酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

手作りの蝋細工

2008-07-22 11:25:08 | バーボンの話
「なにっしゃ、こいず。ボトルさぁ蝋人形こさえてるみてぇでねぇか」
「なんじょして開けんだべか?」
「蓋のところの蝋ばぁ削ればいいんでねぇのすか?」

蓋を開けるところから大騒ぎでした。
大学ゼミの呑んえべぇ仲間→しんぺい君(バーボンの達人)まるた氏(ことのほか強い!)そして酔漢(強くはないけどお酒大好き)と、酔漢の実家塩竈までやって来たのでした。
やはり、酒好きな叔父が一人、飛び入りでございました。(過去ブログ「カフェソコにて参照。昨年10月に他界)
「酔漢ちゃん。こいず。おもせぇ酒持って来たからっしゃ。バーボン呑むんだすぺ」
と、友人達が集っております、酔漢の部屋へ、このボトルに入った一本のバーボンを置いていったのでした。

話は元に戻ります。

「よし。蝋は取れたべ。んで呑んでみっぺし」

酔漢と「メーカーズ・マーク」との出会いでした。
「なんだや、木の香りがしねぇバーボンだな」と、しんぺい君。
「スコッチのフルーティーな方に味がちかくねぇ」と、まるた氏。
二人の感想は、本当の事なのでした。
僕らが経験しましたどんなバーボンより、一味も違うのでした。
最初に思ったのは「樽を焦がしていないのではないか」と言う事ですが、「樽を焦がしていなければ『バーボン』と表示できない」はずです。
「おれは、もっと香がググッツと腹にしみ込む方が、らしくて好きだな」と、しんぺい君が話してます。
「んでも、喉の奥についてくる香りは、上品な感じだな」とまるた氏。
「これが、バーボンだとしたら、どんな作りをしているのだろう」
率直な疑問でした。
なんだ、かんだ言って、やはりいつもの通り、呑みあけてしまいました酔漢一味でございます。

それから数十年。「明治屋様」とお話する機会に。
「『メーカーズ・マーク』ですか?弊社のパンフレットをお渡しいたします」
その中身は、と申しますと。。その時思った疑問が解決するほどの内容でした。
では、酔漢流のうんちくで?お話いたしましょう。

1780年。「ロバート・サミュエル」さんが、スコットランドからこのケンタッキーへやってまいりました。彼は、アイリシュでスコットランド人。ですから、スコッチのノウハウは、極めておりました。
「とうもろこしで作った酒は、かなり呑めるど」ということは、かなりメジャーになりつつある時期でございます。
「ロバート・サミュエル」さん、仲間内用に「バーボン」を作っておりました。
「んで、もう少しでけぇくしてみっか」と1896年には、しっかりとした蒸留所をつくり、本格的に生産を始めました。(孫の「T・Wサミュエル」さん)
ところが、やはり(避けては通れない話題です)「禁酒法」の影響をもろにかぶってしまいます。
一時、蒸留所を閉鎖に追い込まれるも、再び再興。小さな蒸留所は、お酒をつくり続けていくのでした。
その「T・Wサミュエル」さんから4代目。異端児登場。このお話の主人公を務めます「ビル・サミュエルズ、シニア」さんです。
「おらほの酒は、まずくはねぇ。だけんど旨くもねぇ。やっぱし、新しく酒さぁつくりはじめねぐてなんねぇっちゃ」と一代決心をいたします。
最初にやったことはと申しますと
「こんなもん、すてちまぇーーー」と先祖伝来の秘伝製法書の巻物全50巻(←これは作り話です・・)を燃やしちまった!
本当に一からバーボン作りを始める覚悟でございます。
「4代目は、気が狂ったっちゃ」周りはだれしもそういい始めました。
「ケンタッキーで収穫できる小麦ばぁ全部集めて、パンば焼いてけねすか?」
「酒作るんでねぇぐて、パンさぁ焼くのすか?」
「んだっちゃ。パンさぁ焼いてけね!」
「また、変な事はじめたっちゃ!」とパンを焼き続ける職人達。
「ビルさん」もひたすらパンを食べております。
ある日の事「こいずがいちばんうめぇっちゃ!」といくつかの試作品(パンです)の中から取り出しましたのが「冬小麦」で焼いたパンでした。(「冬小麦」→冬に収穫される小麦)
「こいずば使って酒ば作っちゃ」一つの答えが出ました。
そしてもう一つ。「あたらしい事すんだからっしゃ。新しい土地がいいべ」
と、蒸留所の土地を探します。
1953年。見つけましたのが「ケンタッキー州。ハッピーハロー(別名スター・ヒル)」ここの水もまた、石灰岩を通った湧き水(→ライムストーンウォーター)でした。廃屋同然の蒸留所を買い取りまして、本格的に酒作りを始めました。
頑固なこだわりはこれだけではありません。一度の生産量がたった19バレル。しかも、熟成期間が6~8年。本当に樽の管理が難しいのです。(「ブッカーズ」の12年熟成がいかに長いものか、この事でもお解かりになろうかと存じます)
「これで、採算が取れんのかや」周りはそれでも半信半疑。何一つ文句を言わなかった奥様「マージー」さんが助け舟を出してくれました。
「ボトルのデザインば任せてけねぇすか?」と。
彼女は、高級コニャックが瓶の蓋を蝋で固めているのを知っておりました。
「これば、マネしたらいいんでねぇ」と。そして、ラベルのデザインも彼女が手がけます。
ちょとマイナーリーグ所属の野球チームの帽子のデザイン風なこのラベル。
○の左下に☆→蒸留所のある「スター・ヒル・ファーム」
S→サミュエルズ家のS
Ⅳ→4代目のⅣ
手書きのようなラベルが出来上がりました。
ケンタッキーで一番小さな蒸留所。
瓶の先に固められております蝋の栓は、一つ一つ形が違っております。
マニアになりますと、「これは、誰が封をしたのか」が解るらしいです。
一本一本に個性が詰まったお酒です。

