レンタル店で借りてきて観た映画『風の電話』の感想です。
東日本大震災のときに津波に襲われ9歳で家族を失った少女ハルが主人公でした。震災後、8年経った現在のハルは、高校3年生になり、広島県の呉で伯母と一緒に暮らしていました。ある日、伯母が倒れてしまいます。常に寄り添ってくれていた伯母まで倒れてしまい、自分の身の回りの人がどんどんと自分の前から去って行ってしまうという不安な気持ちをハルは抑えることができず、震災前まで家族と一緒に暮らしていた岩手県の大槌町まで広島から長い旅をすることになります。その旅の間に、ハルを助けてくれた親切な人々に出会います。何も食べてなかったハルにごはんを食べさせてくれて、人間は生きている以上食わないとだめなんだと言われたり、また、車に乗せてもらったりしながら、その親切な人々が抱えていたいろいろな人生を垣間見ながら旅をしていくのでした。家族を失ってひとりぼっちになったハルがもし死んでしまったら誰が家族のことを思い出すんだなど、ハルの心にそっと静かに響くような励ましの言葉や生きろというメッセージをいろいろな人々が投げ掛けてくれました。大槌町の自宅があった場所、今は家も何も残っていない場所でしたが、その場所に戻ってきたハルは「ただいま」と声を掛けます。誰も返事してくれないという悲しみに苛まれてしまい、その場を去ります。その後、大槌町に実際あって、今まで3万人の人々が訪れたとされるどこにも繋がっていない電話ボックス「風の電話」があることをハルは偶然知ります。亡くなった人と話せると言われていたこの「風の電話」の電話ボックスの中に入って、ハルは自宅があった場所で自分の気持ちを表したように、心の内にあったものを吐き出して行く様子が描かれていました。「風の電話」でハルが吐き出した言葉は心からの悲しさや辛さが溢れていたけれど、自ら辿り着いた故郷でハルの中に生きて行く上での何かが生まれようとしていたように思いました。目には見えないけれどハルの中に芽生えてきたであろうと想像できるような心の変化がじわっと伝わってきました。
この映画の中で、上の写真の100均で買って自分も持っていたものと同じものが映画の中で映っていたのを見かけました。映画の中ではハルが大槌町まで連れてきてもらった人の車の中に置いてありました。このクマは光が当たると首を振るもので今は売っているのを見かけませんが、いつも職場内の部屋に置いていました。このクマが光に当たって首を振っているのを見ると元気になるときがありました。その人にとって、100均で買った何気ないものだったとしても、元気になれることもあったり、この映画でハルのように見ず知らずの人に励ましてもらった言葉だけでも元気になれることがあるということを思い出しながら、家族が側にいなくなってもひとりぼっちになったとしても生きていくことにやっぱり意味はあるんだということを暗に教えてくれているような映画でもありました。