この落語会には登場しておりませんが、「ほうとく」君はどちらかと言えば、「演劇人」教育大学の公演で(清水邦夫作)主役を務めたこともある実力派です。
彼との会話です。
「酔漢さぁ、この前帰りのバスで幸良州と一緒になって、こんな事、話してたんだ。『鰍沢ができないか』って・・お前どう思う?」
「『鰍沢』すか!覚えるだけでも大変なんでねぇかや。アマチュアレベルでやったのは聞いた事ねぇべ。」
「俺もだ。でも、そこそこ覚えたとも言ってたな。あとは表現の部分だって・・そう言えば『たがや』のときもそうだった『侍の首をはねる最後のところで、どうやって刀(かぜ⇒扇子)を振り回したらいいのか』って聞かれて・・円楽師匠のしか見た事なかったから、それをそのまま伝えたんだけど・・」
表現のリアルさにこだわる「幸良州」君でした。
「カステラとは・・・しかして、どう使うんだい?」
「横丁の菓子屋へまいりましてね。そこの半纏から何から借ります。で、このごろカステラという菓子がございまして、折をこさえていただきます。中のカステラを出しちまって、その中に五合徳利を二本、その折に詰めます。よく蓋をしまして、水引をかけまして『近藤様へカステラのご進物をお持ちいたしました』と言って持って行くんです。これなら御門を通れます」
「そうそう、上手くいくかい?」
「大丈夫ですよ。番頭さん。やらしてください」
「ええ、お願いでございます」
「これっ!いずれへ、まいるのだ?」
「近藤様のお小屋へまいります」
「なんだ、そのほうは?」
「へぇ、むこう横丁の菓子屋にございます。近藤様へカステラのご進物でございます」
「カステラとな?ふーーん(隣にいる同僚の侍にむかって)御同役、変われば、変わるものでございますなぁ。家中屈指の大酒呑みに、カステラの進物とは・・あぁ、これ、菓子屋」
「へぇ、通ってもよろしゅうございますか?」
「いや、待て!役目によって一応取り調べる。その折をこれへ出せ!」
「いえ、それは困ります。ご進物でございます。中を開けられますと、困ります」
「何?進物とな。それならば、カステラであるから、検めるには及ぶまい。よいから持ってまいれ」
「えっ?」
「よいから持ってまいれ」
「へぇ、ありがとうございます。間違いなくこれはカ・ス・テ・ラでございます・・・どっこいっしょ・・っと・・」
「まて!待て、菓子屋!」
「へぇ?」
「そちは、今、何と申した?その折を持つ際に『どっこいしょ』と申したな?カステラという菓子、差ほど重い物ではござらんな!」
「い・え・・・その・・それは・・・あっしの口癖でございます・・めしにしようか、どっこいしょ!湯につかろうか、どっこいしょ・・・」
「これ!何をくだらん事を申しておる!早く、折をこれへ出せ!これへ出せと申すに・・(折を取上げる様子)うん、これか・・なるほど、これは重い。どっこいしょと言いたくなるものだ!・・・・ひかえておれ!・・中身を取り調べるによって・・これ!ひかえておれ!・・只今、この折を開いて(中身を開ける)・・と・・なんじゃ?これは!徳利ではないか!」「へぇ・・それが・・つまり・・へぇ徳利で・・」
「徳利は判っておる!徳利の中に入っているカステラがあるか!」
「いえ、それが、あるんです。へぇ・・・新しく出来ました『水カステラ』という奴でございまして・・」
「『水カステラ』とな?たわけた事を申すな。一応役目である。あらためるによって、・・ひかえておれ!・・これ、門番、湯のみをもってまいれ。中身をあらためる。・・ひかえておれ!・・確かに水カステラだな?これなる湯のみについで・・・・うーんこれは、なかなか・・いけるわい・・御同役、いかがでござる?水カステラを一つ・・」
「ほう、水カステラであるか・・うーーーん。よい香じゃ。久しくやらんでな。いや、恐縮千万・・こりゃ旨い!まことに、結構な水カステラで・・」
