○夫人が最初の「音」で振り返ると、大統領が喉の辺りを両手で押さえていた。
これもまた、委員会にとってきわめて不都合な証言だったに違いない。最初の音、委員会報告によれば「first shot」は、オズワルトがターゲット(大統領)をミスした初弾でなければならないからだ。つまり公式説によるなら大統領が被弾したのは「second shot」の後でなければならない。
にもかかわらずネリー夫人の証言によれば、最初の音の直後に振り返ると、すでに大統領は頚部に被弾していた。その間に、他に銃声などは生じていない。この証言もまた、全く迷いが見られず一貫しており、明らかに彼女は確信をもって見たまま聞いたままの状況を語っている。
これは最初の音=発砲による被弾か、さもなければ「銃声なき銃弾」による被弾だとしか説明のしようがない。
*ザプルーダー・フィルムの224コマ目
この夫人の決定的とも言える陳述にたいして、スペクターやダレスが、「大統領の両手の位置」だとか「被弾後の知事の体勢」といった無意味かつ些末な質問を重ね、この最重要の陳述を事実上封殺しているのは、真相追及という観点からは不可解極まりない。この人たちは、一体なぜこんなバカげた質問しているのか?
しかしシノンが明らかにしている通り、この時点ですでに委員会がオズワルト単独犯行説というストーリーで行くことに決定していたのなら、こうした態度もまた、ある意味で当然である。
法形式上、目撃者の証言を求める必要はあるので聴聞会は行う。そして証言録として記録もする。
しかしこうした証言をまともに取り合うことは、単独犯行という既定の結論にもっていくためには有害でしかない。なるほど、だとすれば「聞いて記録もするが、問題としない」のが正しい態度である。
ダレスもスペクターも、愚鈍どころか当時の米国で最も明晰な超エリートの一人なのだから、この証言の意味するところは即座に認識したはずである。
その上で、単独犯行説の虚偽性などはなから承知していたからこそ、こうした一見愚かしい質問を重ねている。そう見えてならない。
では、大統領のこの被弾は一体何によるものだったのか。
そもそも、夫人の認識に即して考えるなら、「最初の音」と「大統領の被弾」の対応関係はないと見るべきである。夫人の証言を彼女の意図通りに正しく解釈し補うなら、
「《銃声とは思われない》音がして、振り返ってみると《銃声ではなかったはずなのに》大統領が喉元を押さえていた」
となるはずだからである。
だとすれば、残る可能性は「銃声なき銃撃」である。
夫人の証言は、これまで本稿で幾多の根拠に基づいて推測してきた「複数の狙撃位置からの、減音ないし消音措置を施した発砲」の存在を裏付けている。
そのことをさらに見ていきたい。
○この最初の被弾では、大統領に出血は見られなかった
夫人がここで初弾の喉元の銃創について、「出血は見られなかった」と明言しているのも、小さな事実のようだが重要である。これもまた公式説に矛盾する証言だからだ。
銃弾の人体への射入口及び射出口の一般的な状態については、パークランド病院の医師たちに関する過去記事を参照されたい。大統領は傷口を手で覆ったわけだが、後方からの射撃の場合、その動作以前に、銃弾の出口からは瞬時に組織片や血液が飛散するはずである。
「飛散するはず」というのは、この銃撃がオズワルドの小銃によるものだった場合には、殊にそうでなければならないということである。
なぜなら、大統領の頭部被弾の瞬間であるこの件で有名なザプルーダー・フィルム313コマ目では、現に「前方に」鮮やかな赤の血しぶきが飛び散っているからである。公式説による限り、ずっと遠方の位置での被弾でさえこうなのだから、銃弾の初活力が維持されているこの頚部被弾の瞬間ではなおさらであろう。
「後方からの一発説」は、すでにこの時点で無理が生じている。
夫人によれば、この直後に別の銃弾で知事は負傷したのであり、そしてさらにザプルーダー映像では、大統領の頚部前面への被弾がその直後に続いている。
