酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

陸前・陸中・陸奥・・・・三陸。

2013-09-04 07:09:21 | 東日本大震災
「清水に・・・・付き合ってくれない?」と、次男。
「何で?」と、酔漢。
「休みよね」と、家内。
急に言われても・・・である。
確かに、休みは・・休みだが・・。
「こんな炎天下だから、ガーデンには行かないけれど。清水に行く理由って?」
「オープンキャンパスって知ってる?」
そう言えば、最近よく聞く単語です。
「受験生に大学を公開して、事前に説明会を行うというもの」こう理解してよろしいのかと。
僕等の時代には、あったことはあったけれど、今みたいに大大的ではなかったし、酔漢自身は参加した経験はございません。
親としては恥ずかしいのですが、「受験する大学位自分で見つけるもんだ!」と言ってはおりましたが、実際、次男が「どこをどうして何を学ぼうとしているのか」。
こんな事すら詳しくは、知らないのでした。
「清水の大学と言えば・・・あの学部だよな」
「あれ?親父も知ってたんだ」
「あの船は・・良い船だよな」
「望星丸・・知ってた?」
「あの実習船は有名だろ」
「そう、あれで勉強したいんだ」
初めて、しっかり聞いたような気がいたしました。
「解った・・でだな・・その日って『望星丸』の見学はできるのか?」
「親父はやっぱり、そこに来ると思った。もちろんのロン!」
「じゃぁ!行く!」
正直、一人の受験生に親が二人というのも、過保護のように見られないかとも思うのですが。
これは、本人がそう受け取ってないという事と、酔漢の目的が、やはり船の見学ですから。
かみさんは「しっかり小論文の対策を聞いておかなきゃ」と。
母親だなぁ。
清水へ向かいました。

「くだまき」リスナーの皆様であれば、「酔漢さんの事だから、このまま船の話題に突き進むのだろう」とお考えの事と拝察いたしますが、本日の題名が「・・・三陸」であって、カテゴリーが「東日本大震災」であることを思い出してくだされば幸い。
確かに「船の見学だけで、海でも眺めておこう」と思ってはおりましたが、その学科の説明会での出会いが大きかったのです。
これが、本題なのです。


「海洋地球科学科」このブースへ入りました。
次男はこの一角にある「深海の資源鉱物」の説明に興味があったようなのですが、そこは酔漢、ぶらついております。と、上記のような写真が目に入りました。
「釜石・・唐丹の堤防・・」
ふと、唐丹町の「しんぺい」を思い出します。
昨年12月23日の「くだまき 祝」で語っております。彼から届いたアワビのあの味も思い出しました。
一人の先生がそのブースでパンフレットを配っておりました。
「これは、釜石、唐丹の写真ですが、被害の様子ですよね。何を研究されているのでしょう?」
「唐丹、ご存知なのですか?」
「友人が一人この唐丹で被災しておりますし、私は宮城、塩竃の出身ですから、この写真の場所場所はよく知ってます」
「宮城であれば、御実家の被害などは・・?」
「幸い、高台でしたので、実家そのものは無事ですし、母も元気ですが、やはり一歩海沿いへ出ますと、まだ爪痕は残っている状態ですよね」
「まったく、おっしゃる通りです。先週、釜石唐丹、そして大船渡、気仙沼の調査から帰って来ましたが、やはりまだまだなのです」
その調査の様子がこの写真です。


この写真だけでは、何をどうのように調査しているのか解りませんよね。
ところでこんな言葉をお聞きになられた事はございますでしょうか。
「東北マリンサイエンスプロジェクト」略して「TEAMS」という官民一体型の事業です。
酔漢が訪ねております「東海大学海洋学部」も参画しております。
恥ずかしながら、酔漢はこの日までこのプロジェクトの存在を知りませんでした。

説明してくださったのは東海大学海洋学部海洋地球科学科「坂本泉」准教授です。
「僕たちは、震災後の漁業資源の状態、状況とその変化。そして、今後考えられる復興事業が漁業資源、生物の生活環境にどう影響するかシュミレーションしているんです」
「先生の御専門ではないような・・」
「そうですね、私はどちらかと言うと『地質学』ですから、でも、その視点でもって海底地形が資源確保に関わっているので、私の研究チームの視点も不可欠なのです」
なるほど、これには納得しました。
ここで少し「東北マリンサイエンスプロジェクト」の概要を説明いたしましょう。