「さようでござるか。手前、一杯では味がわかり申さん。茶碗がおあきになったら、拙者に貸してくださらぬか・・・ひかえておれ!・・・まだ、調べがついておらん!御同役、しかして、町人などという者はまことにおろかでござる。かような作り事をいたして、我々の目をごまかそうなどとは、いやはや、誠に、笑止千万。これ!町人、けしからん奴だ。かように結構な水カステラ・・いやかようなカステラなどあるか!・・こ・・こな・偽り者めが!はよう立ち去れ!」
「へぇっ!」
「どうしたい?」
「行ってきやした」
「行ったのわかってる。行ったから帰ってきたんだろ?どうだったんだい?」
「へぇ、最初(はな)はとんとんって行ってたんですがね。あたしが、うっかり『どっこいしょ』って、口滑らせちまって・・包みをひったくられちまって・・」
「え?『どっこいしょ』だって?カステラだよ!『どっこいしょ』はまずかったな」
「ええ・・それで、中身を調べられて徳利が出てきちまった・・」
「おい!しょうがねぇなぁまったく!で、どうしたい?」
「なんだと聞かれましたから、『水カステラ』だって・・」
「えっ?水カステラだって?」
「すっかり、ばれちまって、がぶがぶ呑まれました。『かようなカステラがあるか!偽り者めが』ってんで・・さよなら!」
「おいおい、だから、およしって言ったんだ。偽り者と言われて、がぶがぶ呑まれたんじゃぁ・・くやしいじゃないかぃ」
「番頭さん、じゃぁ今度はあっしが、間違いなくお届けを・・・」
「およしよ!どうせまた、中身をあらためられるんだろ!すぐに、中身が何かわかっちまうんだから・・」
「いいえねぇ、なまじ中身を隠すからばれちまうんでさぁ。あっしは折なんかに入れないで、徳利のまま、ぶら下げて行きやすんで・・・」
「それじゃぁ、一升呑まれに行くようなもんじゃないか」
「ですからね、隠すからいけねぇんでしょ?あっしはね、油屋になって行きますから・・これを油徳利にしましてね。堂々と『油でございます』って持っていきます。いえいえ・・心配しなくても、大丈夫ですから、やらして下さい」
てなわけでございます。一升徳利に酒を詰めましてね。徳利の外には油を塗りました。油の栓までして、油の紐までくくりつけたのですから、どう見ましても油の入った徳利に見えます。
「俺のもそんな事言ってたっちゃ。『居合いでもやってみようか』って。幸良州の話しって侍がらみが多いのが特徴だべ。侍の雰囲気出すのに苦労してたっちゃ。んでも、俺は、そこまでこだわることはねぇなや。幸良州らしいっちゃ」
この、番屋の侍が、中身をあらためるうちにだんだん酔っていくのが、難しい表現です。ことばで途中ででてくる「・・ひかえておれ!・・」のタイミングがポイント。このつぼを外しますと、単に、時代劇になってしまって「落語」のおかしさは伝わりません。たんたんと噺を進めているように見えますが、客席はこの段階でも「笑いの渦」に包まれていたのでした。
彼との会話です。
「酔漢さぁ、この前帰りのバスで幸良州と一緒になって、こんな事、話してたんだ。『鰍沢ができないか』って・・お前どう思う?」
「『鰍沢』すか!覚えるだけでも大変なんでねぇかや。アマチュアレベルでやったのは聞いた事ねぇべ。」
「俺もだ。でも、そこそこ覚えたとも言ってたな。あとは表現の部分だって・・そう言えば『たがや』のときもそうだった『侍の首をはねる最後のところで、どうやって刀(かぜ⇒扇子)を振り回したらいいのか』って聞かれて・・円楽師匠のしか見た事なかったから、それをそのまま伝えたんだけど・・」
表現のリアルさにこだわる「幸良州」君でした。
「カステラとは・・・しかして、どう使うんだい?」
