蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

共産主義の歴史観 下

2021年05月09日 | 小説
(2021年5月9日)
パワーポイントで作成した図表をJpeg変換して掲載します。中身は見てのとおり、説明は極力省きます。





サルトルは共産国家の教条偏重が停滞を招くとして、人性をも弁証法に組み入れた「実存的共産主義」を展開したと述べている。このところが「神の弁証法」たる唯物史観を人の性向のからくりに絡めてしまったわけで、レヴィストロースの批判を招いた。




この表は耶蘇と共産主義を比較した。両者ともに「未来を規範」として今を断じる。この程度の掘り下げは誰にでも思いつく筈だが、部族民(蕃神)は個人としてそうした論文に出会っていない。ネットで調べて、そんな論調がなければ歴史観から見た「千年王国論」としてまとめてみたい。読者からの批判を待ちます。
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共産主義の歴史観 中

2021年05月08日 | 小説
(2021年5月8日)なぜスターリンが獲得形質の遺伝に拘ったのか、彼の思いこみは単純である。
集団教育、矯正、転向、思想改造、さらには長期下獄。これらが共産体制における教育の体制となります。こうした教育強制の目的は人民馴化に他ならない。そしてルイセンコ説を人民に応用すれば、長期視点を見据えた人民馴化、共産化への近道が可能になった、とスターリンが妄想した。
教育を通じて共産形質を「獲得させる」、獲得した共産思考が遺伝する。出来の良いヤツの子孫は生まれながらの共産兵士に鍛えられて世に出てくる。この仕組みを2世代3世代と経ると生まれつきの共産主義者のみ、ブルジョワ構成民を排除した特異点、共産仕様の社会が出来上がる。スターリンの妄想はかくありき(本人に聞いていないから一部憶測)。
この妄想の逆位行動者が「ブルジョワ」であり、その形質もやはり遺伝するから、子孫まで反共産に生まれてしまう。さらには言説を広めたりしたら、無垢な人民がブルジョワ化してしまう。ボードビル結婚笑劇は必ず三角関係でごたつく(親族の基本構造の序章から)けれど、共産主義の弾圧理由も三角関係にある:ブルジョア本人と共鳴者らは、1悪に染まり、2悪を染め、3悪遺伝子をばらまく―のだ。余談ながら東トルキスタンでは今も、中国共産党によるウイグル族への強圧教育が実行され、それは教育だと共産党は弁明している。報道で聞きます。
本文は中国共産党の弾圧例をウイグル弾圧にて止めるが大躍進、文化革命等で毛沢東が強行した共産化への迷走と、ソ連のそれら弾圧との共通に皆様は気づいているかと。以上が歴史弁証法の最左派のレーニン毛沢東主義が教条をもとに歴史を実行するとした例です。

そして;
「la critique de la raison dialectique」をサルトルは1960年に刊行した。前後をたどれば、共産主義を平和勢力と賛美する一文(le communiste et la paix=小筆は未読)を発表し、かつ中国、キューバ、ソ連(いずれの国も暴力革命で共産独裁を樹立)を訪問している(1955、60、62年)。サルトルは(62年の)モスクワ軍縮平和大会に出席し、声明文を発表したはずなのだけれどWikipediaなどネットではなぜか見えない。
この著作「la critique de la…」に表れた歴史観、そこに用いられる語「praxis、pratico-inerte」などは究極(特異点)に向かう歴史の表象を、人の行動にあてはめている。これをとっても未来を基準に現在を分析、批判する視点であると言える。レヴィストロースから批判はそこに集中している。「歴史を自律進展するモノとして捉える」は誤りだと。この論調にて「個が宇宙をモノとして経験する」実存主義も同時に葬り去った。サルトルがレヴィストロースの論難に反論しなかった事実はネットで見えていない。
反論できなかったサルトルの心情景色を喩えると、強力台風18号に破壊された己の住処の「土台と建屋」の惨状を目の辺りにしたからかと推測します。土台は実存主義、建屋が歴史観を換喩しているとは言わずもがななんですが(言っちゃった、換喩は日本語ではあまり使われない、馴染み薄いかと)。