3月11日(この事業が発足した2011年時点での説明文です)大地震と巨大津波により、多くの恵みをもたらしてくれる海の中も大きく攪乱されました。多量のがれきの蓄積、生物生息の場である藻場や干潟の喪失、岩礁への砂泥の堆積、地盤沈下による陸と海の移行帯の破壊、さらには重油や放射性物質などの海域への拡散あんどにより、海洋生態系や海洋環境がどのようになっているのかが全く不明な状況となっています。
漁業や水産業の復興、そして地域の再生のためには、その調査と、新たな産業創成が不可欠な事態になっています。
このプロジェクトは東北大学が代表研究機関、東京大学大気海洋研究所(AORI)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が副代表研究機関となり、北里大学、東京海洋大学、岩手大学、東海大学の協力を得て、「東北マリンサイエンス研究連絡会議」を形成。4つの課題により、海洋環境・海洋生態系への影響調査研究に取り組んでいます。
①漁場環境の変化プロセスの解明
②海洋生態系変動メカニズムの解明
③沖合海底生態系の変動メカニズムの解明
④東北マリンサイエンス拠点データ共有・公開機能の整備運用






「官民どころじゃないですね。海洋に関わるオールジャパン的な事業ですね。地元(塩竈市)の企業『㈱度会』の名前や『㈱理研 多賀城』も見られますし・・」
「そうなんです。参画している団体が多いので、その得意とする分野での調査研究(バッティングしないように)と実際のデータの共有が肝要ですね」
「坂本先生のチームではどのような事が解って何をしようとしているのですか?」
「ウニやアワビの稚貝や幼生は70%も減少していることに驚きました。また魚類の餌となる海藻の群落が喪失。これは数値化できません。干潟もそうで60%~70%生物種が喪失してます」
蒲生干潟の惨状を思い出しました。
「現在は海底のがれきが移動していて、特定の場所(海流他の影響とお聞きしました)に集積している傾向が解って、そのガレキ周辺にあたらしい生態系が形成されています」
「この状況は望ましいものなのでしょうか?」
「こればかりは・・・今後の推移を注視する必要は大いにありますし、これは継続的な調査が必要でしょうね・・」
その通りだと考えます。
でも、大きな問題があるのです。
「時間はあります(次男は何やら実験に参加させていただいて、もう夢中な様子。家内は親のセミナーから戻ってませんし・・)。もう少しお聞かせねがえませんか?」
「我々の一部、地球環境学科も参加しているのですが『地震防災研究戦略プロジェクト』が提案した防潮堤計画がそうなのです」
「防潮堤はあった方がよろしいのではないのですか?」
「単に防災だけを考えるのであれば、そうかもしれませんが、生態系の影響を考慮すると、そうも言えません」
少し、その後の坂本先生のお話しをここでご紹介いたしましょう。
防潮堤を海底より例えば海面より高さ20mとした場合、まずは、建造物としては、そのボリュームは世界最大級となります。これが、陸中沿岸部主要に建造されると、例えば川から流れてくる淡水などが、沖合に首尾良く流れなかったりすることが想定されて、これまでと違った生態系となることが推察されます。その漁業に与える影響は大きいと考えられ、現在、漁業以外の産業が全く考えられない状況(むしろ、漁業の復活がそのベクトル)であれば、最低限の防潮堤が望ましいこととなるというものです。
「実際、地元の人はどのように考えているのでしょうか・・」
「唐丹の人達との会話ですが、『津波は怖いし、被害もあるのだが、漁業なくして産業はない。また豊かな海で働きたい。』と言った意見が殆どだった・・」
しんぺいの言葉もそうだった「早く漁が再開してもらいたい」と。
「そうした調整を国は行おうとしているのでしょうか?」
「復興庁が調整するものとばかり思っていたがね・・結局は各省の思惑が先行しているのが実態じゃないかな・・」
やはり、利権がからんでの復興事業なのか。
「ひとつだけ、今言えることがあるんだ」
「何でしょう」
「今まで、漁業をしていた人は、海からの恵みが一番だと考えている。これは確信したんだ。例えば『また津波が来たら』と質問するだろ、そうすると『津波はいつかまた来る。命が無事であるような仕組みであれば、それ以上の物は必要ない。漁業の邪魔になるものは困る』と口をそろえて言っているんだ」
防災と漁業産業。その両立が三陸の発展に繋がるのだろう。
それにしても、復興の遅延がまたしても露呈している事実に唖然とするばかりなのだ。
「ありがとうございました。ではまたお会いいたしましょう」と私がその場を去ろうとすると。
「実は・・福島沖の調査から帰って来た別な教授がですね・・」
「福島沖ですか?」
「そうなんです。少しづつ下がってきた放射線量が、下げ止まり、しかも少しづつ増えていると言うのです」
「おかしいじゃないですか?東電も開発機構もそんな発表してませんし・・」
「考えれる事は・・」
「何でしょうか?」
「汚水の漏れが明らかだと・・」
「まさか!本当なのでしょうか。だとすれば・・」
「私の私見なのですが・・日本は被爆国であるけれど、その逆も行ったという事になる・・・こう考えます」
「・・・・・・」
「この数値は国は知っているのですか?」
「もちろん、提供はしてますし、地元の漁業関係者にも配布してます」
「反応は?」
「国は目下調査中だけです。漁業の人は、『絶対に公開するな!』と」
「・・・・・・」
酔漢、どのようにコメントしたらよいのか、その日、言葉に詰まりました。
その後の顛末は皆様報道で良くご存知の事です。
その報道がなされる前。8月9日の事でした。

