何故だろう、ふと、思い出したのだ。
夫と暮らした日々の記憶が、こんな風によみがえることは、これまで無かった。
大層なことを思い出したわけではない。
机。
結婚する時に、新居に置く家具を選ぶ時。
箪笥やら食器棚やら。
買うものはいろいろあった。
それなのに、私の夫になる人は、一番に、私のための机を選びに行ったのだ。
私たちは若い頃、2人とも小説を書いていた。
同人誌がきっかけで知り合った。
私のために真っ先に机を選びに行った、夫になる人は言った。
あなたは作家になる人だから、机は大事だよね、と。
何の皮肉でもなく、優しい笑顔でそういって、「え、置く場所ないよ」「ちゃぶ台で書くよ、勿体ないよ」と言う私の手を引っ張って、いろんな机を見て回ってくれた。
そして、シンプルな白いデスクと椅子を、一番に買ってくれたのだ。
今はもう、私は小説を書いていない。
白いデスクは、その後しばらく活躍してくれたが、夫が亡くなっていよいよ持ち家を手放す時に処分してきた。
私が暗い顔をしていると、「ごめんな、あなたは本当はこんなところでくすぶっている人ではない。素晴らしい才能のある人なんだ」と、自分のせいのようにそう言った。
いつでも、モノ書きとしての私を、その才能を、信じて応援し続けてくれた人だった。
ふと、コリラックマの顔のミニテーブルの上に手帳とコーヒーを置いていて、そんなことを思い出した。
私は作家にならないでここにいる。
書くことは今も好きだけどね。
そんな素晴らしい才能があったとも思えない。
何に対しても自信のない私。
「こんな私が」「私なんか」が口癖の私。
どうやってここまで生きてきたんだろうと不思議だった。
そう、私には、私の才能を誰より信じて疑わず、心から応援し続けてくれた人が、そばにいたのだ。
そばにいてくれたのだ。
夫と暮らした日々の記憶が、こんな風によみがえることは、これまで無かった。
大層なことを思い出したわけではない。
机。
結婚する時に、新居に置く家具を選ぶ時。
箪笥やら食器棚やら。
買うものはいろいろあった。
それなのに、私の夫になる人は、一番に、私のための机を選びに行ったのだ。
私たちは若い頃、2人とも小説を書いていた。
同人誌がきっかけで知り合った。
私のために真っ先に机を選びに行った、夫になる人は言った。
あなたは作家になる人だから、机は大事だよね、と。
何の皮肉でもなく、優しい笑顔でそういって、「え、置く場所ないよ」「ちゃぶ台で書くよ、勿体ないよ」と言う私の手を引っ張って、いろんな机を見て回ってくれた。
そして、シンプルな白いデスクと椅子を、一番に買ってくれたのだ。
今はもう、私は小説を書いていない。
白いデスクは、その後しばらく活躍してくれたが、夫が亡くなっていよいよ持ち家を手放す時に処分してきた。
私が暗い顔をしていると、「ごめんな、あなたは本当はこんなところでくすぶっている人ではない。素晴らしい才能のある人なんだ」と、自分のせいのようにそう言った。
いつでも、モノ書きとしての私を、その才能を、信じて応援し続けてくれた人だった。
ふと、コリラックマの顔のミニテーブルの上に手帳とコーヒーを置いていて、そんなことを思い出した。
私は作家にならないでここにいる。
書くことは今も好きだけどね。
そんな素晴らしい才能があったとも思えない。
何に対しても自信のない私。
「こんな私が」「私なんか」が口癖の私。
どうやってここまで生きてきたんだろうと不思議だった。
そう、私には、私の才能を誰より信じて疑わず、心から応援し続けてくれた人が、そばにいたのだ。
そばにいてくれたのだ。