サルトルとボーボワール,1955年北京にてと伝わる。


日本のサルトル有力紹介者は「レヴィストロースは何も分かっていない」なる反論を公言していた(らしい、ネット調べ)。こうした批判こそ文学系の彼は哲学の立ち位置を知らない証です。なぜなら哲学書を読むとは「理解」ではなく「解釈」です。文と行、そこに盛られる語句、文言と言い回し。多重否定、関係詩のつながり(フランス語特有)、暗喩換喩の謎を解いて、これら修辞に散らばる思想をあばく。あばいた流れの解釈に、始めと終わりの辻褄が合えば文論を読み解いたことになる。
一方で著者が、サルトルが言いたい中身は「これだ」「これしか無い」なる金科玉条、別の言で脳みその機械反応は哲学を読むには似合いません。

本稿の終わりにあたり:本9章(Histoire et dialectique)の全体(20頁)のおよそ半分の紹介でした。全文を取り上げない理由には「繰り返し」が読めるため。ただし文章表現での重複ではなく、思考の繰り返しです。その度に内容を深化させていくのですが、そこまで掘り下げないと決めました。(共産主義の歴史観 中 の了)
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共産主義の歴史観 上

2021年05月07日 | 小説
(2021年5月7日)「歴史と弁証法Histoire et dialecrique」はレヴィストロース著野生の思考第9章(最終章)の題です。この紹介を2021年3月にブログ投稿(3月19日~4月12日、計10回)した。また部族民通信のホームサイトに加筆して掲載した(4月30日)。ブログ投稿時に各節最終に短い文を追記として付した。それら重複を省きここにまとめた。

趣旨は「共産主義の歴史観」である。
レヴィストロースはサルトル批判を「歴史観」に焦点を当てているが、その中身は反唯物弁証法である。サルトルが共産主義に傾倒していた事実はあるし歴史観、ひいては世界観がマルクス共産主義に影響を受けていた裏も論拠できる。ここではサルトル批判の枠を外し、共産主義が「歴史」をどのように定義しているかに筆を進める。
サルトルの説く弁証法理性こそ共産主義の歴史観と言えるのだから。

共産主義の歴史観とは;
歴史に特異点を設ける。それが歴史の目的であり究極、その点から先は歴史も止まる逼塞の時空、共産調和である。これには多くの方がかく分析、説明してきたと感じる。
ここでの留意は共産主義を信奉する勢力(俗に云う左派)は「遠い未来」の特異点を判断の拠りどころとしている脅迫観念を持つ。すなわち現在を(いまだたどり着かない)未来の視点を通して判断する。左派ではない人々は歴史を過去からのつながりと観るから、正反対の思考回路を彼らは抱えている。
この歴史観が導く共産主義の幾つかの断定(偏見とも言える)は;
 
1現時点の歴史上の系列位置(特異点、共産調和との歴史距離)を常に確かめている 
2特異点との比定で社会、個人の価値を判断する
3特異点達成に向かっているのか反逆しているのかで思想、信条の是非を決めつける。非を必ず弾劾する。

1はマルクスの主張です。2,3についてはマルクスから発展したレーニン毛沢東主義の教条となります。歴史特異点を宇宙の根本基準(デファクトスタンダード)に崇め奉り、個人を判定しているのであるから、基準からはみ出たら命(社会的かつ生物学的)がない。ソ連、現中国での人民弾圧での実例は限りなく数えられる。
未来を基準にして現在を断ずる、これを思索の過ちと小筆は断じます。

歴史観の逆位相、根源をどこに見付けるか;
<Le Marxisme n’est pas seulement une théorie du socialisme , c’est une conception du monde achevée, un systeme philosophique d’où découle narturellement le socialisme plorétarian de Marx. Ce systeme philosphique porte le nom de matérialisme dialectique. Pourqui? Parceque sa méthode est dialectique et sa théorie materialiste>
訳:マルクス主義は単なる社会主義理論ではない。それはやり遂げた(究極)世界の概念でありプロレタリア社会主義を生み出す哲学システムでもある。この哲学体型は唯物弁証法との名を持つ。なぜか?なぜならそれは弁証法の手順を取り、唯物論の理論を抱くからである。

共産主義の教条をあからさまに露呈した一文、それもそのはずスターリン著「無政府主義対社会主義」の第1巻序文である(Dictionaire de la langue philo)。スターリンが筆をとったと素直に判断する。極左共産主義の大親分が直接に煽る究極の政治常套句(プロパガンダ)と受け止めた。そしてこの一句<acheveeやり遂げた>、終わる(se finir)でも終点にたどり着く(se terminer)でもない。任務を遂行した、やり遂げたのs’acheverです。やり遂げるまでの任務が「共産革命」であるとは自明です。
共産に向かう暴力革命に正統性の根拠を給したと思います。


