「進笑」さんです。東北福祉大学落語研究会所属。「進笑」と名乗るだけあります。昭和の大名人「古今亭志ん生」師匠の噺に敬等しております。そして、落語をするために生まれたような体型と顔です。一つ、彼の特技ですが「酔っ払っていなくても、酔っ払ったように顔を赤くする事が出来る」というもの。「禁酒番屋」という落語は彼の十八番(おはこ)でございました。
本日は、「火炎太鼓」を話してもらいましょう。
この噺、先にも話しましたが、酔漢身につまされる思いで聴いております・・。
やはり日立ファミリーセンター。東北福祉大学落語研究会「旗上げ公演」です。
「これで仙台落研『御三家』(になったと、勝手に僕らはこう言っております→でもなぁ東北学院大学さんや東北大学さんとか違って、歴史がなかったもんなぁ、まぜてけさいん!状態ですよね・・)
この時、酔漢=あん好は「粗忽長屋」を選びました。
「進笑さん何選ぶのすか」
「今回か。今回はうーーん『火炎太鼓』にしようかと・・」
東北本線車中です。なして東北線かといいますと、進笑さん「花泉」からの遠距離通学だったのでした。そして「酔漢たまには東北線に付き合え」と言われ、電車賃を払いながら塩釜(新駅)まで帰るのでした。(新駅でおりすぺ、こまっつぁきまで歩くんでがすと)
「『志ん生』師匠、今の『志ん朝』師匠の十八番でねぇすか」
「だから、高座に掛けるんだよ。一度やって見たかった話だしね」
「進笑」さんの「火炎太鼓」は、「はまる事」が判りきっているとは言え、どれだけの完成度に仕上がるのか楽しみでしたし、何せこれだけの実力を持ちながら未だに人様の前で落語を披露したことがない人でしたのですから、内心「学院大や東北(とんぺい)の連中の驚く顔が見てみてぇっちゃ」と思ったのでした。
今回は「まくら」からまいりましょう。
落語に登場いたします「道具屋」ではございますが。今でいう「骨董品屋」とは違うんですね。骨董品とは、歴史上価値が高かったり、陶芸作家の作品等を取り扱っておりますが、「道具屋」は、そうではございません。「ごみ」とか申しまして、身近にあります、まぁ「中古品」に近いような物を集めまして、取り扱っていたそうでございます。
値札なんかも非常にあやしいものが多くございまして。
「こんちわぁ」
「家はねひやかし(しやかし)の客はお断りだよ」
「なんだよ、おい。最初(はな)っから、言うこたぁねぇじゃねぇか。いやね、何か面白いものはねぇか。って思って、店寄らさせてもらったのよ。何かねぇのかい?」
「そんじゃぁ、その棚の上の・・そうそう その手紙なんてぇどうだい?」
「これかい?よさそうだねぇ。こういうのは額に飾っておくといいんだよ。で、どんな謂れの手紙なんだい?」
「何でも、旦那。小野小町が野口英世に宛てた手紙なんでさぁ」
「おいおい、時代が違うじゃねぇか。そんな手紙があるわけがねぇだろ!」
「まったく素人だねぇ。あるわけないから、価値があるんでさぁ」
わけが判らなくなってしまいますが・・・
「まったく、お前さんときたら、あきれて物も言えないよ、本当に!商いする気があるのかねぇ!商売が下手過ぎるじゃないか。お客ばかり逃がしてんだよ!あぁ、やだね!こんな馬鹿亭主と一緒だとさ!」
「うるせぇなぁまったく。そうがたがた言わなくたって・・」
「言いたくもなるよ。今だってお客逃がしちまったじゃないの!」
「だっておい。客が『逃げるって』言って、帰っちまうし」
「じゃないよ!お前さんが逃がしちまったんじゃないか!あのお客はね、この箪笥、買おうとしてたんだよ『旦那、いい箪笥だねぇ』って言ったらお前さん何って言ったんだい『そりゃいい箪笥ですよ。何せ家に十六年もあるんですから』って。あの客、目が点になってたんだよ。十六年も家で売れ残ってますよって言っているもんじゃないか。『ちょっと開けてみていいですか』って聞いたときには何て言ったんだだい『この箪笥開けようとして腕くじいた人が何人もおります』って。おあまけに『こいつが開く位ならとうのとうに売れてます。なんだったっら、腕くじいたときの為に近くの接骨院の割引券もお付けいたしやす』・・・馬鹿だねぇ。んとうに!」