したがって、この「大統領が両手を首の辺りまで挙げながら、頚部前面に出血が見えなかった」というのは、先に見た実際の大統領の最初の被弾、すなわち上背部の非貫通の銃創への反応・状態を証言したものだと考えるのが適当である。
だとすれば「出血がなかった」のはむしろ当然なのである。
これもまた、委員会にとってきわめて不都合な証言だったに違いない。最初の音、委員会報告によれば「first shot」は、オズワルトがターゲット(大統領)をミスした初弾でなければならないからだ。つまり公式説によるなら大統領が被弾したのは「second shot」の後でなければならない。
にもかかわらずネリー夫人の証言によれば、最初の音の直後に振り返ると、すでに大統領は頚部に被弾していた。その間に、他に銃声などは生じていない。この証言もまた、全く迷いが見られず一貫しており、明らかに彼女は確信をもって見たまま聞いたままの状況を語っている。
これは最初の音=発砲による被弾か、さもなければ「銃声なき銃弾」による被弾だとしか説明のしようがない。
*ザプルーダー・フィルムの224コマ目
大統領が喉元を押さえており、証言のとおり斜め前のコナリー夫人は右を振り返っているように見える。まさにこの瞬間に知事が被弾したことが、彼の被弾箇所に対応する先述のとおりジャケットの前合わせの部分がめくれ上がっていることで確認できる。この一コマは、公式説=一発説が虚偽であり、かつ夫人の証言が体験を正確に語っていたことを立証している。まさに決定的な視覚的証拠である。
この夫人の決定的とも言える陳述にたいして、スペクターやダレスが、「大統領の両手の位置」だとか「被弾後の知事の体勢」といった無意味かつ些末な質問を重ね、この最重要の陳述を事実上封殺しているのは、真相追及という観点からは不可解極まりない。この人たちは、一体なぜこんなバカげた質問しているのか?
しかしシノンが明らかにしている通り、この時点ですでに委員会がオズワルト単独犯行説というストーリーで行くことに決定していたのなら、こうした態度もまた、ある意味で当然である。
法形式上、目撃者の証言を求める必要はあるので聴聞会は行う。そして証言録として記録もする。
しかしこうした証言をまともに取り合うことは、単独犯行という既定の結論にもっていくためには有害でしかない。なるほど、だとすれば「聞いて記録もするが、問題としない」のが正しい態度である。
ダレスもスペクターも、愚鈍どころか当時の米国で最も明晰な超エリートの一人なのだから、この証言の意味するところは即座に認識したはずである。
その上で、単独犯行説の虚偽性などはなから承知していたからこそ、こうした一見愚かしい質問を重ねている。そう見えてならない。
では、大統領のこの被弾は一体何によるものだったのか。
そもそも、夫人の認識に即して考えるなら、「最初の音」と「大統領の被弾」の対応関係はないと見るべきである。夫人の証言を彼女の意図通りに正しく解釈し補うなら、
「《銃声とは思われない》音がして、振り返ってみると《銃声ではなかったはずなのに》大統領が喉元を押さえていた」
となるはずだからである。
だとすれば、残る可能性は「銃声なき銃撃」である。
夫人の証言は、これまで本稿で幾多の根拠に基づいて推測してきた「複数の狙撃位置からの、減音ないし消音措置を施した発砲」の存在を裏付けている。
そのことをさらに見ていきたい。
○この最初の被弾では、大統領に出血は見られなかった
夫人がここで初弾の喉元の銃創について、「出血は見られなかった」と明言しているのも、小さな事実のようだが重要である。これもまた公式説に矛盾する証言だからだ。
銃弾の人体への射入口及び射出口の一般的な状態については、パークランド病院の医師たちに関する過去記事を参照されたい。大統領は傷口を手で覆ったわけだが、後方からの射撃の場合、その動作以前に、銃弾の出口からは瞬時に組織片や血液が飛散するはずである。
「飛散するはず」というのは、この銃撃がオズワルドの小銃によるものだった場合には、殊にそうでなければならないということである。
