蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

親族の基本構造第一部の補遺ヴェイユの証明 2

2021年11月08日 | 小説
(2021年11月8 日)AとB, CとDが限定交換で子をやり取りする流れも考えられる。ヴェイユはこうした限定交換は全体から離脱する(réductible)集団として、モデル形成から排除している。しかしここでレヴィストロースとヴェイユの基本姿勢が幾分異なる姿勢が見えている。レヴィストロースは人類学者として、モデルを実際に近づける努力を取り、ヴェイユは1のモデルを代数学から検証する。この差ではないだろうか。
レヴィストロースは限定交換を含む交換の手順での部族モデルを考えている。このこの差異は後述する。


上スライド;婿(嫁)も移動は隣接支族に、子の移動はその一つ先(2の先の支族)。4の支族なので展開図の上下と左右の支族は「子を贈り子を貰う」限定交換を実施している。アボリジニの交換は限定が一般的なので、こちらの方が(婿と子を周回させる一般化よりも)多い(と聞く)。ヴェイユは「限定交換」を社会の分割として(モデル形成で)排除するが、レヴィストロースは取り入れている。


murngin族。スライドの左写真を右に展開する。ABCD4の支族(階層)、それぞれがN1,N2とわかれ8のサブセクションで構成される。


垂直線で分断される半族(moitié)。婿の交換は子の線を跨いで、かつ水平線(オレンジ色、原写真に加筆)を超すことはない。このオレンジ線は子の交換の境界線でもある。子は必ず水平線を跨いで半族の内側で交換される。A1とA2が子交換することはなく、A1が半族線を超えてBnと交換することもない。
この仕組で婿と子を交換すると斜め集団が男系半族となる。(=嫁の交換の場合は斜めが女系半族)。


上スライドは参考。本年7月に作成、ブログ投稿した。Murngin族の社会構成は2の半族(男系、女系)と2の内婚集団に分かれると示す。婚姻と子の交換制度を通しての構造です。


同族の婚姻はA1とB1の組み合わせで水平に婿をやり取りする。A1がB1に婿を贈ったら、B1はA1に婿を贈る。限定交換。しかし調査者(Webbなど)はB2がA1に婿を出す「風変わり」な慣習が時たま見分されると報告する。レヴィストロースはこの風変わりを例外とせず、normal(水平交換)とoptionel(たすき掛け交換)で交代する(alterné)交換と定義した。特異性を力点に紹介されていたMurngin族も、婿の交換で一般化を制度としているアボリジニの習俗に還元する鍵と捉えた。


水平交換とたすき掛け交換の混在(交代)の展開図です。

親族の基本構造第一部の補遺ヴェイユの証明 2の了(11月8日)

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