「しんぺい、結構呑んでんでねぇか」
「家に帰ったら『ワイルドターキー』で口直しだ」
「そんな事言ってや。気に入っているんだべ。まずい酒は途中で止めるおんなや。
やめねぇんだべ。」
「この独特な甘さと香は、この酒のものだな。バーボンであってバーボンでないみたいな・・・うーーん。旨いゾ」
「しんぺい。酒は浮気されたって怒ったりはしねぇべさ。ターキーはターキーのままだべ」
「それもそうだ」
「メーカーズ・マーク・レッド・トップ(蝋の色が他にも黒そして金があります)
45度」バーボンの価値感を確かめられる逸品です。

追伸
今週木曜日、仕事が入りました。今週は木曜日の分を本日更新いたしました。

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6 コメント

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ホホ~ (ひー)
2008-07-22 17:07:55
又一つ勉強になりました。
若い時代に、色んな酒にめぐり会えたからこそですね。
高校の頃がら、のんたんでねぇ~のすか?
バーボン…久し振りに買って飲んでみっかなぁ~…
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知ってたのすか! (酔漢です )
2008-07-22 17:47:55
ひー様へ
まんず、高校生の頃は少し。
呑めればなんでも良かった時代でした。
本格的には、やはり卒業してから。
ウィスキー文化。宮城県の恩恵?をしこたま受けた格好となりました。
宮城の地で育ってなければ、これほどウィスキーに愛着が湧いていなかったと思うのです。
ひー様はいかがでしたか?
返信する
ニッカ (ひー)
2008-07-24 21:34:54
ニッカもあるしね~
あそこの樹木はモルトの影響で黒くなってると聞いたことがあります。
確かに黒ずんでます。
ニッカの人がどこに工場を建てようかと、探してました。
地元の人にこの川は、何と言う川ですか?
と聞いたら新川(にっかだ!)と答えました。
ニッカの人はここしか無いと決めたそうです。
あの辺の地名も新川(にっかわ)なんですよね。
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川の合流で (酔漢です )
2008-07-24 22:28:45
ひー様へ
ニッカ宮城蒸留所の敷地では、「新川川」と「名取川」の合流地点が見られます。
「ゴロはいいよなぁ」とは思っておりましたが、単に偶然かと思っておりました。
ここにコメントを下さいます「ひげ親爺様」は、一般の人が呑む事ができない、ブレンド用のグレーンモルトをシングルで飲んだ経験があるとか。。
この味がこれまで謎だったのです。
行ったら、「座り込みをしてでも、頂きたい」と考えております。→本当です!
「ブラックニッカ」の香の謎を解きたいのでした。
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グレーンモルト (ひー)
2008-07-26 06:53:53
をシングルでどんな味何でしょう?
グレーンモルトってトウモロコシなどの穀物類も入るんでしたっけ?
ブレンドは余市の工場のものとブレンドすると聞いたことが、ここ数年鼻が悪くて香りが楽しめないでいます。
でもどうやってひげ親父さんは、呑むことが出来たのでしょう。ごね勝ちですかね?
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ニッカのところで (酔漢です )
2008-07-26 23:20:20
ひー様へ
ひげ親爺様からコメントを頂きました内容です。工場見学の際、副工場長が、飲ませてくださったとの事です。
ひげ親爺様はこれだけでも充分美味しいと、語ってくださいました。
ニッカの謎なんですよ。
サントリーは、グレーンにあまりこだわっていないようです。モルトは、超一流なんですが・・
このとうもろこしの出所が謎のままです。
せめて、宮城峡のグレーンを味わってみたいと思うのです。
こうなったら、皆して押しかけましょうか?
賛成の人!

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