鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

時雨亭透図鐔 京正阿弥 KyoSyoami Tsuba

2010-08-16 | 
時雨亭透図鐔 京正阿弥


時雨亭透図鐔 無銘京正阿弥


 鄙びた風情の漂う鐔。鉄地を肉彫にし、金の布目象嵌を散らし配している。図柄は風景のようだが、実は様式化された題材である。歌人藤原定家が小倉百人一首を選んだ場であり、後に時雨亭と呼ばれ、名所としても名高く、これが文様化され、装剣具や衣服の文様に採られているのである。

扇流図鐔 正阿弥金十郎 Kinjuro-KyoShoami Tsuba

2010-08-15 | 
扇流図鐔 正阿弥金十郎



扇流図鐔 銘 天下中興正阿弥金十郎(花押)

 京正阿弥派の流れを汲む江戸時代中頃の鐔工。図柄は橋上から川に扇を投げおとし、その風流に風に舞い、あるいは水に流れる風を楽しんだという、京都は桂川の上流、渡月橋に残る古い伝承がもと。鍛え肌を表わした鉄地表面に、さらに川の流れを薄肉に彫り出し、ここに金銀の布目象嵌にて扇を散し配している。水に落ちた扇の地紙が破れ、次第に骨をあらわにしてゆく様子が美しく文様化されている。□

立波透図鐔 京正阿弥 KyoShoami Tsuba

2010-08-13 | 
立波透図鐔 京正阿弥



立波透図鐔 無銘京正阿弥

 小ぶりで肉厚く、引き締まった感があり、柳生鐔に通じる風情がある。あるいは、その影響を受けた作とみて良いのかもしれない。造形的にも優れている。鉄の肌は鎚の痕跡が残されて武骨であり、武士の嗜好に適った作。水飛沫を意味する小さな円が図中に活きている。□

輪散し透図鐔 京正阿弥 KyoShoami Tsuba

2010-08-11 | 
輪散し透図鐔 京正阿弥



輪散し透図鐔 無銘京正阿弥

 半円を組み合わせただけの簡潔な透鐔。何と表現して良いのか、解説するのに悩んだ作例である。まさに文様、デザインとおして捉えるべきであろう。耳に接した半円が櫃穴とほぼ同じ大きさであるが故に、安定感と不安定の要素が微妙に働き合って、不安定なんだろうなあ…。魅力的な図柄の一つである。

蕨手菊花透図鐔 京正阿弥 KyoShoami Tsuba

2010-08-10 | 
蕨手菊花透図鐔 京正阿弥


蕨手菊花透図鐔 無銘京正阿弥

 蕨手を組み合わせて八ツ木瓜を造形し、これに菊花を組み合わせている。八ツ木瓜形の美しさが際立つ作。透かし鐔には意味の不明な作例が比較的多い。筆者らは図に意味を見出そうとして図を探ることが多いのだが、そんなことは、作者は考えていなかったのかもしれない。デザインを優先したであろう図も多い。

格子に菱文図鐔 京正阿弥 KyoShoami Tsuba

2010-08-09 | 
格子に菱文図鐔 京正阿弥


格子に菱文図鐔 無銘京正阿弥

 角形薄手の隅に切り込みを設けた木瓜形の鐔。この角形の造り込みだけでも張りがあって強みが感じられる。鉄味は時代の上がる感があり、耳に小粒の鉄骨が現われている。格子の施されていない部分には毛彫で菱文と唐草文を組み合わせて瀟洒な風情を漂わせている。□

海鼠透に桐紋図鐔 京正阿弥 KyoShoami Tsuba

2010-08-08 | 
海鼠透に桐紋図鐔 京正阿弥


海鼠透に桐紋図鐔 無銘京正阿弥

 大振りの造り込みにして左右に海鼠状の大透を施し、天地に花をつける桐を配している。簡素な構成が魅力の鐔。桐は明らかに家紋を意匠しているのだが、常に見られる五三桐、あるいは五七桐ではなく、以外性があり、妙味があって面白い。