なぜなら、大統領の頭部被弾の瞬間であるこの件で有名なザプルーダー・フィルム313コマ目では、現に「前方に」鮮やかな赤の血しぶきが飛び散っているからである。公式説による限り、ずっと遠方の位置での被弾でさえこうなのだから、銃弾の初活力が維持されているこの頚部被弾の瞬間ではなおさらであろう。
「後方からの一発説」は、すでにこの時点で無理が生じている。
※第312及び313コマ目
313コマ目では、あたかも後上方から被弾したかのように、真っ赤な血しぶきが大統領の額から顔面にかけてをベッタリと覆っている。このように公式説による限り、後部からの被弾があった場合、瞬間的に出血が見られはずである。
しかしそもそも、被弾から0.05秒以内の瞬間に、こうした見た目にも分かりやすい鮮血の噴出が起こりうるものなのか。脳組織が「赤色」をしていないのは言うまでもない。
ところで、その前までのコマと比較して、この313コマ目の1枚のみで、大統領が僅かに姿勢を前傾させていることから、これが「back and to the left」の前方射撃説を否定する有力材料とされてきたのは、先に見たリフトン著『ベスト・エヴィデンス』でも取り上げられていた。
もちろん、これまで見てきた通り、オズワルト単独犯行であった蓋然性は文字通り絶対ゼロであることは証明されている。ということは、この「後方からのヘッドショット」の存在もまた、事実としてすでに否定されているのである。
したがって「後からの被弾で前方に噴出する血しぶき」及び「大統領の瞬間的な前傾」を写し取ったこの313コマ目(及びそれ以降の複数のコマ)には、何らかの作為が加えられていたと見るべきである。そうして見てみれば、背景が単調でかなりブレたこの第313コマは、変造を加えるには都合がよい。
以上はいわゆる「陰謀論」による空想・妄想の類ではなく、視覚的証拠の事実認識にもとづく当然の推論にすぎない。その偽装工作の痕跡は後で見ていく予定である。
313コマ目では、あたかも後上方から被弾したかのように、真っ赤な血しぶきが大統領の額から顔面にかけてをベッタリと覆っている。このように公式説による限り、後部からの被弾があった場合、瞬間的に出血が見られはずである。
しかしそもそも、被弾から0.05秒以内の瞬間に、こうした見た目にも分かりやすい鮮血の噴出が起こりうるものなのか。脳組織が「赤色」をしていないのは言うまでもない。
ところで、その前までのコマと比較して、この313コマ目の1枚のみで、大統領が僅かに姿勢を前傾させていることから、これが「back and to the left」の前方射撃説を否定する有力材料とされてきたのは、先に見たリフトン著『ベスト・エヴィデンス』でも取り上げられていた。
もちろん、これまで見てきた通り、オズワルト単独犯行であった蓋然性は文字通り絶対ゼロであることは証明されている。ということは、この「後方からのヘッドショット」の存在もまた、事実としてすでに否定されているのである。
したがって「後からの被弾で前方に噴出する血しぶき」及び「大統領の瞬間的な前傾」を写し取ったこの313コマ目(及びそれ以降の複数のコマ)には、何らかの作為が加えられていたと見るべきである。そうして見てみれば、背景が単調でかなりブレたこの第313コマは、変造を加えるには都合がよい。
以上はいわゆる「陰謀論」による空想・妄想の類ではなく、視覚的証拠の事実認識にもとづく当然の推論にすぎない。その偽装工作の痕跡は後で見ていく予定である。
夫人によれば、この直後に別の銃弾で知事は負傷したのであり、そしてさらにザプルーダー映像では、大統領の頚部前面への被弾がその直後に続いている。
したがって、この「大統領が両手を首の辺りまで挙げながら、頚部前面に出血が見えなかった」というのは、先に見た実際の大統領の最初の被弾、すなわち上背部の非貫通の銃創への反応・状態を証言したものだと考えるのが適当である。
だとすれば「出血がなかった」のはむしろ当然なのである。
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