酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

芝居の話 エピソード2

2009-06-29 07:05:42 | 大学演劇部の頃の話
僕らが大学三年時、演劇同好会は、活動が少しは定着してきた頃でした。
春、部員の募集が始まります。
「酔漢さん落研は?」
そうなんですが、「落研では半分自由人でした」ですから、演劇部の活動を中心としておりました。
「もぞこい後輩をみっとや、しぃずりてぐねるんだおん!」
これ、本音です。ですからこうなります。
一年生、面接です。
三年生、4人を前にしてたった一人です。これは緊張します。
女の子が一人。下を向いて入って来ました。
「あんだ、学校どこっしゃ?」
「・・・・・・・・・」
「名前ばぁ、言ってもらえねぇとっしゃ、話ばぁはじめらんねぇべ」
「・・・・・・・・・」
何を聞いても下を向いたまま、口を開こうとしません。
「一回、深呼吸してみよっか!顔上げてごらん」
せっちゃんです。横浜山手のお嬢様です。(後程お話いたしますが、彼女からはアクセントを相当直されました)
面接に来た彼女は少し安心したのか、大きく深呼吸をすると、初めて僕らと顔を合わせました。そしてたった一言。
「・・・・お・・・お・・・お・れ・よ・・」
僕らは爆笑。彼女は笑われたのかと思ったらしく、また下を向きました。顔は真っ赤です。
「明日からここさ来たらいいっちゃ!」
「んで、合格ですか?」
「んだよ」
最初のこの一件から、彼女に着いた渾名が「おれよ」となりました。
山形出身の彼女でもありましたので「山形おれよ」とも。
ですが、先だって、新宿でみずま君と会った際にも、「おれよちゃんの本名ってなんだったけ?」でした。

さて、呑み会です。
最初の話から半年後。
仙台、とある居酒屋です。
「かんぱーーい。練習お疲れさま」
「練習の後のビールはうめぇっちゃ」と一気の飲み干す酔漢。
「おっつ、今日はうめぇそうな鮭あんなや」と取り皿に一切れ。
前の席には、みずま君、酔漢の隣には、にし君が座っております。(彼は酔漢が卒業するまで、いつも、隣の席でした)
次の公演の話などなど話題が盛り上がってまいりました。
「先輩、鮭旨いですね。奄美ではあんましないんですよね。やっぱし、北の魚ですもんね」と、にし君が、話をしております。と、その瞬間。前の席にいるみずま君と目が合った酔漢です。みずま君、ニヤってしております。
「酔漢。にしにさぁ、あの話しねぐてなんねぇど」
ヤバイ、心の準備が出来ていない。急に振るなよ!
「あの話って?」と、とぼける酔漢。
「ほれ、この前、電車(仙石線。みずま君、石巻。酔漢本塩釜。帰りは一緒になることがあるのでした)で話した『鮭』の話っちゃ」
何か、話ばしねぐてねぇなや。と考えておりました酔漢。ふと、先だってテレビでみたニュースを思い出したのでした。
「にし君、鮭ってさぁ、海から川さぁ上っとこを、捕るのは知ってちゃなや」
「テレビでみたことはありますけど」
「んで、話は、早ぇっちゃ。んで、もう一つ、長良川でどうやって鮎ば捕っか、知ってか?」
「それは、知ってますよ、鳥の『鵜』を使って、捕るんですよね」
「んだっちゃ。長良川の『鵜飼』は有名だべ」
「それと鮭と関係あるんですか?」
「おおあり!なのっしゃ。な、みずま」
「んだ、この前、雑誌さぁ載ってたおんな」
「長良川の鵜飼は、鵜ば操って、その口の中に鮎ば入れてから船さぁあげっちゃ。そいずは、にしも知ってぺ。北海道では、アイヌの伝説的漁法があってや」
「伝説的漁法って?」
「野生のひぐまは、川さぁ上ってくる鮭を、手で引っ掛けて、川岸にほおり投げっちゃ」
「よく野生のなんとかでテレビで見ますよね」
「そう、それだっちゃ。その昔、アイヌでは鵜飼とおなじ様に、『くま飼』っていうのがあったのっしゃ」
「どういうことですか?」
「鮭ば捕る、熊の習性を利用してや。熊を飼いならして、鮭ば捕らせるんだと。ひぐまを、ちゃっけい頃から手なずけて、人の言う事聞くようにしてや、慣れてきたら、川さぁ入れて、鮭ば取らせるんだとや。川岸さぁほうり投がった鮭を、今度は人が頂くって漁法っしゃ」
「んでも、熊の爪で鮭に傷がつかないんですか?」
「にし、こいずは、いい質問だべ。鮭に傷がつかねぇように、熊の爪ば丸く研がねぇくてなんねぇんだとや」
みずま、冴えてんでねぇか。
「もちろん、猿轡ば熊さぁして、丈夫なロープで熊の胴体を固定しての話っしゃ」
「すごい技ですよね」
「なんでも、名人級になっと、一人して3頭のひぐまを同時に操んだとや」
にし君、目を輝かせて(本当にごめんね!)聞いております。
「で、雑誌の中身はその漁法の紹介でなくて、北海道のひぐまセンターでこの『熊 飼』の漁法を復活させて、観光に役立てることが書いてあったのっしゃ。もうすぐ、見られるんでねぇか」
まったく、調子に乗ったみずま君(酔漢も同罪ですが)でした。

