東隣の家は空き家である。主がいなくなってもう何十年も時を経た。
僕が小さい頃、その家には、おばあさんとおじさん、おばさん、その長男さん、次男さん、長女さんとその子供2人が住んでいた。
おかあさんが勢いのある人だったので、いつもにぎやかだった。
外で遊ぶ幼い僕を時々温かく見守ってくれるいい人たちであった。
幼稚園に通い出した頃、長女さんと僕と同級生の男の子と2つ下の女の子が引っ越して行った。
小学校に上がるころ、長男さんは就職で遠い所へ行った。次男さんも、就職で遠い所へ行った。
小学校高学年の頃、訳の分からない事を言いだしていた。もちろん当時は認知症という概念もないから、幻覚をみて叫んでいるお婆ちゃんに「そんなのいないよ」と一生懸命に諭した。
しばらくしてお婆ちゃんが亡くなった。おじさんとおばさんだけになった。
中学生の時、勢いのあったおばさんが亡くなり、おじさんはがっかりして肩を落としていた。
高校に入ったころ、おじさんは体調を崩して、長女さんに頼ることになった。
僕が社会に出た頃おじさんが亡くなったことを聞いた。
そして、隣の家には誰もいなくなった。そして誰も帰ってこなくなった。
その家が崩れ始めている。どうやら中の柱が折れたらしく、家が傾き、板の壁をへし折り中の土壁が露出していて、ガラス窓も割れて、瓦屋根も崩れて屋根の一部に穴が開いている。
西隣の家も、もうすぐ空き家になる。
僕が物心ついた頃、すでに二人暮らしだったお婆ちゃん。僕が高校生の頃、和服の似合う旦那さんが亡くなったので、心配になった関東にいた息子さん夫婦が定年を機に引っ越してきた。
それから三人で暮らしていたが、3年ほど前に息子さんが亡くなり、奥さんとお婆ちゃんの二人きりになった。
何度も救急搬送されていたお婆ちゃんであったが、今年の冬。いつの間にか白寿になっていたお婆ちゃんは息を引き取った。
長い間献身的な介護をしてきた奥さんは、ようやく肩の荷が下りたのか、近いうちに家をたたんで、元居た関東へ戻るのだと言っていた。
たった50年の出来事である。
僕が小さい頃、その家には、おばあさんとおじさん、おばさん、その長男さん、次男さん、長女さんとその子供2人が住んでいた。
おかあさんが勢いのある人だったので、いつもにぎやかだった。
外で遊ぶ幼い僕を時々温かく見守ってくれるいい人たちであった。
幼稚園に通い出した頃、長女さんと僕と同級生の男の子と2つ下の女の子が引っ越して行った。
小学校に上がるころ、長男さんは就職で遠い所へ行った。次男さんも、就職で遠い所へ行った。
小学校高学年の頃、訳の分からない事を言いだしていた。もちろん当時は認知症という概念もないから、幻覚をみて叫んでいるお婆ちゃんに「そんなのいないよ」と一生懸命に諭した。
しばらくしてお婆ちゃんが亡くなった。おじさんとおばさんだけになった。
中学生の時、勢いのあったおばさんが亡くなり、おじさんはがっかりして肩を落としていた。
高校に入ったころ、おじさんは体調を崩して、長女さんに頼ることになった。
僕が社会に出た頃おじさんが亡くなったことを聞いた。
そして、隣の家には誰もいなくなった。そして誰も帰ってこなくなった。
その家が崩れ始めている。どうやら中の柱が折れたらしく、家が傾き、板の壁をへし折り中の土壁が露出していて、ガラス窓も割れて、瓦屋根も崩れて屋根の一部に穴が開いている。
西隣の家も、もうすぐ空き家になる。
僕が物心ついた頃、すでに二人暮らしだったお婆ちゃん。僕が高校生の頃、和服の似合う旦那さんが亡くなったので、心配になった関東にいた息子さん夫婦が定年を機に引っ越してきた。
それから三人で暮らしていたが、3年ほど前に息子さんが亡くなり、奥さんとお婆ちゃんの二人きりになった。
何度も救急搬送されていたお婆ちゃんであったが、今年の冬。いつの間にか白寿になっていたお婆ちゃんは息を引き取った。
長い間献身的な介護をしてきた奥さんは、ようやく肩の荷が下りたのか、近いうちに家をたたんで、元居た関東へ戻るのだと言っていた。
たった50年の出来事である。