木星の撮影に一生懸命になっているうちに2時間が過ぎていた。この星はこれまで。せっかく月の無い夜だ。今日は久々に星雲を狙おう。そう決めてかぐや姫を離れ、コンピューターを開いて赤道儀に火を入れた。しかし、星空シミュレーターで撮影する相手を決め、ガイド鏡のフォーカスを取っているうちに空が怪しくなってきた。地平線近くにあった雲が真上に流れてきている。気象衛星の写真を見ると、低気圧の雲がみかんの丘を覆い始めていた。
ここまでかな。空がようやく本当の暗さを取り戻し始めていただけに残念だけど。またこんな夜がきっと来るだろう。それに無茶苦茶な方法とは言え、何とかかぐや姫を使って月以外の天体を撮影することが出来た。今後のことは収めた画像を見ながら考えればいい。
疲れてるんだし、そろそろお開きだよ。空がそう言っている様に思えた。午後9時。本来ならこれからが勝負なのだが。ベールを被った星空を見渡して見る。夏の大三角が西の空に沈もうとしていた。東の空にはオリオンが身を横たえている。そうだね、もうすぐ師走。いい空になかなか会えなかった今年だけれど、撮影のノウハウだけはいろいろ仕込む事が出来た。また頑張ろう。
屋根を閉めながら考える。そろそろここにやぐら炬燵を出さなきゃ…