数日前の夜 台湾の方が経営する 中華料理というか台湾料理のお店に行った。
店内は 僕一人だった。
僕が食事を待ってじっとしていると、お店の4歳か5歳くらいの男の子が、お店の中でテーブルの上にある直径5センチくらいの円形のボタンをあちこちで押し始めた。
あちらのテーブルのボタンを押す キンコーンと音が鳴る。
こちらのテーブルのボタンを押す またキンコーンと音が鳴る。
あちこちのボタンを押して男の子は何度もキンコーンと鳴らしていた。
そうか あの ボタンは 店員さんを呼ぶときにチャイムを鳴らすボタンだとわかった。
それまで僕は「すみません 注文決まりました」という感じで店員さんを呼んでいたから、それは僕にとってちょっとした気づきだった。そうか こんなに音のいいチャイムがお店にあったのかと。
何日か前に 別の台湾料理の店で やはり幼い女の子が テーブルの中央の回転盤を回してティッシュを取って そこにティッシュがあることをそれとなく教えてくれたけれど
男の子は あちこちのテーブルのボタンを押して 元気にチャイムの存在を僕に教えてくれるなと思う。
幼くても男の子は男の子 女の子は女の子だなと思う。
幼い子に物事を それとなく教えてもらえるというのはきっといいことのような気がする。
もう閉店に近い時間だったからしれない、僕が食事を始めると 台湾料理店の経営者の家族は 僕の近くのテーブルで 談笑し始めた。
お父さんの声が大きく店に響いていた。
中国の言葉って まったく意味は分からないけれど 響きは豪快だなと思う。
お会計の時 20歳くらいの娘さんがレジに出てくれた。
さっきの幼い男の子がそのお姉さんのところに僕が食べ終わった食器の載っているトレーを早足で持ってきた。
幼い足取りなので 食器が倒れそうになる。
でも 娘さんが助太刀を出して なんとか 食器のトレーは厨房へと運ばれた。
「本当にうるさくてすみません」と娘さんは言った。娘さんのお詫びの言葉は家族の談笑のことに言及しているようだった。
「いいえ 大丈夫です」と僕は言った。
「おやすみなさい」と娘さんは言った。
「ごちそうさまでした。おやすみなさい」と僕は言った。
台湾の娘さんに声をかけてもらえるのも 気分のいいものだなと思う。
それはともかく いちにち いちにち 無事に過ごせますように、それを第一に願っていきたい。