(2021年5月7日)「歴史と弁証法Histoire et dialecrique」はレヴィストロース著野生の思考第9章(最終章)の題です。この紹介を2021年3月にブログ投稿(3月19日~4月12日、計10回)した。また部族民通信のホームサイトに加筆して掲載した(4月30日)。ブログ投稿時に各節最終に短い文を追記として付した。それら重複を省きここにまとめた。
趣旨は「共産主義の歴史観」である。
レヴィストロースはサルトル批判を「歴史観」に焦点を当てているが、その中身は反唯物弁証法である。サルトルが共産主義に傾倒していた事実はあるし歴史観、ひいては世界観がマルクス共産主義に影響を受けていた裏も論拠できる。ここではサルトル批判の枠を外し、共産主義が「歴史」をどのように定義しているかに筆を進める。
サルトルの説く弁証法理性こそ共産主義の歴史観と言えるのだから。
共産主義の歴史観とは;
歴史に特異点を設ける。それが歴史の目的であり究極、その点から先は歴史も止まる逼塞の時空、共産調和である。これには多くの方がかく分析、説明してきたと感じる。
ここでの留意は共産主義を信奉する勢力(俗に云う左派)は「遠い未来」の特異点を判断の拠りどころとしている脅迫観念を持つ。すなわち現在を(いまだたどり着かない)未来の視点を通して判断する。左派ではない人々は歴史を過去からのつながりと観るから、正反対の思考回路を彼らは抱えている。
この歴史観が導く共産主義の幾つかの断定(偏見とも言える)は;
1現時点の歴史上の系列位置(特異点、共産調和との歴史距離)を常に確かめている
2特異点との比定で社会、個人の価値を判断する
3特異点達成に向かっているのか反逆しているのかで思想、信条の是非を決めつける。非を必ず弾劾する。
1はマルクスの主張です。2,3についてはマルクスから発展したレーニン毛沢東主義の教条となります。歴史特異点を宇宙の根本基準(デファクトスタンダード)に崇め奉り、個人を判定しているのであるから、基準からはみ出たら命(社会的かつ生物学的)がない。ソ連、現中国での人民弾圧での実例は限りなく数えられる。
未来を基準にして現在を断ずる、これを思索の過ちと小筆は断じます。
歴史観の逆位相、根源をどこに見付けるか;
<Le Marxisme n’est pas seulement une théorie du socialisme , c’est une conception du monde achevée, un systeme philosophique d’où découle narturellement le socialisme plorétarian de Marx. Ce systeme philosphique porte le nom de matérialisme dialectique. Pourqui? Parceque sa méthode est dialectique et sa théorie materialiste>
訳:マルクス主義は単なる社会主義理論ではない。それはやり遂げた(究極)世界の概念でありプロレタリア社会主義を生み出す哲学システムでもある。この哲学体型は唯物弁証法との名を持つ。なぜか?なぜならそれは弁証法の手順を取り、唯物論の理論を抱くからである。
共産主義の教条をあからさまに露呈した一文、それもそのはずスターリン著「無政府主義対社会主義」の第1巻序文である(Dictionaire de la langue philo)。スターリンが筆をとったと素直に判断する。極左共産主義の大親分が直接に煽る究極の政治常套句(プロパガンダ)と受け止めた。そしてこの一句<acheveeやり遂げた>、終わる(se finir)でも終点にたどり着く(se terminer)でもない。任務を遂行した、やり遂げたのs’acheverです。やり遂げるまでの任務が「共産革命」であるとは自明です。
共産に向かう暴力革命に正統性の根拠を給したと思います。

