(2023年3月28日)ブラジルマトグロッソに住むNambikwara族。悲しき熱帯 « Tristes Tropiques » でその生活の様は詳しく描写されている。とあるバンド(=移動しながら採取狩猟で生活を立てる20~30人ほどの小規模集団)、リーダーは40歳代半ばとみられ、体躯強壮にして心情は快活そのもの。彼のある夜の不可解な出来事が報告されている(1936年、レヴィストロースが同族を訪れた際の実地譚)。
仲間同士で狩りに出て彼は一人離れての行動を取った。夜になって彼だけが露営地に戻らない。
« Un soir, pourtant, il ne reparut pas au campement à l’heure habituelle. La nuit tomba ; les indigènes ne dissimulaient pas leur inquiétude. Nombreux sont les périls de la brousse : rivières torrentueuses d’un grand animal sauvage : jaguar ou fourmilier ou celui, plus immédiatement présent à l’esprit nambikwara qu’un Esprit malfaisant… » (186頁)
その夜、時間になっても彼は戻らなかった。夜は更ける、人々は不安を隠せなかった。(夜の)森には様々な危険が待ち受ける。川の流れの荒れ逆巻き、ジャガー、アリクイなど大型動物との突然の遭遇。Nambikwaraの信心では悪霊(Charia)との出会いはなお危ない。
« Nous apercevions tous les soirs, depuis une semaine, des feux de campement mystérieux qui tantôt s’éloignaient et tantôt se rapprochaient des nôtres. Or toute bande inconnue est potentiellement hostile »
同族の移動生活中の仮小屋(hutteヒュッテ)左の男の服装は本文にある通り、腰紐のみ。編みカゴが見える。生活資材を入れ込んで、背負って移動する。背負うは女、南米諸族はハンモックで就寝するが、同族は地べたで寝る。ハンモックを仕舞い運ぶ余裕はないから。なお男どもは弓矢の軽装で獲物を見つけたらとんで仕留める(口実のようだ)
写真はネットから採取した、時期的には20世紀初期か。
1週ほど前から夜毎、露営の火が遠く山間に不気味にちらついていた。ときに離れまた近づく。見知らぬ部族は常に敵となりうる(同)。
(Nambikwara族、乾季にはバンドを組み 移動(nomade)生活に入る。移動道のり露営地の選定はリーダーが決める。他バンドとも情報を交換し合って、行程が重ならず離反せずなどを調整するーこれらを悲しき熱帯から読み取れる。露営の火が望める近さなら挨拶があって然るべき。連絡を見せないは他の部族か。見知らぬは常に敵意の現れ)
« Nous décidâmes de partir en reconnaissance avec quelques indigènes qui avaient conservé un calme relatif. Nous n’avions pas fait deux cents mètres que nous trébuchions sur une forme immobile ; c’était notre homme, accroupi, grelottant dans le froid nocturne, privé de sa ceinture, colliers et bracelets »
我々は幾人かの族民とともに捜査に出ると決めた。彼らは森の夜を前に押し黙ったままだった。幾百メートルを進んだところで何物か、動かない物体に足を取られた。それが探している者だった。伏せたまま夜の寒さに震えていた、腰帯も腕輪も剥ぎ取られていた(186頁) 。
幸いに重度の打撲もなく、担ぎ上げて露営地にまで運び込んだ。族民皆の、何事が起こったのか、たっての頼みで « Enfin on peut lui arracher, bribe par bribe, les détails de son histoire » ポツリポツリながらも彼から委細を聞き出せた。 « Un orage―le premier de la saison―avait éclaté dans l’après-midi, et le tonnerre l’avait emporté à plusieurs kilomètres » 「嵐に遭遇し巻き上げられ、一旦はかなり遠方(rio Ananaz河畔)に落地し、その後に露営地近く(発見された場)に戻された」。