「おまたせ!結構入学してからの説明は有意義だったよ」家内が戻ってきました。
「まだ、入るって決まってないのに・・そこまで準備するものなのか?」
「今はね、どこの私学もそんな感じよ」
「親父、どうだった?船は?」
「望星丸は良いなぁ。デイーゼル2機。2174tの排水量。手入れもいいし・・乗りたいよねぇ・・」
ですが、多くの事を得る事ができた「東海大学海洋学部」のオープンキャンパスでした。
「お前、海に出るのか?」
「海だよねぇ。それ以外考えてない・・」
「そうかぁ・・」
祖父、叔父。船とは縁が切れない我が家になりそうです。

「くだまき」だよなぁ。今日は・・ね。

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藤沢は暑いです (ゴエモン)
2013-09-04 12:40:32
私用で藤沢におります。息子は寝過ごし約束の時間に来ません。
なので、以前、住んでいた周囲を歩いてみました。
激変です。トポスが消えた、マンションが多い…20年前のことです、藤沢も駅前から一歩、入ると案外、のどかでした。汗だくになり、休憩しながら酔漢様のブログを拝読させて頂き、またビックリ。
我が家の息子も学部こそ違いますが今春から東海大学に通っております。ブログの内容とあまり関係のないコメントで申し訳ありません。
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こんばんは (見張り員)
2013-09-04 20:28:11
オープンキャンパスで大変意義のある時間が持てましたね!
しかしあの衝撃の事実を先に知ってしまったわけですね。
あれはまさに衝撃の一言です・・・

ああ、私が受験生ならここも見に行きたかったなあ~。うちは次女が来年進学で今からどこの学校がいいか考えている最中です^^。
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波高し。 (すず)
2013-09-04 21:13:30
 今晩は。