猜疑と残忍のみが大元帥の特質ではなかった。著述家でもあった。代筆者がいたとか疑っても言いふらすな。銃殺者が迎えに来るぞ。

歴史究極(特異点)説に対して「歴史が方向性を持つなど有り得ない、歴史は思想であるから」などと反論するとシベリアに送られる。大元帥にあられムシの居所がもしもや悪いと銃殺なんかを賜る。教条の解釈論争、正統性の確立闘争。共産主義政治に見られる思考の硬直性はすべて上引用スターリンのやり遂げる概念>conception du monde achevee<に行き着く。
この脅迫観念を歴史を尺度に語れば「特異点に向かおう」と言える訳です。
やり遂げたくない一派弾圧の例を挙げる;
「獲得形質は遺伝する」なる珍説を弄んだルイセンコ(農業技師)。多くの正統遺伝学者が反論を浴びせた。「獲得形質は一代限り、遺伝しない」(これは常識です)などを言い触らす輩は、歴史特異に向かう人民の足並みを乱す。「ブルジョワの手先」として糾弾されねばならない。結果、彼らは例外なく獄死、シベリア送りそして銃殺の論難極点に見舞われた。その数3000人とも(ネット調べ)。
ソルジェニーツイン「煉獄にて」に暗躍する秘密警察の弾圧様が詳しい。
共産主義の歴史観 上 了
(明日の5月8日、9日と参階に分けて一気連載する)
補<周囲では、あれほどルイセンコ、ルイセンコと言っていた人たちも、間違っていたと明言もせず、いつの間にかゾローッと新しい生物学のほうへ変わっていった。若者たちはDNA に関心を示していき、日本でのルイセンコの時代は終わった。世の中とはそんなものかもしれない>「ルイセンコの時代があった」岡田節人生命研究館 館長。ネットから採取。
趣旨は「共産主義の歴史観」である。
レヴィストロースはサルトル批判を「歴史観」に焦点を当てているが、その中身は反唯物弁証法である。サルトルが共産主義に傾倒していた事実はあるし歴史観、ひいては世界観がマルクス共産主義に影響を受けていた裏も論拠できる。ここではサルトル批判の枠を外し、共産主義が「歴史」をどのように定義しているかに筆を進める。
サルトルの説く弁証法理性こそ共産主義の歴史観と言えるのだから。
共産主義の歴史観とは;
歴史に特異点を設ける。それが歴史の目的であり究極、その点から先は歴史も止まる逼塞の時空、共産調和である。これには多くの方がかく分析、説明してきたと感じる。
ここでの留意は共産主義を信奉する勢力(俗に云う左派)は「遠い未来」の特異点を判断の拠りどころとしている脅迫観念を持つ。すなわち現在を(いまだたどり着かない)未来の視点を通して判断する。左派ではない人々は歴史を過去からのつながりと観るから、正反対の思考回路を彼らは抱えている。
この歴史観が導く共産主義の幾つかの断定(偏見とも言える)は;
1現時点の歴史上の系列位置(特異点、共産調和との歴史距離)を常に確かめている
2特異点との比定で社会、個人の価値を判断する
3特異点達成に向かっているのか反逆しているのかで思想、信条の是非を決めつける。非を必ず弾劾する。
1はマルクスの主張です。2,3についてはマルクスから発展したレーニン毛沢東主義の教条となります。歴史特異点を宇宙の根本基準(デファクトスタンダード)に崇め奉り、個人を判定しているのであるから、基準からはみ出たら命(社会的かつ生物学的)がない。ソ連、現中国での人民弾圧での実例は限りなく数えられる。
未来を基準にして現在を断ずる、これを思索の過ちと小筆は断じます。
歴史観の逆位相、根源をどこに見付けるか;
<Le Marxisme n’est pas seulement une théorie du socialisme , c’est une conception du monde achevée, un systeme philosophique d’où découle narturellement le socialisme plorétarian de Marx. Ce systeme philosphique porte le nom de matérialisme dialectique. Pourqui? Parceque sa méthode est dialectique et sa théorie materialiste>
訳:マルクス主義は単なる社会主義理論ではない。それはやり遂げた(究極)世界の概念でありプロレタリア社会主義を生み出す哲学システムでもある。この哲学体型は唯物弁証法との名を持つ。なぜか?なぜならそれは弁証法の手順を取り、唯物論の理論を抱くからである。
共産主義の教条をあからさまに露呈した一文、それもそのはずスターリン著「無政府主義対社会主義」の第1巻序文である(Dictionaire de la langue philo)。スターリンが筆をとったと素直に判断する。極左共産主義の大親分が直接に煽る究極の政治常套句(プロパガンダ)と受け止めた。そしてこの一句<acheveeやり遂げた>、終わる(se finir)でも終点にたどり着く(se terminer)でもない。任務を遂行した、やり遂げたのs’acheverです。やり遂げるまでの任務が「共産革命」であるとは自明です。
共産に向かう暴力革命に正統性の根拠を給したと思います。

猜疑と残忍のみが大元帥の特質ではなかった。著述家でもあった。代筆者がいたとか疑っても言いふらすな。銃殺者が迎えに来るぞ。

歴史究極(特異点)説に対して「歴史が方向性を持つなど有り得ない、歴史は思想であるから」などと反論するとシベリアに送られる。大元帥にあられムシの居所がもしもや悪いと銃殺なんかを賜る。教条の解釈論争、正統性の確立闘争。共産主義政治に見られる思考の硬直性はすべて上引用スターリンのやり遂げる概念>conception du monde achevee<に行き着く。
この脅迫観念を歴史を尺度に語れば「特異点に向かおう」と言える訳です。
やり遂げたくない一派弾圧の例を挙げる;
「獲得形質は遺伝する」なる珍説を弄んだルイセンコ(農業技師)。多くの正統遺伝学者が反論を浴びせた。「獲得形質は一代限り、遺伝しない」(これは常識です)などを言い触らす輩は、歴史特異に向かう人民の足並みを乱す。「ブルジョワの手先」として糾弾されねばならない。結果、彼らは例外なく獄死、シベリア送りそして銃殺の論難極点に見舞われた。その数3000人とも(ネット調べ)。
ソルジェニーツイン「煉獄にて」に暗躍する秘密警察の弾圧様が詳しい。
共産主義の歴史観 上 了
(明日の5月8日、9日と参階に分けて一気連載する)
補<周囲では、あれほどルイセンコ、ルイセンコと言っていた人たちも、間違っていたと明言もせず、いつの間にかゾローッと新しい生物学のほうへ変わっていった。若者たちはDNA に関心を示していき、日本でのルイセンコの時代は終わった。世の中とはそんなものかもしれない>「ルイセンコの時代があった」岡田節人生命研究館 館長。ネットから採取。