蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

猿でも構造、悲しき熱帯を読む 9

2017年06月20日 | 小説

(6月20日)

前回ではボロロ族の社会は「丸構造」と述べました。文頭の図は悲しき熱帯(ポケット版254頁)ケジャラ村落の著者スケッチをデジカメに撮りました。まさに「丸社会」が見えています。(原文は南半球なので南北が逆立している。読みやすいように北を上にしている)

村落はおよそ150人の人口を擁する。盛期の新大陸発見時期には1000人を越す村も報告されているので、ボロロ族としては小規模。しかし周辺の村(pobori、juruoliとの名が上げられている)はさらに小規模である。白人植民者のマトグロッソ移入以降、族として衰退している裏付けかもしれない。過去の隆盛数を述べたのは彼らの社会構造、婚姻の仕組みなどが成員150では僅少すぎるからである。
中央の大きな方形は男衆が日中を過ごす「中心屋」、その周囲を円状に小型の四角が囲む。これらは女の家族が過ごす「家屋」、家族は女系、祖母、母、男児も含む子。成人の男は昼にはこの家屋に立ち寄るけれど、過ごさない。家屋は26棟を数えているので平均して一家族は6人弱となる。日本的に言う核家族に老女を加えれば数字となるだろう。
図の右手上はRioVermelho(ヴェルメーリョ)川、GoogleMapで検索してもマトグロッソではこの名は探し当てられない、小さな流れかもしれない。地図では南東から北西に流れるが、住民の思考では東から西への流れとなる。南北の線と東西の線に村落が分割されているが、川の流れの方向との関連で著者は説明している。

まず東西を分ける境界の線は住民は2の部(グループ)北側はCera、南はTugareに分けている。結婚相手は必ず対向する部から選ぶ(族外婚)。私を男の例として婚姻の仕組みをのべるとCeraの母親から(Ceraとして)生まれた私はTugareの娘を嫁に選ぶ。子が生まれればすべてが母の部Tugareに属する。すなわち父(私)の部は誰も継承しない。女子は家屋に住のこり、男子は成人に達したら家屋から放り出され中央屋に居を移す。
息子はTugare、しばらくはそこで日夜を過ごすが、Cera部の嫁、すなわち私、父の部に属する女子を見つけて、と言うより始めから決まっているから相手が成熟するまで待って結婚し、夜にはその家屋に寝泊まりする。私は、生まれの家、Ceraの母、姉妹には時折、昼に限って実家に立ち寄る。その時に姉妹の亭主、すなわちTugare部の男とかち合う場合もあるが、その男からは邪険にされるそうだ。
部の規制は結婚のみならず、各種(狩りの遠征、農作業など)取り決めに及ぶし葬式は婚家の部が執り行う(すなわち男自身が所属しない部)から、部の決定は、つねに対向部への配慮を加味するとのことである。

図にはもう一つの二分割線が見える。川の流れに直角(と信じている)で交わる線で、彼らの言葉では上流(amont)、下流(aval)と分けている。この分割機能についてレヴィストロースは「生まれの出自を表すのみで他の機能については不明」(257頁)としている。これは成員が150人に縮小している結果である可能性が強い(投稿子=蕃神ハガミの観測。Kejara村落自体が宣教団サレジオ会の入植の後に、再構成された歴史がある)
図にはあらわれないが住民を分割するクラン(Clan)が存在する。CeraとTugareが各、赤と黒のクランに二分割される。かつてはそれが4に分割されていたと。さらにそれぞれのクランは上中下のカーストに3分割される。
部(CeraとTugare)は族外婚(exogamie)。しかしクラン(赤と黒)、およびカースト(上中下)は族内婚(endogamie)を規定する
行動の節々に、例えば原則としてCera部赤クランの男はTugareの赤クランの女子を嫁に求める、さらに厳密を通せば、男がCera赤クランの下流の出であれば(そうした出自の母を持てば)、Tugareの赤クラン下流の嫁を求める。さらに言えば(川の)上流と下流の分割も族外婚の機能を持っていたようだから、昔はさらなる出自が問われる事になる。

川の上流下流の分割を計算から外しても、それぞれ住民は12の出自に分類されて、族内と族外の婚姻規定で相手先が決まる。成員は150人なので同一の出自は平均して12~13人、これが男女6人ずつに分かれ、老若(ゼロから60歳までに分布)に分かれると、ある男が嫁に貰える資格出自の女性は、5歳以下の幼女か60を超える老女しか見あたらない、こんな事態もあり得る。

猿でも構造、悲しき熱帯を読む 9の了 (次回は6月22日を予定)

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