高江雅人  竹工芸職人の独り言  竹工房オンセ

高江雅人  竹工芸を初めて37年、徒然なる出来事をアップしています。

大切なお客様

2014年12月02日 06時15分57秒 | お客様
大切なお客様が来てくださいました。


このお客様は、私にバッグを作る事、売る事の歓びを教えて下さった方です。

今から15年ほど前、九州物産展で出店した時の事です。
何気に、私の実演している作業をじ~~と見て居られました。手には、物産展で買われた食品が入ったビニール袋をぶら下げて居ます。
「竹細工に興味があるのですか?」と、声を掛けると
「いえいえ、新婚旅行で別府に行ったので、懐かしくて見て居ました。」と、
昭和20年代、30年代には、別府温泉は、新婚旅行のメッカだったのです。

お話を聞いてみると
「私はお花を習っていたのですが、当時はまだ貧しくて、旅行に行くのが精いっぱいで、
一つだけ花籠を買って貰ったのですが、「これはお花の先生のだよ」と言われて、私の花籠を買うことが出来ませんでした。」と、当時の思い出話をされるのです。

「あ~、優しいご主人ですね。お元気ですか?」と尋ねると
「いえ、主人はもう亡くなったのです。・・・・・」
「あぁ、すみません、要らんことを聞きましたね・・・・」

その後、暫くして、
「このバッグを頂けますか?」と、仰る。
そのバッグは、私のバッグの中でも一番高額なバッグでした。

「え~~、そんな、おばあちゃん、そんな、買わなくて良いですよ。」
「いえ、いえ、頂いて良いですか?」
「はぁ、それは良いのですが、本当に良いのですか?」
と、何ともちぐはぐな接客では無いか、

結局、お買い上げして頂きました。
バッグを渡す時に、
「この花籠を、お爺さんの仏壇にお供えしてください」と、小さな花籠を添えたのです。

そしたら、このお婆ちゃんが泣き出してしまいました。

このエピソードは、忘れることが出来ません。
「このお客様は、私のバッグを持つのでなく、無くなったお爺ちゃんとの思い出を持つのです、
お客様は、私どもの作品を通して、大切な人を忍んで、思い出を持ってくれるのだ。」
と、思ったのです。

それ以来、このお客様との交流は今でも続いて居ます。

本当に、ありがとうございます。
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