夏休みが終わり、また、みんなして揃う時期です。
部室の扉を開けました。
「よっつ!みんな久しぶり!」と、酔漢とみずま君。
「せんぱぁぁぁい!ひどいじゃないですかぁぁぁぁーーー」
「どうした、にし。何かあったか」
「『何かあった』じゃぁないですよぉ。夏休み前、先輩から聞いた『くま飼』の話、奄美に帰って、親戚に話したら。大笑いされましたよぉぉぉ」
「にし、ごめん。まさか本気にするとは、思わなかった!本当にすまん」
と平謝りの、酔漢とみずま君。
「でもね、『作り話』をあたかも『本当の話』のように演技したわけだから、酔漢君とみずま君も、やっぱり演劇人だよね」
おーーーっつと、天の助け。せっちゃんが女神に見える。助かった。と思った瞬間。
「ちょっとぉ。あまり、にし君からかうんじゃないの。彼に何かおごりなさいよ!」
「わかった、にし。『味よし』の味噌ラーメン。大盛りでいいか」
「えっ!本当ですか」
とたんに機嫌の直った、にし君でした。
僕らは、本当に悪い先輩です。

追伸
彼の名誉の為に。
奄美大島で、現在彼は、市の高齢者対策の仕事をしていると聞きました。酔漢の会社での同僚の細君が、奄美大島の出身でしたので、彼女から話を聞きました。かなり厳しい環境の中、彼は身体を張って頑張っております。


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7 コメント

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beyond description! (丹治)
2009-06-29 12:26:08
改めてこのお話を読んで、思いました。

「クマガイ」って苗字あっぺや。
あれ今でこそ「熊谷」って書くけど、
本来は「熊飼」だったんだど!!

あ、ここまで言えば、一発でバレますね。
「ほらー」な話って・・・
返信する
これからは (ひー)
2009-06-29 12:45:58
ホラフキ酔漢と・・・・・?

でもとっさにこのストーリーが浮かぶとは、関心しますね。
なかなか、浮かばないものですよ。

「にし」さん奄美で立派に仕事をしているようですね。
実は、今でも根にもっていたりして・・ww
返信する
丹治様へ (酔漢です)
2009-06-29 20:14:24
この記事ほらーな話?
掲載でしょうか・・・
ひー様も同じで・・・

わけあって、あの話を先行して進めていくことになるかもしれません。
「芝居の話」は途中で打ち切るかもしれません。
急ぎの用が出来ました。
返信する
ひー様へ (酔漢です)
2009-06-29 20:16:01
丹治さんへのコメントにも掲載しましたが、
この話が途中で打ち切りかもしれません。
話題が変わるかもしれません。

その際は・・・平にご容赦を・・
返信する
あーあの話か! (クロンシュタット)
2009-06-30 05:50:53
案外「熊飼」ってイケルような気がします。
一生懸命に働くその姿には、愛嬌も?
たまに機嫌が悪いと人間を引っ掛けてしまってね。
「全日本熊飼労働組合」の示威更新の際には、永田町を熊3頭を先頭に、威風堂々の行進が・・・
規制する警官隊も必死だー・・・

えっと、先行する「あの話」って?

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あれッ!? (ぐずら)
2009-07-01 23:58:28
アラスカの先住民はヒグマを使ってキングサーモン獲ってるんじゃなかったっけ?
それを真似して紅鮭を獲ろうと登別にクマ牧場がつくられたのでは・・・

て・・・
遅れた上にえらぐぶぢょほいたしました・・・
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そうそう (丹治)
2009-07-02 14:49:39
水族館に行くと、よくアシカのショーやイルカのショーをやってますよね。

最近、某所の熊牧場じゃ
熊のサケ取りのショーを始めたって話ですよ!
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