次男様の望むように、進学できると好いですね。うちの次男は、相変わらず長男の後を追うようです。

被災地を支援したいという気持ちと、実際の被ばく状況を恐れるというのは違うわけで。私は、国が全力でこれ以上の被ばくを防ぎ、廃炉を勧める事を強く願っています。
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希望の光 (なん)
2013-09-05 11:34:13
原発からの放射線漏れについての話、やはりという感じがしました。8月に入り、海に放射線が流れ出ている可能性があるというニュースが気になって仕方ありませんでした。
民主政権時の正確な情報公開の遅れを指摘し、政権交代をした与党、二の舞は踏まないことを願うばかりです。
また防潮堤について、地元の漁民と地元自治体側の見解や意識のずれがあり、なかなか簡単には前へ進まないようです。一刻も早く、双方の利権抜きの歩み寄りと総合的、長期的な見方で最善策を見出してほしいものです。
特にこのような外郭研究機関の調査や研究は大変重要になってきますね。
安心して暮らせる環境を取り戻せることを切望します。
頭の中が不安だらけになる最中、オープンキャンパスでの酔漢ファミリーの一コマ、思わず顔がほころんでしまいました。
御子息の進みたい道が開けるといいですね。なんだかこちらまで、希望の光が射してきたみたい。思わず母さん世代は応援したくなっちゃいます!
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ゴエモンさんへ (酔漢です)
2013-09-06 09:53:35
藤沢にいらしてたのですね。
ゴエモンさんのいた頃というかここニ、三年で街並みが急に変わりました。
トポスはダイエーに低い建物になってますし・・お騒がせのあのマンションは無くなりましたし。
ご子息がそうですか!
嬉しい限りです。ってまだ何も決まってませんですが。
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見張り員さんへ (酔漢です)
2013-09-06 09:56:47
船いいよねぇ。
一年生で一泊。二年生で二泊三日。と全員船でオリエンテーションがあるそうです。
ある親がですね「顚覆の怖れはないのですか?」と真顔で聞いておりました。
決してトップヘビーではない復元性重視の船ですね。
上甲板のチークは武蔵と同じ材質です。板一枚8万円だそうです。
船の話しばかりでした。((^_^;)
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すずさんへ (酔漢です)
2013-09-06 09:58:25
おっしゃるとおりですね。
同感です。
オリンピックで突っ込まれる外国メデイアをシュミレーションできないという事は、世界の情報に遅れているという事を露呈させてしまいました。
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なんちゃんへ (酔漢です)
2013-09-06 10:01:11
今年から10年間の自動延長となるそうです。
ある程度の結論がでるまでこの事業の継続が決まりました。多くの視点で、三陸の再興に役立てるようにして頂きたいです。
我が家は・・のんびりデス。
長男は、清水まで車で出掛けて、キャンパスを見てきたようです。
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誰かの願いが叶うころ あの娘が泣いてるよ みんなの願いは同時には叶わない (ある友人)
2013-09-06 19:03:35
ご子息は大学合格するといいですね。大船渡市にあった北里大の海洋生命科学部は、キャンパスの再興を諦めて同市を離れるようです。やむを得ない判断なのでしょうが残念な気がします。

防潮堤の問題は北海道南西沖地震で津波に襲われた奥尻島の現状が参考になります。島の周囲には高い防潮堤が作られましたが、海はいわゆる磯焼け状態になり、名産だったアワビなどが激減してしまいました。奥尻島の状況など知るにつれて漁業者から極端な規模の防潮堤には反対運動が起こっています。

たとえば宮城県気仙沼の唐桑町舞根では、建設が予定されているおよそ15メートルの防潮堤に反対していますが、反対と言っても行政との話し合いの末に妥協案を探ろうとするもので、たとえば防潮堤はこれまでと同じ程度のものを作る代わりに居住地は高台に移動し、津波から逃げるための道路や施設を作ろうというものです。岩手県では自治体と住民とでそのような話し合いがなされ、すでに百パーセント計画がまとまっていますが、宮城県は知事が強硬で住民側に妥協しないためまだ六十九パーセントしかまとまっていません(河北新報による)。知事は同時に漁協の集約と企業の漁業参入促進を掲げています。いわば震災を機会に漁業のリストラを考えているようなのでなかなか妥協しないでしょう。

そんな中、自然の浄化力というのはすごいと思わされるのが蒲生干潟です。地形が津波で変わってしまうほどの被害を受けましたが、渡りの季節にやってくるシギやチドリら野鳥の数が回復しつつあります。それは餌となるゴカイ類や貝類が増えている証拠であり、干潟の機能が回復傾向にあるという事でもあります。仙台市福田町にガン類の飛来地だったのに、国道4号バイパスを作った途端に来なくなった事実を考えれば、環境変化に敏感な野鳥たちがこれほど戻って来ているのは驚きです。秋の渡りの季節が楽しみです。

福島原発の汚染水漏れは、これから永遠に近い時間つきあわねばならない問題の一端に過ぎないと思います。そもそも高レベル廃棄物ならばフィンランドでは十万年保管する計画です。つまり日本もどこかにそれだけの年月、安全に保管出来る場所と技術を必要とするわけですが、ほぼ地震のない北欧と日本とでは比較にならないほど難しさに差がある。我々はそういうものをホモ・サピエンスがアフリカを出た時から今日までの長さと同じ期間、ずっと安全に保管しなければならないという事実を改めて考えてみる時かと思います。
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Unknown (ジュリーママ)
2013-09-07 15:52:21
とても有意義な体験をご紹介いただき、有難うございます。
建造物の生態系への影響は、とてつもなく大きいものだと思います。震災の遥か以前の蒲生干潟でも、港湾設備や沖防波堤建設で、地形も、飛来する野鳥の種類も様変わりしてしまいました。それだけに、防災と豊かな海を取り戻すこととの両立は難しいと思いますが、こうして英知を結集したプロジェクトが進んでいることは心強いですね。
後は「政治」の問題ですが...

息子さんの希望校への進学がかなうよう応援しています!
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