「そんな馬鹿、馬鹿ばっかし言ってんじゃぁねぇ」
「そうさぁ。売れないものばっか仕入れてきて、売れるものは仕入てこないじゃないか!この前なんか『おっかぁこいつは間違ぇなく売れる!』って何仕入れてきたかと思ったらぁ『徳川家康の尿瓶』だって。だまされて仕入れて来てるようなもんじゃないか!よぉぉく考えてごらんよ。そんなもんあるわけないだろ!他にも言ってやろうか!おまけに売っちゃいけないもの売っちまうし。『この火鉢、いい品だねえ』って、言われたもんだから、米屋の旦那に火鉢売っちまって!家に火鉢なくて寒い思いしたの忘れたのかい!寒いから米屋の旦那んとこにあたりに行って、『甚兵衛さん付きで火鉢買っちまった』って何回言われたと思ってるんだい。もうここんとこ、食べるもの食べてないから胃がすっかり運動不足になっちまった。少しはあたしの胃に運動させてみやがれ!」
「なんだぁ。ずいぶん言いやがったなぁ。亭主のする事にいちいち口出すんじゃねぇやい!」
「お前さんが一人前だったら何も言やしないよ!そうじゃないから言ってんじゃないか!今日は何を買ってきたんだい?」
「何でもないよ!」
「何でもないわけないじゃないか!見せてごらんよ!後ろに隠したってダメなんだよ!何してんのさお前さん。早くみせろ!やい!」
「おい!何だぁその『やい!』ってなぁ!うるせぇやい!」
「本当に、何仕入れてきたのさぁ!白状おし!」
(小さな声で・・)「太鼓(てぇこ)・・・だい!」
「馬鹿だねぇ!そんなもん今売れるわけがないだろう!際物なんだよ!後ろに隠してないで・・・ほら・・・・見せて・・・なんだい!この太鼓。本当に汚らしい太鼓だねぇ!お前さん、どうするんだいこんな汚い太鼓をさぁ!」
「売るよ!」
「売れないよ!どうするんだい!」
楽屋です。部長の「蟻巣屋米やん」さん(アリスの堀内さんを少しメタボにしましたら・・この人の出来上がりです。勿論髭がございます)が声をかけてきました。
「俺も長く進笑の話しを聞いてきたけど、かみさんが出てくる噺は初めてなんじゃないか?」
「そうなんですか?」
「『禁酒番屋』『浮世床』『大工調べ』とか・侍なんか、あの体と声だろ。様になるんだよな」
「それじゃ。これからが真骨頂ですか」
そうです、噺に集中している進笑さんの様子がわかります。
それと、彼の落語ノートですが。例えばこうです「ここの間1.2秒。上下切り替えし0.6秒」とか。練習時もストップウォッチで計る人でした。
本番中。僕は時計を見ながら、彼から頼まれて記録も付けているのでした。
本日は、「火炎太鼓」を話してもらいましょう。
この噺、先にも話しましたが、酔漢身につまされる思いで聴いております・・。
やはり日立ファミリーセンター。東北福祉大学落語研究会「旗上げ公演」です。
「これで仙台落研『御三家』(になったと、勝手に僕らはこう言っております→でもなぁ東北学院大学さんや東北大学さんとか違って、歴史がなかったもんなぁ、まぜてけさいん!状態ですよね・・)
この時、酔漢=あん好は「粗忽長屋」を選びました。
「進笑さん何選ぶのすか」
「今回か。今回はうーーん『火炎太鼓』にしようかと・・」
東北本線車中です。なして東北線かといいますと、進笑さん「花泉」からの遠距離通学だったのでした。そして「酔漢たまには東北線に付き合え」と言われ、電車賃を払いながら塩釜(新駅)まで帰るのでした。(新駅でおりすぺ、こまっつぁきまで歩くんでがすと)
「『志ん生』師匠、今の『志ん朝』師匠の十八番でねぇすか」
「だから、高座に掛けるんだよ。一度やって見たかった話だしね」
「進笑」さんの「火炎太鼓」は、「はまる事」が判りきっているとは言え、どれだけの完成度に仕上がるのか楽しみでしたし、何せこれだけの実力を持ちながら未だに人様の前で落語を披露したことがない人でしたのですから、内心「学院大や東北(とんぺい)の連中の驚く顔が見てみてぇっちゃ」と思ったのでした。
今回は「まくら」からまいりましょう。
