土曜日に続いて大工仕事に上がった日曜日。新しく仕入れた米松を竹取庵の前に下ろして加工に掛かった。この材木は少し高かったけれど狂いの無い上物だ。ゆがみや狂いが有るとあとの手間がずいぶん掛かる。それはこれまでの作業で身に染みていた。
丸鋸を使ってほぞを切っていると材木の端に停まるものが有る。見ると塩辛トンボだ。あれ、梅雨が明けたのかな。気が付くと他にもたくさんのトンボが丘の上を飛んでいた。アキアカネ、通称赤とんぼだ。
アキアカネは暑さに弱い。いつもなら5月の終わりから6月に掛けて羽化し、一気に高原など涼しい所に移動して夏を過ごす。そして朝夕が涼しくなった頃、体が赤くなって里に戻ってくるはずだ。なぜ今頃ここにいるんだろう。羽化がひと月以上も遅れたのだろうか。今年は田植えがずいぶん遅かった。そのせいだろうか。
仕事の手を止めると、トンボの群れが僕の周りを舞いだした。みんな体の色がまだオレンジ。そうだ。やっぱりこれから旅に出るんだ。この子たちはどこまで行くんだろう。北の高原までゆうに70キロは有る。頑張れえ、僕も頑張るから。
太陽はジリジリと照りつけるけれども丘を渡る風は涼しい。休憩と水分補給をはさみながら材木を刻んでいった。専用の工具を持たない僕はどうしても手間が掛かる。まあ、それもいいか。きっと僕の命が尽きてもまだ完成しないだろう。
そうだ、除草剤で全滅したはずのトルコの食材セミズ・オトゥが他の雑草に交じってまた芽を出していた。除草剤の効き目はおよそ3週間。彼らにとっては除草剤の散布も織り込み済みだったのかも知れない。雑草だけにしたたかだ。
こんどこそ大きくなるかな。実はあの後除草剤の掛かっていない場所や他の荒地でこの草を集めていた。すでにかなり大きくなっている。食べられるようになったらここにアップしよう。