いくら待っても風は止まない。諦めて帰ろうと荷物をまとめて外に出た。しかし、外は降るような星空。しばらく悩んだが、ここで帰っては後できっと後悔する。思い直して竹取庵に戻り、望遠鏡にカメラを取り付けて屋根を開けた。
確かに風は幾分収まっていた。しかし、時折たたき付ける突風に、モニターに写るガイド星が、まるでバネで吊ったボールのように震える。カメラ感度5000で12分露出した初めの2枚は見るも無残。星の像が広がって何が写っているのかさえ定かではない。そこで、屋根を望遠鏡に触れるぎりぎりまで閉め、露出を半分の6分としてもう2回シャッターを開いた。その2枚を重ね合わせたのがこれ。
画像の中心で炎を噴いているのがNGC2024。本当にFlame Nebula=炎星雲の名を持っている。また三ツ星の一つアルニタクの脇でシルエットになっているのが、有名な馬頭星雲IC434だ。この二つの星雲の淡い光のあちこちで、星が生まれようとしていた。そう言えばオリオンの大星雲も生まれたての星の光で光っている。
そう、厳しい寒さの中、冴え渡る冬星座は恒星誕生というホットなドラマの舞台でもある。