酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

仙台与太郎物語 この時期必ず思い出す噺 中編

2008-12-22 10:18:55 | 落語の話?
「どうしても、かみさんのところで、リズムが悪くなる」
そうなのです、勝五郎のところは、リズム感がでて、特に、彼の得意とするところの外連味のなさがとても良く出てはいるのですが、おかみさんとの会話が始まりますと、リズムが落ち、どうしても、間が悪くなるのでした。
この辺は例えば「桂三木助」師匠ほど、聞き入る噺家はいないと思います。そして現在では、師匠の弱点を見事に越えました「立川志の輔」師匠が絶品です。
談志師匠はお上さんネタでは、美しさはないのですが、独特のリズム感とキャラクターを自分の土俵で語ると言ったような半ば強引なやりかたですが、おかみさんのキャクターは見事に生きて存在させているのでした。この噺のむずかしいところであります。そして、さりげない夫婦の会話が、この作品の命とも言えるのでした。
勝五郎が河岸へ行き、そして五十両という大金を拾って家へたどり着くまではなんとかなるのです。ですが、そこから先、金を見た勝五郎の豹変とおかみさんとの会話が中盤のそれこそ、客をひきつけることができるかどうか、腕の見せ所でもございます。

勝五郎、家へ入ります。
「おまえさん、ごめんなさい。時まちげぇて起こしちまって」
走ってすぐ。ゼイゼイ言っている勝五郎。
「そんな、そんなこたぁどうでもいいんでぇ・・おっかぁ水くれ水!(一気に飲み干す勝五郎)はぁはぁ・・ちょっと外見てきつくれぇ・・・」
「ちょと、待っておくれ。(おかみさん玄関の外を伺う)・・おまえさん、だれもいやしないよ」
「そうか、分かった。」といいながら懐にしまい込んだ拾った財布を目の前に置く勝五郎。
「これみつくれぇ」
「なんだい、おまえさん。これは・・」その財布を手に取る。
「まぁ汚い財布だねぇ。あれ?お前さん、相当へぇってるじゃないかい」
中身を確かめるおかみさん
「おまぇさんどうしたんだい?二分金じゃないかぃ。それもこんなに・・」
おかみさんおもむろに数え始める。
「ちゅうちゅうたこかいな・ちゅちゅたこかいな・ちゅちゅうたこかいな・・・」
「じれってぇなぁ」
「こんな大金、見た事ないから、数えられないんだよ・・」
「どれ!貸してみろ!ひと・ひと・ひと・ふた・ふた・ふた・・みっちゅ・みっちゅ・・よっちゅ・よっちゅ・・・・・へへへぇ。おっかぁ。五十両ある」
「まぁお前さんどうしたんだい。そんな大金」
「今日よ河岸に行った。おめぇが、時間違えやがって早く着きすぎたのよ。んでもって、浜(芝浜)のヘリに座ってたらよ。波の間に何かぷかぷか浮いてるのが見えて・・」
「みかん船かい?」
「かっぽれじゃねぇんだ・・何だろうと思ってよ煙管の雁首しっかけて、ひょいとしろってみたら、なんだんぇ古いせぇふよ。中みたらな・・おっかぁ、五十両だ」
「どうするんだい?おまぇさん。しろったって人様のもんじゃないかい!」
「何言ってやがんでぇ。しろったもんだ。俺のもんだ。おっかぁこれで釜の蓋も鍋の蓋も開きやがる。だけじゃやねぇや。ここんとこ、たけだのきんこうだのにおごられっぱなしで格好が悪くてじゃぁねぇやな。奴ら呼んでこい!いっぺぇ呑ましてやんなきゃなんねぇ。おっかぁ呼んでこい!ははははめでてぇなぁ、おっかぁ。芝の浜からごっちになろうってもんだぜ。なぁおい!そうと分かれば、仕事に行く事なんてねぇんだ!なぁおい。おい、ゆんべの酒が少し残っていたろ?それくれぇ!
ちょいちょいと摘むものなにか・・櫨の佃煮?いいんんだそれで」
櫨の佃煮をつまみながら、酒をあおる勝五郎。
「はははは、おっかぁ、おめぇもよ、いつものきったきりすずめじゃねぇくて、着物でもあつらえやがれ・・・ははははっは・・・うっつ。眠くなりやがった。おい布団しいてくれ。起きたら、あれだ(少し呂律が回らなくなり始める)きんこうにたけに・・・と・・くらぁ・・うっぷ・・(寝る)ぐぅぐぅ(いびきをかきはじめる)」寝ちまった勝五郎。

