すずめ休憩室

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気の向くままにつづってみました。

モンキーターン

2008年04月02日 | 漫画・本
「モンキーターン」 河合克敏 小学館 全30巻

波多野憲二は野球部に所属する高校生。運動神経はバツグン良いが、小柄な体格が災いして大切な試合でスクイズを外され、チームは惜敗してしまう。自分の体格では野球の世界でNo1になれないと知り、方向性を見失っていた憲二だが、野球部監督でもある担任にある1人の女子卒業生を紹介される。その人こそ、女子競艇界でトップを走り続けるで萩原麻琴だった。熱く激しい競艇の世界を垣間見た憲二は自分の体格も活かせるこの世界に飛び込み事を決意する。


「帯をギュっとね!」「とめはね!」などの著者で知られる河合克敏さんの作品。

水上のモーター格闘技とも言われる「競艇」ですが、私は「ギャンブル」と「横山やすしさん」程度のイメージしかありませんでした(苦笑)
私に限らず、そんな人が大半かもしれませんが、この作品は初心者でもわかり易く競艇のあれこれを教えてくれます。

私も以前偶然に深夜番組で競艇レースの結果を見ていた時、1番から順に並んでいなくて不思議だったのだけど、これを読んでルールというか、スタートの合図前から目に見えぬ駆け引きが展開されていると知りました。

競馬とかは騎手と調教師という風に役割が分担されていますが、この競艇という競技は選手がただ与えられたボートに乗り速さを競うのではなく、運転技術もさることながら、ボートの分解・・調整・整備といったメンテナンス、そして勝敗に大きく関わるプロペラの選択や調整などすべての事を選手個人でしなければならないというのも面白い。
なんか奥が深い競技だなーと感じます。
あの熱狂はギャンブルが絡むという事の他に、こういう奥深さがもたらしているのかもしれないね。

そして何より感じたのは作者・河合さんの取材の緻密さ。
マイナーともいえる競艇にスポットを当てていつつ、どんな立場の人が読んでも面白く、そして傷つけない配慮がいいなーと。

例えば、競技人生を左右してしまう怪我のシーンにしても、緻密に経過などを描かれていて、漫画などではありがちな「そんなに簡単な治らないでしょ~」という様な事がない。
実際に競艇選手が読んでも真実味を感じさせ、そして同時に厳しい世界で戦う彼らに対する配慮が凄く感じる作品です

またこれは勝負という他に、人間としての成長を描いている作品でもあるように思えましたね。
勝負師というと、孤高のイメージがありますが、孤高の天才・洞口雄大に対し、ちょっとお人よしにも見える天真爛漫な主人公の憲二を通して、人との繋がりの大切さ、仲間がいるという事は何にも勝る力になるという事を伝えてくれます。
天才に勝つには仲間の力なんだと・・・

各巻の表紙内側に河合さんが実際に取材したことや作中のキャラが出る4コマ漫画風に紹介しているんですがこれもなかなかいいんですが、でも私が印象的だったのが最終巻に書かれていたあとがき

それは河合さんがある競艇選手に取材をしていた返ってきた言葉
「危なかった場面?事故とか?自分は危ないと思ったらそれ以上はいかない。
危ないかも?なんて思いつつイチかバチかなんて、あやふやな判断でレースをするから事故になる。そんなヤツがいたら自分はそいつを叱りつける」の一文

一歩間違えば生命の危険がある。

だからこそ本当の勝負師たちは「命をかけて」なんて安っぽい事は言わないんだと、実感した一言であり、そしてそれが作品の全てのシーンに、その競艇に関わる人たちが思っていることが込められていたのを再確認したあとがきでした

ギャンブルとは違う競艇の真の姿、是非味わってみてください

あっあと、既読の人にしか判らないかもしれないけど、洞口親父けっこう好きです(笑)
ラスト青島ちゃんに「誰もやったことのねえことをするんだ、苦労するんだろうな。でも10回悔しい想いをしても11回目で上手くいけばすべて報われるだろ」と激励する親父にしびれました
ハゲ頭でもがカッコよく見えちゃったわ(←やはりオヤジ好きがここに・笑)