確かにその日午後にはこの年で初めての嵐が一帯を襲った。皆は一時の失踪と発見された彼の状況、そして午後の嵐の関連に辻褄を合わせ、これで納得して « Tout le monde fut se coucher en comprenant l’évènement » 寝に入った。
構造人類学を読む、出来事の由来 上の了(3月28日)
仲間同士で狩りに出て彼は一人離れての行動を取った。夜になって彼だけが露営地に戻らない。
« Un soir, pourtant, il ne reparut pas au campement à l’heure habituelle. La nuit tomba ; les indigènes ne dissimulaient pas leur inquiétude. Nombreux sont les périls de la brousse : rivières torrentueuses d’un grand animal sauvage : jaguar ou fourmilier ou celui, plus immédiatement présent à l’esprit nambikwara qu’un Esprit malfaisant… » (186頁)
その夜、時間になっても彼は戻らなかった。夜は更ける、人々は不安を隠せなかった。(夜の)森には様々な危険が待ち受ける。川の流れの荒れ逆巻き、ジャガー、アリクイなど大型動物との突然の遭遇。Nambikwaraの信心では悪霊(Charia)との出会いはなお危ない。
« Nous apercevions tous les soirs, depuis une semaine, des feux de campement mystérieux qui tantôt s’éloignaient et tantôt se rapprochaient des nôtres. Or toute bande inconnue est potentiellement hostile »
同族の移動生活中の仮小屋(hutteヒュッテ)左の男の服装は本文にある通り、腰紐のみ。編みカゴが見える。生活資材を入れ込んで、背負って移動する。背負うは女、南米諸族はハンモックで就寝するが、同族は地べたで寝る。ハンモックを仕舞い運ぶ余裕はないから。なお男どもは弓矢の軽装で獲物を見つけたらとんで仕留める(口実のようだ)
写真はネットから採取した、時期的には20世紀初期か。
1週ほど前から夜毎、露営の火が遠く山間に不気味にちらついていた。ときに離れまた近づく。見知らぬ部族は常に敵となりうる(同)。
(Nambikwara族、乾季にはバンドを組み 移動(nomade)生活に入る。移動道のり露営地の選定はリーダーが決める。他バンドとも情報を交換し合って、行程が重ならず離反せずなどを調整するーこれらを悲しき熱帯から読み取れる。露営の火が望める近さなら挨拶があって然るべき。連絡を見せないは他の部族か。見知らぬは常に敵意の現れ)
« Nous décidâmes de partir en reconnaissance avec quelques indigènes qui avaient conservé un calme relatif. Nous n’avions pas fait deux cents mètres que nous trébuchions sur une forme immobile ; c’était notre homme, accroupi, grelottant dans le froid nocturne, privé de sa ceinture, colliers et bracelets »
我々は幾人かの族民とともに捜査に出ると決めた。彼らは森の夜を前に押し黙ったままだった。幾百メートルを進んだところで何物か、動かない物体に足を取られた。それが探している者だった。伏せたまま夜の寒さに震えていた、腰帯も腕輪も剥ぎ取られていた(186頁) 。
幸いに重度の打撲もなく、担ぎ上げて露営地にまで運び込んだ。族民皆の、何事が起こったのか、たっての頼みで « Enfin on peut lui arracher, bribe par bribe, les détails de son histoire » ポツリポツリながらも彼から委細を聞き出せた。 « Un orage―le premier de la saison―avait éclaté dans l’après-midi, et le tonnerre l’avait emporté à plusieurs kilomètres » 「嵐に遭遇し巻き上げられ、一旦はかなり遠方(rio Ananaz河畔)に落地し、その後に露営地近く(発見された場)に戻された」。
確かにその日午後にはこの年で初めての嵐が一帯を襲った。皆は一時の失踪と発見された彼の状況、そして午後の嵐の関連に辻褄を合わせ、これで納得して « Tout le monde fut se coucher en comprenant l’évènement » 寝に入った。
構造人類学を読む、出来事の由来 上の了(3月28日)