「横丁の菓子屋へまいりましてね。そこの半纏から何から借ります。で、このごろカステラという菓子がございまして、折をこさえていただきます。中のカステラを出しちまって、その中に五合徳利を二本、その折に詰めます。よく蓋をしまして、水引をかけまして『近藤様へカステラのご進物をお持ちいたしました』と言って持って行くんです。これなら御門を通れます」
「そうそう、上手くいくかい?」
「大丈夫ですよ。番頭さん。やらしてください」
「ええ、お願いでございます」
「これっ!いずれへ、まいるのだ?」
「近藤様のお小屋へまいります」
「なんだ、そのほうは?」
「へぇ、むこう横丁の菓子屋にございます。近藤様へカステラのご進物でございます」
「カステラとな?ふーーん(隣にいる同僚の侍にむかって)御同役、変われば、変わるものでございますなぁ。家中屈指の大酒呑みに、カステラの進物とは・・あぁ、これ、菓子屋」
「へぇ、通ってもよろしゅうございますか?」
「いや、待て!役目によって一応取り調べる。その折をこれへ出せ!」
「いえ、それは困ります。ご進物でございます。中を開けられますと、困ります」
「何?進物とな。それならば、カステラであるから、検めるには及ぶまい。よいから持ってまいれ」
「えっ?」
「よいから持ってまいれ」
「へぇ、ありがとうございます。間違いなくこれはカ・ス・テ・ラでございます・・・どっこいっしょ・・っと・・」
「まて!待て、菓子屋!」
「へぇ?」
「そちは、今、何と申した?その折を持つ際に『どっこいしょ』と申したな?カステラという菓子、差ほど重い物ではござらんな!」
「い・え・・・その・・それは・・・あっしの口癖でございます・・めしにしようか、どっこいしょ!湯につかろうか、どっこいしょ・・・」
「これ!何をくだらん事を申しておる!早く、折をこれへ出せ!これへ出せと申すに・・(折を取上げる様子)うん、これか・・なるほど、これは重い。どっこいしょと言いたくなるものだ!・・・・ひかえておれ!・・中身を取り調べるによって・・これ!ひかえておれ!・・只今、この折を開いて(中身を開ける)・・と・・なんじゃ?これは!徳利ではないか!」「へぇ・・それが・・つまり・・へぇ徳利で・・」
「徳利は判っておる!徳利の中に入っているカステラがあるか!」
「いえ、それが、あるんです。へぇ・・・新しく出来ました『水カステラ』という奴でございまして・・」
「『水カステラ』とな?たわけた事を申すな。一応役目である。あらためるによって、・・ひかえておれ!・・これ、門番、湯のみをもってまいれ。中身をあらためる。・・ひかえておれ!・・確かに水カステラだな?これなる湯のみについで・・・・うーんこれは、なかなか・・いけるわい・・御同役、いかがでござる?水カステラを一つ・・」
「ほう、水カステラであるか・・うーーーん。よい香じゃ。久しくやらんでな。いや、恐縮千万・・こりゃ旨い!まことに、結構な水カステラで・・」
「さようでござるか。手前、一杯では味がわかり申さん。茶碗がおあきになったら、拙者に貸してくださらぬか・・・ひかえておれ!・・・まだ、調べがついておらん!御同役、しかして、町人などという者はまことにおろかでござる。かような作り事をいたして、我々の目をごまかそうなどとは、いやはや、誠に、笑止千万。これ!町人、けしからん奴だ。かように結構な水カステラ・・いやかようなカステラなどあるか!・・こ・・こな・偽り者めが!はよう立ち去れ!」
「へぇっ!」
「どうしたい?」
「行ってきやした」
「行ったのわかってる。行ったから帰ってきたんだろ?どうだったんだい?」
「へぇ、最初(はな)はとんとんって行ってたんですがね。あたしが、うっかり『どっこいしょ』って、口滑らせちまって・・包みをひったくられちまって・・」
「え?『どっこいしょ』だって?カステラだよ!『どっこいしょ』はまずかったな」