猜疑と残忍のみが大元帥の特質ではなかった。著述家でもあった。代筆者がいたとか疑っても言いふらすな。銃殺者が迎えに来るぞ。


歴史究極(特異点)説に対して「歴史が方向性を持つなど有り得ない、歴史は思想であるから」などと反論するとシベリアに送られる。大元帥にあられムシの居所がもしもや悪いと銃殺なんかを賜る。教条の解釈論争、正統性の確立闘争。共産主義政治に見られる思考の硬直性はすべて上引用スターリンのやり遂げる概念>conception du monde achevee<に行き着く。
この脅迫観念を歴史を尺度に語れば「特異点に向かおう」と言える訳です。

やり遂げたくない一派弾圧の例を挙げる;
「獲得形質は遺伝する」なる珍説を弄んだルイセンコ(農業技師)。多くの正統遺伝学者が反論を浴びせた。「獲得形質は一代限り、遺伝しない」(これは常識です)などを言い触らす輩は、歴史特異に向かう人民の足並みを乱す。「ブルジョワの手先」として糾弾されねばならない。結果、彼らは例外なく獄死、シベリア送りそして銃殺の論難極点に見舞われた。その数3000人とも(ネット調べ)。
ソルジェニーツイン「煉獄にて」に暗躍する秘密警察の弾圧様が詳しい。
共産主義の歴史観 上 了
(明日の5月8日、9日と参階に分けて一気連載する)


補<周囲では、あれほどルイセンコ、ルイセンコと言っていた人たちも、間違っていたと明言もせず、いつの間にかゾローッと新しい生物学のほうへ変わっていった。若者たちはDNA に関心を示していき、日本でのルイセンコの時代は終わった。世の中とはそんなものかもしれない>「ルイセンコの時代があった」岡田節人生命研究館 館長。ネットから採取。
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親族の基本構造 限定交換L’echange restraint 4

2021年05月05日 | 小説
本日2021年5月5日、親族構造と交換の原理を図にて説明します。「親族の基本構造」の序章(introduction)、第一部の初章(規則の宇宙)をまとめました。



本図は4月26日に紹介しています。再生産での自然の原理(子は親から生まれる、子は親に似る)の世代(共時性)における意義を説明し、文化が自然原理から抜け出した起動因をも説明しています。


第2図。系統を確立した文化の婚姻の構造。


第3図。一の系統(族外婚集団)がいかにして女(嫁)を手に入れるか。規則を定めなければ効率が悪い。娘の一人に1000人の若者が嫁取りに勤しみ、若者一人に1000の娘が殺到する可能性だって生まれる。そこで嫁ぎ先(婿入り先)をあらかじめ決めておく。一人の娘に特定の若者が優先権を持つ仕組みです。ここに2の系統が婚姻同盟を結び、族内婚の集団を形成する。限定交換を基盤とした社会の始まりです。

本書は「規則...」に続けて相互性、族外婚族内婚、古代の幻想など続きます。限定交換5以降にて紹介します。なお7日(金曜日)には共産主義と歴史(課題)を取り上げます。

本日5日は春の連休最終日です。4月30日に休暇を取られた方には7日の休暇でした。日差しも豊かな春らしい気候を満喫したかと喜び申します。引き続き部族民通信をご贔屓に。
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親族の基本構造 限定交換L’echange restraint 3

2021年05月02日 | 小説
(2021年5月2日)
本章(限定交換)中の部「l’univers de regle」規則の宇宙を続けます。
前回(4月26日)投稿した「限定交換2」の最終文<si on admet, en accord avec l’evidence, une anteriorite historique de la nature par rapport a la culture…訳:かつそれ自身(文化)の仕組み(ses exigences propres)を(自然に)導入するを可能さしめたに他ならない>
自然は遺伝(heridite)に執着し続け、文化は「系統と同盟」の規則を創造した(marque)との意味です。
<Ainsi se resout l’apparente contradiction entre le caractrere de regle de la prohibition et son universalite. Elle exprime seulemet le fait que la culture a , toujours et partout, empli cette forme vide, comme une source jaillissante…>(37頁)
訳:(近親婚)禁止の社会規則(の多様性)とその趣旨の汎人類性の矛盾はかく解決に至る。汎人類性は文化とは泉であり、周囲空隙に絶やさず水を満たす事実(le fait)を表現している。
空隙とは自然が不侵犯とする分野、すなわちどの個体同士が番うのかには関心がない。これを同盟への無関心とレヴィストロースは語る。一方、文化は遺伝なる生物の現象には全く無力であるけれど、系統を確定し同盟を特定する社会は創造できる。そのようにして婚姻の規則が誕生した。
自然が未踏の領域に文化が規則化を発明して乗り出した。