落語に登場いたします「道具屋」ではございますが。今でいう「骨董品屋」とは違うんですね。骨董品とは、歴史上価値が高かったり、陶芸作家の作品等を取り扱っておりますが、「道具屋」は、そうではございません。「ごみ」とか申しまして、身近にあります、まぁ「中古品」に近いような物を集めまして、取り扱っていたそうでございます。
値札なんかも非常にあやしいものが多くございまして。
「こんちわぁ」
「家はねひやかし(しやかし)の客はお断りだよ」
「なんだよ、おい。最初(はな)っから、言うこたぁねぇじゃねぇか。いやね、何か面白いものはねぇか。って思って、店寄らさせてもらったのよ。何かねぇのかい?」
「そんじゃぁ、その棚の上の・・そうそう その手紙なんてぇどうだい?」
「これかい?よさそうだねぇ。こういうのは額に飾っておくといいんだよ。で、どんな謂れの手紙なんだい?」
「何でも、旦那。小野小町が野口英世に宛てた手紙なんでさぁ」
「おいおい、時代が違うじゃねぇか。そんな手紙があるわけがねぇだろ!」
「まったく素人だねぇ。あるわけないから、価値があるんでさぁ」
わけが判らなくなってしまいますが・・・
「まったく、お前さんときたら、あきれて物も言えないよ、本当に!商いする気があるのかねぇ!商売が下手過ぎるじゃないか。お客ばかり逃がしてんだよ!あぁ、やだね!こんな馬鹿亭主と一緒だとさ!」
「うるせぇなぁまったく。そうがたがた言わなくたって・・」
「言いたくもなるよ。今だってお客逃がしちまったじゃないの!」
「だっておい。客が『逃げるって』言って、帰っちまうし」
「じゃないよ!お前さんが逃がしちまったんじゃないか!あのお客はね、この箪笥、買おうとしてたんだよ『旦那、いい箪笥だねぇ』って言ったらお前さん何って言ったんだい『そりゃいい箪笥ですよ。何せ家に十六年もあるんですから』って。あの客、目が点になってたんだよ。十六年も家で売れ残ってますよって言っているもんじゃないか。『ちょっと開けてみていいですか』って聞いたときには何て言ったんだだい『この箪笥開けようとして腕くじいた人が何人もおります』って。おあまけに『こいつが開く位ならとうのとうに売れてます。なんだったっら、腕くじいたときの為に近くの接骨院の割引券もお付けいたしやす』・・・馬鹿だねぇ。んとうに!」
「そんな馬鹿、馬鹿ばっかし言ってんじゃぁねぇ」
「そうさぁ。売れないものばっか仕入れてきて、売れるものは仕入てこないじゃないか!この前なんか『おっかぁこいつは間違ぇなく売れる!』って何仕入れてきたかと思ったらぁ『徳川家康の尿瓶』だって。だまされて仕入れて来てるようなもんじゃないか!よぉぉく考えてごらんよ。そんなもんあるわけないだろ!他にも言ってやろうか!おまけに売っちゃいけないもの売っちまうし。『この火鉢、いい品だねえ』って、言われたもんだから、米屋の旦那に火鉢売っちまって!家に火鉢なくて寒い思いしたの忘れたのかい!寒いから米屋の旦那んとこにあたりに行って、『甚兵衛さん付きで火鉢買っちまった』って何回言われたと思ってるんだい。もうここんとこ、食べるもの食べてないから胃がすっかり運動不足になっちまった。少しはあたしの胃に運動させてみやがれ!」
「なんだぁ。ずいぶん言いやがったなぁ。亭主のする事にいちいち口出すんじゃねぇやい!」
「お前さんが一人前だったら何も言やしないよ!そうじゃないから言ってんじゃないか!今日は何を買ってきたんだい?」
「何でもないよ!」
「何でもないわけないじゃないか!見せてごらんよ!後ろに隠したってダメなんだよ!何してんのさお前さん。早くみせろ!やい!」
「おい!何だぁその『やい!』ってなぁ!うるせぇやい!」
「本当に、何仕入れてきたのさぁ!白状おし!」
(小さな声で・・)「太鼓(てぇこ)・・・だい!」
「馬鹿だねぇ!そんなもん今売れるわけがないだろう!際物なんだよ!後ろに隠してないで・・・ほら・・・・見せて・・・なんだい!この太鼓。本当に汚らしい太鼓だねぇ!お前さん、どうするんだいこんな汚い太鼓をさぁ!」
「売るよ!」
「売れないよ!どうするんだい!」
楽屋です。部長の「蟻巣屋米やん」さん(アリスの堀内さんを少しメタボにしましたら・・この人の出来上がりです。勿論髭がございます)が声をかけてきました。