枝菊透図鐔 京正阿弥 KyoShoami Tsuba

2010-08-06 | 
枝菊透図鐔 京正阿弥


枝菊透図鐔 無銘京正阿弥

 時代の上がる長州萩の鐔工が透鐔の図柄として好んだのがこの図で、長州鐔では古萩(こはぎ)と呼ばれている。京の正阿弥派からの影響を受け、個性的な枝菊透の図柄へと変化したものと思われる。京透の洗練に鄙びた風情を加えたのが萩の魅力と言えよう。この鐔は、透かしの線に京の繊細さが漂う作で、京の正阿弥派と極められている。

菊花に猪目透図鐔 京正阿弥 KyoShoami Tsuba

2010-08-05 | 
菊花に猪目透図鐔 京正阿弥


菊花に猪目透図鐔 無銘京正阿弥

 菊花を印象深い意匠にした作。木瓜形に造り込んで四方に猪目を施しているところは古典的な太刀鐔の印象。木瓜形に菊花透も面白いが、これに猪目を加えて透かしに変化を与える感覚、簡潔な意匠の組み合わせだけで構成しているところも面白い。元来は金の布目象嵌が所々に施されていたであろうことが窺いとれる。

沢瀉透図鐔 京正阿弥

2010-08-04 | 
沢瀉透図鐔 京正阿弥


沢瀉透図鐔 無銘京正阿弥

 なんて素敵な造形でしょうか。好き嫌いはあると思うが、この曲線的な構成が優れている。下には川の水の流れ、左右非対称にして動きのある鐔面を創出している。鉄地を平坦に仕上げて毛彫を加えている。桃山時代の作と鑑ている。
 正阿弥派は幅広く歴史が古い故に分類が難しい。いずれの流派についても言えることだが、出来の優れたものから凡作まで幅広い。正阿弥派の名品は、意外なところに埋もれていることがある。

向団扇透図鐔 古正阿弥

2010-08-03 | 
向団扇透図鐔 古正阿弥


向団扇透図鐔 無銘古正阿弥

 デザインの優れた鐔。肉彫り表現により、団扇を巴状に簡潔に組み合わせている。彫口に強弱変化があり、図柄に動きが感じられる。鐔の文様というより、リアルな面が窺える。
 戦国時代に、このような意匠の優れた鐔を製作し、用いるなんて、改めて我が国の古のの人々の感性の鋭さにおどろかされる。

巴に琴柱透図鐔 古正阿弥 Kosyoami Tsuba

2010-08-02 | 
巴に琴柱透図鐔 古正阿弥



巴に琴柱透図鐔 無銘古正阿弥

 四方に波立たせた巴文を配し、左右の櫃穴を琴柱で装飾した、洒落た構成美の鐔。巴文は瑞雲であろう。琴柱は釣鐘のようにも見える。何て美しいのであろうか。錆の生じた鉄の塊を美しいと感じるのは我が国の武士だけであろうか、こんな感覚を大切にしたい。

糸巻に唐花透図鐔 古正阿弥

2010-08-01 | 
糸巻に唐花透図鐔 古正阿弥


糸巻に唐花透図鐔 無銘古正阿弥



 古典的な優雅な風合いを漂わせる作例。鉄の下鍛えも強みがあり、鍛得た鎚の痕跡が残る肌も鑑賞の要点。
 唐花は唐草と同様、シルクロードを経て伝来した文様の一つで、古い時代の貴族が用いた太刀拵などの装飾模様として知られている。これを戦国時代の刀の装飾に採るのだから、何とも洒落ている。実は、鎌倉時代を経て以降の太刀金具にはこの趣の文様があり、美観優れているところから、時代を超えて好まれたものと推測される。もちろん江戸時代に入ってからも、同種の文様は多々見られる。美しい構成の作である。□