今回15人の作家が出店しているが、私がお会いするのは全員が始めての人ばかりである。
隣 のブースには香川県から竹炭の木村君。小豆島で田舎暮らしをしているそうだ。売っている作品も素朴な表情だ。
「近くのホテルに泊まっているの?」と聞くと
「いえ、ホテルはお金が掛かるので適当にやってます。」
「えっ、適当って?」
「マンガ喫茶とかで寝てます。」とあっけらかんとして言う。
「んーん、若さだネ!」
前の売り場には伊勢市から来ている粘土クラフトとして、小さな陶人形を作っている藤井君。まだ、27歳である。彼はマンガ喫茶ではなくて、実家が姫路市にあるのでそこから通っている。
作者そっくりの作品たち。
「小さな物が得意なのかな?」と聞くと
「いえ、窯が小さくて、小さな物しか焼けないのです。」
「どれくらいの窯なの?」
「30センチ角くらいです」
「そうか!最初はみんなそれくらいから出発するのだから、頑張ってネ!」
左前では、地元の木工家具が出ている。まだ、接客も恥ずかしそうに俯いている見習いの中嶋君が立っている。まだ、23歳。木工を始めて一年半くらい、親方について修行中である。
「まだ、簡単な物しか作れません。」と言う。
「初めて作った物は何?」と聞くと
「椅子です。」
「最初の作品は取ってあるの?」
「売れました。お爺さんが買ってくれました。」
自分のお爺ちゃんなのか?お客様としてのお爺さんなのか?
私の長男も物作りの道へ第一歩を歩き出した。彼を見ていると長男を見ている様な気がする。
「一人前になるまでには、みんな大変だけれど、自分の道をしっかり歩んで行ってほしい!」 彼らを見ていて、昔、昔、私が駆け出しの頃を思い出してしまった。
しかし、何故私がこの場所にいるのだろう?