蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

街頭除霊で思わぬ獲物(2007年冷たい宇宙の第5部掲載)

2009年11月02日 | 小説
冷たい宇宙の連続掲載5回目です。これまで90枚をPDFにしてHP(左の部族民通信HP版をクリック)に掲載しました。原稿用紙換算で360枚ほどです、ブラウザ数もすこしづつ増えております。皆様のアクセスをお待ちします。
第5回の内容は、
=北白川安休斉、本名は一条二八、焼き鳥サブちゃんでタダ食いしたうえサブロから街頭除霊のコツを教わった。今日は高山不動の参道脇道で街頭除霊の呼び込みを始めた。
11月の連休最後の日曜日、天気にも恵まれ安休斉の口上を聞く人垣ができた。サクラの演技も上々で除霊キットが完売となった。鞄をたたんで帰ろうとする安休斉に粋な年増が声をかけた。以下はそのやり取りです。
「もしもし、横からですけどね安休斉さん、取り憑いていた悪霊らはどうなったのですか」今まで気付かなかった若作りの粋な年増。彼女の後ろには、先ほど安休斉に突き転ばされたお婆ちゃんがただならぬ三白眼で安休斉を睨んでいた。この年増女性と関連があるようだ。
この妙齢の女性、口上が始まり少し経過してから、遠巻きの人垣に紛れ見物にはいった。安休斉はその存在をみおとしたが、彼女の方は遠巻きながら一言も聞き漏らすまいと注意深く安休斉の口上に耳を立てていたのだ。
短めのジャケット、大振りの衿をラフに立てた項(うなじ)から黒い髪が肩に垂れる。形良いはずの顎が勿体なくも立て衿に隠れるが、上向き尖りの鼻筋はしっかり見える。なかなか気丈な女性と見えて、さらに質問を続けたいと半開きの唇、それは安休斉には目の毒である。
フェイクファージャケットは長いしっとりした毛足の高級品、薄い黄の地に輪郭のぼけた大きな黒い斑紋が胸のあたりに目立つ。冬毛の雪豹、その斑紋が胸の大きさを強調しているのは偶然ではないだろう。胸部が大きいのはジャケットの内側で胸乳が盛り上がっている為で、その勢いがフェイクかどうかは外観からは判断できない。
裾が腰のくびれを締め、ボトムには明るい茶のタイトなスカートが膝をかろうじて隠すまでの長さ。スカートはタイトすぎるので丸い尻はち切れるばかり、前から見たってお尻の丸さに気付くほどだ。
安休斉が啖呵売の口上で「弱い」とほら吹いたのは「少し年増の別嬪さん」だった。まさしくこの女性がその「少し年増」でしかも別嬪、色気がまとわりつく美人である。安休斉、返事かえすのも忘れてしばし呆然、突然人垣から湧いて出てきた年増に見とれたままだ。後ろに控えていたお婆ちゃんが
「なにをぼけーと見ているんだい。良子がそんなに気にいったのかい。でもあんたには高値の花だよ」と横から口を出してきたのでやっと正気に=以下略
 除霊のとばっちりで道端で気を失っている悪霊を安休斉が抱え起こし突っ走しってきたダンプに放り投げた。悪霊は粉骨刑の憂き目におそわれ微塵に化けた。その一部始終を目撃した良子は安休斉を信じ込み、その晩安休斉道場を訪れる事になった。特別秘儀、サクラ親王霊の御降臨をいただき、良子の除霊を施術するためである。
しかし一部始終をミドリに聞かれてしまった。ミドリは特別秘儀のいかがわしさと、それがなにやら林太郎の転生と重なるあやしい予感を得て「乗り込んでいかがわしければ妨害する」と決意した=
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