「お前さん!お前さん起きとくれよ!お前さん!」
急に起こされる
「ど・どうしたおっかぁ。火事かぁ!」寝ぼけている勝五郎。
「なに言ってんだい!あきないに行っとくれ!」
「なにおうぅ!『あきない』だとぉ!ははは言うじゃねぇかい」
「何言ってんだい、このしとぉは。商いに行かなかったら釜の蓋あきゃしないんだよ!鍋の蓋も開かないんだよ!」
「おいおい、ゆんべのあれで開けときゃいいじゃねぇかい」
「『ゆんべのあれ』ってなんだい?」
「おっかぁとぼけやがって。ほれ俺が昨日の朝芝の浜でしろってきた・・あれだ」
「おまぇさん、何もしろって来やしないじゃないか」
「なにおう!俺はなぁ昨日商いに行っただろう!そいでもって、おめぇが時まちげぇて起こしやがって、そんでもって芝の浜で座っていたら、波のむこうにぷかぷか浮いてるの見えて・・」
「みかん舟かい?」
「かっぽれじゃねぇんだ!そんでもって煙管の雁首しっかけてしろったら、何いってやがんでぇせぇふがあって中の五十両が・・・」
「どこにあるんだい?どこにそんな大金があるんだい!おまえさんしっかりしておくれよ本当に。そんな大金があったらねぇ、あたしゃこんなおんなし着物着ちゃいないよ!しっかりしておくれよ!呑みすぎて夢見ちまってさぁ!
当たり前じゃないかい!夢なんだよ。夕方に急に起き出したらと思ったら、『おっかぁ、きんこう呼べ!たけつれてこい!酒買ってこい!』じゃないか。何があったのかと思ったよ。それでもね。友達の前でお前さんに恥じ欠かすわけ行かないから、肴あつらえて、酒用意して、飲ませて食わせて酔わせて・・お前さん何がうれしいか知らないよ『おっかぁめでてぇ・めでてぇ』って・・気が狂ったのかとおもったよ。どこにそんなお金があるんだい!この肴や酒だってつけが溜まっているのに無理して買ってきたんだよ!おまぇさん、貧乏に貧乏神が来て、夢でもみちまったんだよぉ」
「お・おっかぁ・・ゆ・め・かぁ・・・おい?」顔が青ざめる勝五郎。正気にもどってくる。しでかした事の重大さを改めて知る事となる。
「どうするんだおっかぁ。どうしようおっかぁ。金のねぇとこでもって、さんざん飲み食いしたんだぜぇおい!金なんかこれっぽちもありゃしねぇ・・死のうか」
「馬鹿言わないでおくれよ。おまぇさんが商いすりゃ。何とかなるよ」
「わかった!わかったおっかぁ、頼む何とかしつくれ!おっかぁ頼む!俺は今まで酒でさんざんぱら人(しと)から意見されてきたけれど、今度と言う今度は身にしみやがる。俺はもう酒なんぞ一垂らしも呑まねぇ!そうかおっかぁ商いに行けば何とかなるのか?そうか分かった!商いに行く!今からすぐ商いに行く。。でももって板台は・・」
「糸底に水が張ってあるからいつでも使えるよ」
「分かった、分かった、んでもって包丁は?」
「生きのいい鯖みたいな色してるよ!」
「そうか、銭は?」
「ここに少しばかりある」
「・・・・なんだおい夢にもこんな事がぁ・・」
「そんなぶつぶつ言ってたら河岸終わっちまうよ!」
「おう行ってくらぁ!」
勝五郎、河岸へ急ぐ。

「偏見さん確かに、上下は間違えてねぇっちゃ。んだども、おかみさんの話ししてっとこさぁ、勝五郎が急に入ってくるような感じがすんのっしゃ。かみさんのとこだけやってみたらいんでねぇ」
「あん好、やってみる」
自分で鏡をみながら、(鏡の前で、一人で練習しております)おかみさんの特訓をはじめました独断亭偏見さんです。
彼が「取り」をとります寄席まであと二週間を切りました。

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10 コメント

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おばんでやんす (元☆部下)
2008-12-22 17:11:02
冷凍食品が恋しい、元☆部下でございます。
酔漢さんって一体何者?と思ってしまうのは、私だけでしょうか(笑)

