鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

雪華文図鍔 古金工 Kokinko Tsuba

2014-07-10 | 鍔の歴史
雪華文図鍔 古金工


雪華文図鍔 古金工

 この鐔も装飾の歴史を考える上で興味深い作であるため、何度か紹介している。古金工と極められており、与四郎鐔より時代が遡ると考えられる。下地は素銅で、唐草風の文様と魚子地の中に、透かしの施された別造りの文が象嵌されている。鉄地真鍮象嵌になる与四郎鐔とは同じ手法である。とすると、欄間透なる手法は小池直正の創案ではないことになる。新たな文様の創造という意味では、透かし文の象嵌を創案した工がすでにあり、それを流行させたのが直正。室町時代には作品に銘を刻すという習慣が乏しかったようで、それは、芸術というより職人が成したものという意味。桃山頃から作品に銘を刻すようになったのは、職人の技術に高い評価がなされるようになり、作品に「個」が見いだされ、芸術という意識が高まり、さらにはそれを求める人々が現れた結果ということも考えられる。85ミリ。