事件は早朝5時頃に発生したらしい。
「らしい」と云うのは、私は熟睡していたからだ。
トイレへ行くため、階段を下りていたルンバが残り2段と云う所で階段を踏み外して顔面から落ち、鼻を強打し血がダラダラ。
タラタラではなくダラダラと書くのは、それだけ出血量が多く階段下のロビーが事件現場のようになったから「らしい」。
大きな音に目覚めたスリスリが顔面血だらけのルンバを発見。
本人は鼻血を止めようと必死になっていたようだが、それよりもとにかくオチッコを優先。
その結果ダラダラと流れ出た血で事件現場は広がった。
スリスリの運転で救急病院へ行き止血してもらったのだが、出血場所は鼻の中ではなく鼻の外側だったことが判明。
だから鼻の穴に色々詰めても血が止まらなかったのだ。
朝、いつものように起きてオチッコした後体重を測定した私に聞こえてきた
「気がつかないみたいだね」と云うルンバとスリスリの小さな声。
何だろうと思いながら改めてルンバの顔を見て私はフリーズした。
試合に負けたボクサーのように鼻に血の染みた大きな絆創膏を貼ったルンバ。
「何だ 何だ、どうした? 熊が入ってきたのか?勝ったのか?」と色々訊いたが、熊では無く階段を踏み外したことによる外傷で、私が知らない間に救急病院へも行ってきたとのこと。
「顔を打っているなら少し安静にしていろ」と云う私に「わかった」と云いながらも、敗戦ボクサーは意外に元気が良い。
「しばらく外出できないな」と云う私に「マスクで隠れる」と物欲の衰えをみせずスーパーのチラシを隅々までガン見していた。