蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

テポドンテンコテンコ 1

2018年01月27日 | 小説
(2018年1月27日)
玄関がドンドンと騒がしい。「また来たのか」。小老(=自分のこと)は鬱陶しさをフト感じた。「農協パラダイム」の続きが書きかけ、頭を捻っている最中だった。一方、縄文ボロロ族の小屋の続きでも聞けたらブログが続く。気を取り直してそれではとK氏を居間に、と言っても玄関脇の3畳板の間、座布団を置いた物置兼用だが貧民層として一応居間、入って貰った。
ぬる茶をがぶりのその口から出た話とは。ボロロ族小屋の後日譚などではなかった。(K氏がボロロ族の遺構たる縄文小屋を日野市浅川べりで「発見」した経緯は1月7に投稿)。それはテポドンだった。

「昨日のことだけど携帯に緊急警戒警報が入らなかったかね」
「気付かなかった」
「夕食が終わって後片付けが終わった。宵の口だった。ならば多くの家庭が静かさと落ち着きを求めていた時刻だった。その平安の時空を乱した1通の…」
K氏の携帯に入っていたのは「政府発信の速報」緊急避難命令だった。誰もが知る宰相の名で「テポドンが発射された、至急に避難するように」との指示。これに続いた文節は官邸府安全補佐官の名で詳細な指示。
「角度と方向をミサイル解析のスパコンのチョー京で分析したら、向かってくるのは関東南部、10分後に首都圏に飛来する可能性が高い、今すぐ、大急ぎで慌てず頑張って地下街へ」と読めた。
大あわてでK氏は階段をどっかんどかんと下りた。建物ごと揺れる勢いだったそうだ。
建て付けが悪いとの直接指摘など口に出さず、冷やかし気味に投稿子は「家の構造に幾分かの欠点が潜むようだ」チャチを入れた。
するとK氏は真顔になって
「ここのボロ屋もボロロ族小屋も、コンクリ造りも一緒くただ、どんな家だって吹っ飛ぶんだ、テポドンで」
言い返しもヤケクソ気味だ。

転げ込んだ居間ではK氏の細君とご母堂がくつろいでいた。ミカンを剥いてテレビを見て大笑い。K氏は、コタツの二人の危機感欠如にすぐさま不快を感じた。生きるか死ぬか、大事な局面が発生している、パックと大きく開けたその口を、今すぐ閉じて地下街に逃げるのだと諭した。
時間を確認したいのでK氏にテレビ番組を質した。

K氏は昨日に全員集合を見たと語った。その筋も覚えていた。しかし奇妙だ(写真はネットから)

「コントをやっていた。
中年の先生風情は大柄な中年、眼鏡の小学生に扮した小柄男が掛け合いしていた。小学生は遅刻して教室に入ったばかり。ランドセルも下ろさず帰ると云いだした。先生がなだめて=授業に座し本に学ぶが学童の努めだ、二宮金次郎を習え=と止めた」
遅刻してすぐに帰る、その理不尽は学童の家があまりに遠いから。まだきの朝は暗がりの母がかざした提灯に見送られても山二つ、学校に着くのが11時、席に付くのももどかしくすぐの帰りを頼むのは、
「そうしないと日が暮れてしまうから」
細君ご母堂は早速、このやり取りに批判を展開した。
「イナカに住んでいるからだよ」「そこまでのイナカなら熊とかタヌキが大暴れするんじゃない、夜になったら」「だから暮れる前にイナカに帰りたいんだよ」「ワーハッハ」
オフのスイッチを捻ってテレビ消したK氏から、細君等に向かって出された言葉とは、
「イナカならこんな心配などないのだ。ココイラは大都会だから焦っている。とうとうあのテポドンがやって来るんだ、この日野に」
「すぐさま」消した筈のテレビ番組、その込み入った筋道を覚えているとは不可解。さらに
「番組名を思い出したドリフの全員集合だ」
確かにチョウスケとチャの掛け合いにはいつでも大笑いするから、細君等の挙動には何ら不思議さはない。しかし20年前には終了した番組を昨日に、それも平安が必要な時空で二人が見ていたと伝える奇妙さ。その上さらに
「日野を大都会などと妄想している、イナカの端くれだよ、ここは」
「おかしく」なっていたのがK氏だが、その事実に投稿子は気付かなかった。テポドンと緊急避難命令に気が取られていたかも知れない。

テポドンテンコテンコ1の了(続きは30日予定)

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