この発明が近親婚の禁止と同期する。
ここに基準点の1(近親婚禁止が文化を形成)の具体的進展が見えている。
では系列と同盟の発明が2(不等価交換)といかなる関連で重なるだろうか。
系列同盟の規則が進展してゆく。その中で実行される女の交換とは常に不等価で、継続的不均等の緊張を生み出す。この緊張も本書の伝え掛けである。ここから同盟を不等価交換の観点から分析する。

一つの系統、これを一の家族としても数家族の移動集団(バンド)とするも可能で、系統内では婚姻しない。同盟はこの系統に女を与える「他の系統」となる。ごく単純に2の系統間で女を与え受け取る制度が働いているとする。A系統がB系統から年頃の娘を嫁にもらった。Aでの貰い手A若者はそれなりの賦役、例えば牛3頭とかブタ5匹とかを支払う。しかしそれら禽獣にして女一人に対して等価と言えない。人の世代再生産を託すはブタなどには難しい課題であるから。
ここにAとBに不均衡が生じる。Aに嫁いだBが子を成し、男子はAに残り女子をBに返す(あるいは婿の姉妹を貰う)。これで不均衡が解消する。しかし両部族とも嫁の需要は残るから、次世代でも与えて貰う。交換はその瞬間を評価する(共時性)限り不等価で不均衡を発生させる。その不等価を解消するため女のやり取りを逆方向に働かさなければ、不均衡が解消しない。この形態は交換が発生するたびに、前段階の不等価を解消しつつ、新たな不等価を再発させる。これが制度の意思であり、同盟を結ぶ限りAとBとの不均衡状態は継続する。
この不均衡こそが社会継続の起動因とレヴィストロースは説明している。

<Le domaine de la nature se caracterise en ceci qu’on n’y donne que ce qu’on recoit. Le phenomene de l’heredite exprime cette permanence et cette continuite. Dans le domaine de la culture, au contraire, l’individu recoit toujours plus ce qu’il ne donne, et en meme temps, il donne plus qu’il recoit. =中略=Il n’est certes pas dans notre pensée de suggerer ici que les phenomenes vitaux doivent etre consideres comme de phenomenes d’equilibre ; le contraire est manifestement vrai.(35頁)
訳:自然の事象は受け取る分だけ与えるといえる。遺伝の流れはまさにこの様態と連続性を見せている。文化はこの逆であって、個は与える以上に貰う。同時に貰う以上に与える。強固な社会事象とは平等をもってするとは私達は思ってもいないはずだ。その正逆こそ明らかに正しいのだから。
もう一文でさらに文化の存在理由(raisond’etre)を明確にする。
<Car si la nature abandonne l’allience au hazard a l’arbitraire , il est impossible a la culture de ne pas introduire un ordre, de quelque nature qu’il soit , la ou il n’en existe pas.自然は同盟を偶発性あるいは勝手気ままの選択に追いやっているのだから、文化が規則なるものを導入しないわけにはいかない。どのような自然状態であろうとも、それが支配している領域には必ず文化が介入するのである。(37頁)

近隣散歩の途中、大きなツツジを見かけた。満開でした。

(ツツジと限定交換に関連は見いだせない、写真が品切れなので)

本投稿(限定交換3=「l’univers de regle」規則の宇宙)をまとめると自然が支配していない分野とは;
1 世代再生産での配偶規則(自然は勝手気ままにやれと伝える)
2 交換を通じての継続性(自然は平等交換なのだから不均衡を生まない)
よって文化はこの自然不在域に制度を設けた;
1 系統を決め同盟を結ぶ仕組み
2 交換に不等価を導き入れ、必ず不均衡をわだかまらせた。

親族の基本構造 限定交換L’echange restraint 3 了(2021年5月2日)
次回予告:4月26日に「交換の基本1」のパワーポイント図を紹介した。この図の全4葉を掲載し、親族と交換の基本原理を説明する(5月5日を予定)

追記:サルトル批判のホームサイトへの上梓にここ数日、時間を取られた。(サルトル批判の)5頁PDFを作成した、前回(4月30日)2葉のみ投稿した。(我ながら)よくできていると妄想している。このPDFを読み解けば、難文と敬遠されていた野生の思考第9章サルトル批判がたちどころに「熟解」となるから、時間をやりくりしてぜひサイトに(www.tribesman.net)アクセス、全頁を精査してください。
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