生の落語は、高校での芸術鑑賞会。今、話題の小朝師匠の落語でした。演目は忘れてしまいましたが、引き込まれました。

いつか、酔漢さんの落語聞いてみたいものです。
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おばんでがす。 (酔漢です )
2008-12-22 18:56:10
元☆部下様へ
お久しぶりです。
マエストロはお元気ですか。
遊びに来てけらいんネ。
自分でも何者?と思います。丹治氏曰く「おめぇは一体何やって来たんだ?」です。
これから忙しくなります。お分かりだと存じますが。元部下から実部下になってもらいたい!
と思います酔漢でございました。
さて、寒い季節。是非ご自愛下さい。
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砂浜に埋もれた財布発見! (クロンシュタット)
2008-12-23 06:45:14
昔々、伊豆は下田の先の弓ヶ浜で、カミさんと財布を拾ったことがあります。
中身は確実に30万円は入っておりました。キャッシュカードも5~6枚程。
1万円以下ならくすねてしまったかもしれませんが、そこは根が小心者。きちんと交番に届けました。
住所に氏名に電話番号まで申告して、「良いことをしたもんだ」とカミさんと納得し合ったものです。

その後、落とし主からも、警察からも、何の連絡もありませんでした。
謝礼云々よりも、世の中がどこでどーなってるのかが不思議で、いまだに引っかかっております。

いよいよ年末商戦ですな。食事と睡眠はなんとか確保して、体調維持に十二分にご配慮を!
と、言っても、「頂上」時代は、除夜の鐘は帰宅途上でしか聞いたことがありませんでしたから、ご苦労がしのばれます。
そうそう、年始営業開始日が業界一斉に早まった年がありました。あの時は、大手さんの経営トップを、心底うらみましたぜ!
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そういえば・・・ (丹治)
2008-12-23 07:35:44
江戸落語といえば、裏店の世界がたくさん出てきます。八つぁん熊公の世界ですね。「角のご隠居」の意味とか、酔漢さんには色んなことを教えていただきました。

そう書いていたら、池波正太郎の小説を読みたくなった丹治であります。尤も小生、鬼平よりは真田モノですが・・・
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おぉ~♪ (ぐずら)
2008-12-23 12:17:38
りっぱなパンフレットじゃないですか
このときの酔漢さんのネタは「猫久」ですか、皆さんいろいろやってますね。
ところで「皿屋敷」ってのは「あした休むから今日は倍数える・・・」って落ちの噺でしたっけ?
いやぁ~!こういうの読んでると落語のCD買い揃えたくなってきますよ
なんせ地方に住んでるとライブは滅多に望めませんからね・・・

これから年の瀬、続きは年明けですかね (^o^)/~
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あれ (ひー)
2008-12-25 18:30:49
またやっちめいました。
コメント入れたはずなんですが……
携帯で長文を打ったり時間を置いたりすると送信した後にコメントの再確認があります。
無い時もあるのですが、「コメントを投稿しました」。の文字を確認しないと駄目なのです。アップしてからしばらくなるのに、すみませんてした。
これも面白く読ませていただきました。
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改めて (ひー)
2008-12-25 18:59:55
落語の面白さを発見したような気がします。
下手な小説読むより面白い!
江戸っ子は「ひ」を発音出来ないんですよね。
最後は夢でしたが、夢でもいいから大金拾った夢を見たいものです。
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正月営業 (酔漢です )
2008-12-26 19:02:45
クロンシュタット様へ
そうですね。
もう久しくなります。三が日は交代で休みます。客数は年々、増えている現状です。年内本日が最後の休み。
これからは日々忙しいのでした。
よいお年をお迎え下さい。
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皿屋敷は・・ (酔漢です )
2008-12-26 19:08:38
ぐずら様へ
「いちまぁーい。にまぁーい・おしまぁーい」
ですよね!(笑)
これをこの時演じました「奇橋」さん。宮城教育大学の女子大生でした。
雰囲気は「お菊さん」そのもの・・・
実は、これが縁で、話しのはじめに登場いたしました「翔家からす」君(向山高校後輩。宮城教育大学落研)の奥様になりました。
こんな話ししてもよいのでしょうか・・・
また、このプログラムで取りを取ってます
「語児羅」君は酔漢の家内の中学の同級生でした・・これも何十年経ってわかったことなのでした・・
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話しの落ちは・・ (酔漢です )
2008-12-26 19:10:46
ひー様へ
夢なのかそうでないのか・・
本日「後編」を語りました。ご覧下さい。
この「落ち」がまた、いいのでした。
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