とにかく暑い。それでもやらなければ進まない。照りつける日差しの中で、建て増し部分北側の一段高い土台を仮組みし、コールタールを塗っていく。本体の柱にほぞ穴を開け始めた頃、丘のふもとで5時のミュージックサイレンが鳴った。今日はここまでかな。日中広がっていた青空も、気が付くと雲に覆われている。
今夜は曇るのかな。七夕なのに。
雨が降ると天の川の水が溢れ、カササギの橋が壊れて牽牛は織姫の許に行けなくなる。子供の頃この話を聞いて不思議に思った。仮にここで雨が降っていても地球上どこかの町では晴れている。そんな時牽牛はどうすればいいのだろう。そうか、晴れた町の空で天の川を渡ればいい。だったら毎年必ず会える。きっとそうだ。そう折り合いを付けて納得していた。その後ずいぶん経ってこの話を人にしたら、雲の上はいつも晴れているのだから何の問題も無い。だいたい地上の雨で天上の天の川が溢れる訳がないではないかと言われた。それが本当ならひどい話だ。だったら雨の話など最初からしなければいい。
そんなことを次々に思い出しながら家路についた。そして、食事も済ませ、用事が有って外に出てみると星が瞬いている。あれ、晴れたのか。良く見ると街中なのに天の川さえ薄っすら見える。ああ、丘に残っていればよかった。早々に切り上げたことを悔しく思いながらそれでもと撮影した1枚。我が家の庭の天の川だ。狭い空に牽牛も織姫も白鳥もちゃんと見える。イルカだって飛び跳ねている。これならカササギも立派な橋を掛けているだろう。
きょうは七夕。見上げているうちに、やっぱり天の川の水は地上の雨で溢れるような気がしてきた。