。
「そうなんだ……寂しくなるね」と云う私に、申し訳なさそうな顔で応えるHさん。
実は、反対側の家も10年以上前に奥様を亡くし、旦那様も体調を崩し、息子さんの家で一緒に住んでいるらしく既に空き家だ。
これで両側の隣家が無人になると云うことだ。
心の中をさらに冷たい風が流れた。