「俺も長く進笑の話しを聞いてきたけど、かみさんが出てくる噺は初めてなんじゃないか?」
「そうなんですか?」
「『禁酒番屋』『浮世床』『大工調べ』とか・侍なんか、あの体と声だろ。様になるんだよな」
「それじゃ。これからが真骨頂ですか」
そうです、噺に集中している進笑さんの様子がわかります。
それと、彼の落語ノートですが。例えばこうです「ここの間1.2秒。上下切り替えし0.6秒」とか。練習時もストップウォッチで計る人でした。
本番中。僕は時計を見ながら、彼から頼まれて記録も付けているのでした。
午前中に喫茶店に入ったら、午後もそうで、
後は部室にいて・・・最後は飲み会だったり。
でもそんな時間も意外に貴重だったり、今にして思ったりします。
たんたんと語っておりますが、落語の練習は、「きつかったぁぁ」のでした。
落語も芝居も、よくおいで下さいました。
その節はありがとうございました。
芝居をやったのも、実は落語が縁のところもありまして
ある演劇部の部員から
「役者は噺家の役はできるけど、噺家は役者の役は出来ない」と言われたのも一つの動機だったのでした。
でも、スイッチの入れ方が全く違いました。
この話しは後程です。
では、また!
いつも思うのですが、それぞれの芸が素晴らしくて、「親父さんの・・」とは誰も言いません
ところで「火炎太鼓」ですが、初めて聴いたのが小学校三年生の時、「志ん生」師匠でした。
副題が「かえんだいこ」と平仮名にしております訳がございます。
次回の更新でその意味がお解かりいただけるかと存じます。→落語並みに笑えます!
すみません、とぎれとぎれにコメントへの返事を書いております。
そうなんですよ、彼のネタ帳はメモだらけ。
ある日、同じネタ帳なのに、赤字と青字と分けて数字が書いてありました。
彼に聞くと
「赤が志ん生師匠で、青が志ん朝師匠の間の間隔」と言っておりました。
落語をここまでデジタルにデータ化した人を見た事がありません。
そりゃ、確かに特技だわ。
まさかホントに酔っ払うわけにもいかないし。
噺家や俳優の凄いのは、
シラフで酔っ払ったふりができること。
ホントは泣いてないのに、
泣いてる演技ができることだと思います。
でも感情過多だと、観客は白けてしまいます。
自己抑制も効いてないと駄目なんですよね。
しかも噺家は、一人で何役もこなし、
小道具は扇子と手ぬぐいだけ。
たった二つの小道具で
何の真似でもやっちゃうんだから、
つくづく「凄いな」って思います。
そういえば酔漢さん、大学では演劇と落語と
両方やってましたよね。
しかもどっちも創部にかかわってたんじゃないですか。
考えてみれば、それも凄いことですよ。
日立ファミリーセンターに
酔漢さんたちの公演を聴きに行ってた頃のことを思い出します。
この間の電話、身につまされましたよ。
書き込み少なくて、ゴメンナサイ。
どうか御許しあれ~~~
何度か「しやかし」たことはありますが、混沌とした店内、いったい何を売りたいのか・・・
作家ものではない、古い焼き物目当てで、また覗いてみようかと思います。
大学への通学路には古本屋が並んでいました。
神田に次いでの古本屋街です。それだけでもありがたい大学でした。
けれども、「しやかし」始めると、「あと、もう一軒!」の連続で、なかなか大学にたどり着けません。
授業に間に合わず、結局はサークル部室に入り浸り、そんな大学生活でした。
落語昭和の名人2/五代目古今亭志ん生
お題は「火焔太鼓」「替り目」「唐茄子屋政談」
志ん朝の歯切れのよさとは一風違う飄げた語り口と
どうかすると本人の呂律がまわってないのか、それとも人物がヨレヨレなのか・・・
よく分からなくなりながら聞いていると、
だんだんしっかりした地口の間のよさが腑に落ちてきます。
このシリーズ隔週刊で26分冊あるらしいけど、
止めらんねぐなっつまうぅ・・・かも
んんんッ!次は小さんだぁ~!
顔を自由に赤く出来るのも凄いですね。
間を記録するのはかなり難儀では・・・
とことんこだわるタイプなんですね。
後半楽しみにしています。