「ええ・・それで、中身を調べられて徳利が出てきちまった・・」
「おい!しょうがねぇなぁまったく!で、どうしたい?」
「なんだと聞かれましたから、『水カステラ』だって・・」
「えっ?水カステラだって?」
「すっかり、ばれちまって、がぶがぶ呑まれました。『かようなカステラがあるか!偽り者めが』ってんで・・さよなら!」
「おいおい、だから、およしって言ったんだ。偽り者と言われて、がぶがぶ呑まれたんじゃぁ・・くやしいじゃないかぃ」
「番頭さん、じゃぁ今度はあっしが、間違いなくお届けを・・・」
「およしよ!どうせまた、中身をあらためられるんだろ!すぐに、中身が何かわかっちまうんだから・・」
「いいえねぇ、なまじ中身を隠すからばれちまうんでさぁ。あっしは折なんかに入れないで、徳利のまま、ぶら下げて行きやすんで・・・」
「それじゃぁ、一升呑まれに行くようなもんじゃないか」
「ですからね、隠すからいけねぇんでしょ?あっしはね、油屋になって行きますから・・これを油徳利にしましてね。堂々と『油でございます』って持っていきます。いえいえ・・心配しなくても、大丈夫ですから、やらして下さい」
てなわけでございます。一升徳利に酒を詰めましてね。徳利の外には油を塗りました。油の栓までして、油の紐までくくりつけたのですから、どう見ましても油の入った徳利に見えます。
「俺のもそんな事言ってたっちゃ。『居合いでもやってみようか』って。幸良州の話しって侍がらみが多いのが特徴だべ。侍の雰囲気出すのに苦労してたっちゃ。んでも、俺は、そこまでこだわることはねぇなや。幸良州らしいっちゃ」
この、番屋の侍が、中身をあらためるうちにだんだん酔っていくのが、難しい表現です。ことばで途中ででてくる「・・ひかえておれ!・・」のタイミングがポイント。このつぼを外しますと、単に、時代劇になってしまって「落語」のおかしさは伝わりません。たんたんと噺を進めているように見えますが、客席はこの段階でも「笑いの渦」に包まれていたのでした。
油に見えたのでしょうか?
また、役人に飲まれたのでしょうか?
楽語はやはり奥が深いですね~
//////////////////ここで寝てしまったようです。
さぁ、仕事です。
缶ビールの容器がアルミとなって以降は、どうしてもヘコミの商品が発生します。
たまに値引きしている小売店も見かけますが、たいがいは売り物になりません。
で、特売前日の夜間作業中などは売り場でシュポン!という音が響きます。
「(口の中へ)廃棄しましたー」。いやー仕事がはかどりました。
仕事中の水カステラは、心底たまらないものでした。
もうずいぶんと昔のお話でして、今はありえないと、とりあえず断言しておきます。
タイムショック!10代20代の頃は、ほぼ11問か12問の回答が可能でした。
真剣に応募を考えたものです。でも収録時には、あわあわ状態でもって惨敗するのがオチだろうと、諦めておりました。
時が経ち、記憶力も衰え、口も回らなくなってしまいました。
でも、最近TVで「なつかし番組タイムショック」てな放映をを目撃し、なんと12問スラスラでした!
俺もまだまだやれるじゃん・・・あ、中学生大会だった・・・
最近じゃいろいろやかましいのでそんなこともないんだろうなぁ・・・
さあ、自前の水カステラ飲むべぇ~
更新の回数が増えるかと思います。
是非、是非、続きをご覧下さい。
落語もさることながら、出てまいります人物の逸話も是非・・・
クロンシュタット様の時代は、クイズグランプリでしょうか。予選でましたが、そこで落選。
「ほうとく」君は、その後「一億人・・・」のトーナメントでテレビでみて以来、出ておらないようです。今は青森におります。
何をお呑みになられますでしょうか。
今日の水カステラは・・・
いつもの「しろいうま」でした。